クリスマスっていっても、今のところは特に予定のない寂しい独り者でございます。
暴君のお二人は、本編でクリスマスを迎える頃にはどうなっているのでしょうか?
以下、追記にてちょっぴり妄想してみました。
※本編が現在秋として、その年のクリスマスという設定です。
※あんまり弾けてないのであっさりめ。
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【Will you still be there?】
「先輩〜……」
森永は隣で顕微鏡を覗く宗一に弱々しく問いかけた。
しかし、返事はもらえない。
「先輩ってば……」
もし彼に耳が付いていたら、へしょっと下がっているに違いない。
「なんだ」
二度目でようやく、素っ気ない声が短く返ってきた。
機嫌はあまり良くなさそうだと分かりつつ、森永は言わずにいられなかった。
「あの、今日クリスマスイブですけど……」
「へえ」
宗一の目も意識も、まったく森永には向かってこない。
「せっかく、初めてのクリスマスなのに、明日も実験予定入れちゃうし、俺、先輩といちゃいちゃした……」
ガン!と森永の椅子に蹴りが飛んできて、言葉を全部言わせても貰えなかった。
「お前……まだそんなこと言ってやがるのか。説明しただろうがっ!」
「だ、だって!初めてのクリスマスは今年しかないんですよっ。せっかく恋人になれたのに、今までと同じに実験で終わっちゃうなんて」
疲れの見える宗一の目がギリリとつり上がる。
「今サボったら正月も無いと思え!」
「分かってますよ!分かってるけど」
「正月は実家に帰るんだから、ちゃんとスケジュール通りにやるって言ったよな!?」
「……はい……」
森永が、福岡の実家に帰省できることになったことを、宗一はとても喜んだ。母親を亡くし、父親ともなかなか会えない彼は、森永が家族と断絶していることを気にかけてくれていた。
それはとても嬉しかったし、ますます宗一を好きになった。
頭で分かってはいても、体は宗一に触れたくて仕方ないのだ。
恋人同士になったが、時折感じる温度差に、こうして打ちひしがれてしまう。
しゅん、とうなだれた森永の頭を、立ち上がってそばに来た宗一の手がぽんぽん叩く。
「やれば終わるだろ」
「クリスマスも終わっちゃいますよ……」
「はー……」
宗一は盛大にため息をついて、森永の髪の毛をくしゃくしゃかき混ぜる。
森永が宗一を見上げ、二人の視線がやっとしっかり絡み合った。
「せんぱい……」
宗一の手を取って、自分の頬に当てる。
暖かい。
「お前は、来年はここにはいないんだから、最後のクリスマスだろ。今までと同じで……ここで……ってのはダメなのかよ……」
「えっ……」
だんだん、宗一の声が小さくなって、俯いてしまう。その頬が少しずつ赤く染まる。
それは意地っ張りの彼なりの、我が儘。
「先輩、俺と一緒にいるだけでいいの?」
宗一の細腰を抱き寄せると、にこりと微笑んで見上げる。
「ば、ばか……触んな……」
「先に触ったのは先輩でしょ」
離れようとする宗一を抱き留め、その体に顔を埋めた。
暖かい。
「触んな、って」
「やだ。ちょっと休憩。先輩を補給させて。そのくらいいいでしょ」
森永がぎゅうぎゅう抱きついてくるのを、宗一は引き剥がそうと肩に置いた手に力を入れた。
「ばか、こんなことしてる時間ないって……」
「じゃあ、キスだけ。そしたら実験に戻るから」
「ち、調子に乗るなよ!」
「したくない?」
じたばたと腕の中で抵抗する宗一を、座ったままの森永が見上げる。
濡れた子犬のような目に、宗一が映っていた。
「うっ……」
森永のこういう顔に弱い自分を認識し始めている宗一は、反論に詰まってしまった。
その隙に腕を引かれて、森永と同じ目線になった宗一の唇を素早く奪う。
「ん……」
一瞬で、森永の腕の中に攫われてしまう。そこからとろりと溶け出してしまいそうな感覚に酔う。
それなのに口づけはそれほど長くはなかった。
唇が離れ、目を開いて少し見つめ合うと、森永はあっさりと宗一を解放した。
「そうですね。二人でこうしていられるの、あと少しですもんね。一緒にいられて、研究成果も上がったら一石二鳥だし」
にっこり笑う森永に対して、赤い顔のままの宗一はふいと席に戻った。
もう少しキスが欲しかったとは、言葉にならないまでも、胸のうちでもやもやと燻る。
それを顔には出さないように、宗一は顕微鏡に向き直った。
「……わ、分かったならいい」
「よーし、先輩補給したし頑張ろ!」
「現金な奴だな」
「俺はいつだって先輩次第ですから」
先ほどしょげていたのが嘘のように、満面の笑みを見せる忠犬に、ふっと宗一も微笑んだ。
今は、まだここにいてほしい。
そう、あなたに言ったら笑われるだろうか?
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ちょっとあっさりしてましたかね・・・
もともとは、もっと激しい喧嘩をしている予定だったんですが、プロットなしではこの程度ですねorz
タイトルの「will you still be there」はHOWARD JONESの曲です。
これを聞くと、恋人同士が抱きしめ合っている情景が浮かぶんですよね。
なのでぎゅー、してもらいました。(ちゅーはおまけ。なぜって好きだから!)
ぎゅー、ってすごく切ないんですよ私の中では。
抱き合うと、胸が締め付けられる感じがします。あれ、しません?
この後の夜の話と、お正月明けの話も考え中です〜(妄想が止まらなくなった)。