そろそろ先へ進みたくなってきました。大正時代パラレルでございます。
初心な宗一さんでもなんか感じてるっぽいですよ。隠す気ないでしょ、森永くん。という第五話、追記からどうぞ!
※原作とは一切関係ない妄想文です。
※大正時代をモチーフにした、パラレルSSとなっております。そのため、若干家族構成や生い立ちなどを都合よく捏造しています。あしからずご了承ください。
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高永ひなこ先生作「恋する暴君」の感想ブログです。
そろそろ先へ進みたくなってきました。大正時代パラレルでございます。
【初戀〜夏夜篇】
汽車を降り、小さな駅のホームに立って見渡すと、辺りには蝉の鳴く声と入道雲と青い空。海辺の道を、虫取り網を持った子供らが走っていくのが見えた。
改札を出たところには満面の笑みの見慣れた顔。知らない土地で知った顔をすぐに見つけて、ほっとした。
「宗一さん、いらっしゃい!待ってましたよ!」
「おう…久しぶり」
俺は夏休みの間家に戻っていたが、哲博が「みんなで避暑に行ってますから、帰っても誰もいませんよ。宗一さんも来てください!二日とか三日とかでいいですから!」と強硬に勧めてくるので、帰り足だし、少し寄り道することにしたのだ。
「母上はお元気か?」
「はい、のんびり縫い物などしてますよ。宗一さんの浴衣も作ってました」
「えっ…いつも、すまないな」
「宗一さん、何着ても似合うから楽しみですよ」
……ん?母上がそう言ってくださってる、のか?
「浴衣着て、縁側で西瓜食べましょうね」
熱い日差しの下、隣を歩く哲博を見上げる。年は下だが背は少し高いこいつの目は、なぜかいつも俺を見ている。
ちょっとだけ細められたその目を見ていると、胸の奥がざわつく。
つう、と襟元を汗が伝い、手拭いでぬぐう。
「宗一さん、袴じゃ暑いんじゃないですか?」
「うーん、さすがにちょっとな…しかし、これしかないし」
「俺のズボン貸しますよ」
そう言いながら、哲博は俺の顎に指を伸ばした。ぬぐっても後から落ちてくる汗の粒を、指先に乗せるようにして顎をなぞる。
「汗だく……」
じわじわじわ、蝉の鳴き声だけが耳に響く。俺を見下ろす、哲博の目。別に怒ってるわけでもないのに、少し怖いような気がして、触れた指先から顎を引いた。
「行きましょう」
何もなかったみたいに、哲博は歩き出した。なんだろう、今のは。
俺の心に、時々こんな波紋が立つ。そう、あの時から。
あいつの初恋の秘密を、知った時から…。
少し前を行く、哲博の影を見つめながら歩いた。
森永家の別荘は、浜辺が見える高台にあった。小さな家だが、綺麗に整えられている。
「宗一さん、俺と一緒の部屋なんですけど、いいですよね?」
「ああ」
森永の母親に挨拶したあと、二階の海が見える部屋に荷物を入れ、着替えをした。哲博が貸してくれた半袖のシャツと、さらりとしたズボン。普段洋装をしないから、落ち着かない。
「うわ……」
「なんだよ」
「すっごくよく似合います!」
そんな、拳握って力説することか?
「海行きましょう海!」
子供みたいにはしゃいで、哲博が俺の手を引いて走って行く。さっき登って来た坂を下り、浜へ出た。草履の足に触れる砂が熱い。
「おいっ…待てって」
波しぶきの中へ真っ直ぐに突っ込んでいくバカの手を振り切って、浜に戻ろうとした俺の背後から、水しぶきがかかった。
「バカッ何すんだ!」
「ははっ」
「てめえ、子供か!」
浜へ逃げる俺と、追いかける哲博。砂に足を取られて思い切り転んで、熱い!と叫んで起き上がろうとする俺に、同じように転んだ哲博が覆いかぶさってきた。
「うわっ!」
「あっつー!」
「どけばか!…っ」
首を横に向けた時、砂だらけの顔に何かが触れた。
「……あ」
「ご、ごめんなさい。痛かった?」
先に起き上がった哲博が、手を差し伸べてくれた。今、頬に触れたのはこいつの唇じゃないのか?ぶつかっただけか?
「耳、赤くなってる。ぶつけた?」
「だ、大丈夫だ」
ぱたぱたと砂を払って、哲博を見る。また、さっきみたいな、ちょっと怖い目をしている。しかし、それはすぐに消えていつもの優しい目に戻った。
「……はしゃぎすぎちゃった。ごめんなさい」
しゅんと萎れた耳が見えるようだ。犬みたいだと思うと、笑えてきた。
「いいよ。犬とじゃれてりゃこんな感じだろ」
「えっ犬って俺のこと?ひどいっ宗一さん!」
「犬みたいじゃないか、俺のあと付いて回って」
「その……嫌ですか」
「?犬みたいなのか?別に」
「ほんとですかっ」
今度は、見えない耳がぴんと立ったみたいだ。尻尾があったらぶんぶん振っていそうだ。ますます笑えるな。
夜は哲博の母君が作ってくれた浴衣を着て、庭で手持ちの花火をやった。小さく爆ぜる紅い火を落とさないようにじっと固まっていると、哲博が腕を揺さぶる。
「お前な!落ちるだろ……あああ」
「へへへ」
「哲博さんたら、宗一さんを困らせるんじゃありません」
団扇で風を送りながら、母君の笑い声が穏やかに響く。俺の母はもういないが、生きていたらこんな風に過ごせたのかもしれないと思う。
「さあ、私はもう寝ますよ。二人とも、せっかくの休暇なのだから夜更かしせずに寝るんですよ」
「はい、おやすみなさい、母様」
「おやすみなさい」
母君が居室に下がったあと、もう一本、と花火に火を点ける。今度は静かに、火花が咲く音を聞きながら、紅の変容を見つめた。松葉から柳、そして散り際の菊花。硫黄が燃えるだけだが、そこに「形」を見出す先人達の美意識は俺にはないものだ。万象は全て何らかの方程式の中で動いている。そちらにこそ、俺は美を感じる。
玉が落ちて、哲博からまた花火が手渡される。俺を見ている、こいつの目が、やっぱり少し怖くて目を逸らす。
「宗一さん、前に俺、好きな人がいるって言ったの覚えてますか?」
「……ああ」
共有した、初恋の秘密。そしてこいつの恋の相手。誰かに恋をしているらしいこいつのことを、俺はずっと気になっていた。でも、こいつはいつも俺にばかり構っていて、そんな相手がいるならそっちに行けと、何度も言いかけて……言えなかった。
指先が震えて、花火が落ちる。その手に、哲博の手が重なった。
「あれは、宗一さんのことです」
一瞬、世界から音が消えたようだった。虫の音も、潮騒の音も、自分の呼吸の音も。
「……いきなり、こんなこと言ってすみません。でも俺、休みの間ずっと宗一さんがいなくて寂しくて……今日、会えてすごく触れたくて……」
ぐっ、と浴衣の肩を掴まれると、俺は哲博のあの目に捕らえられた。怖い。
「だめ、ですか。俺のこと……嫌いですか?」
何も答えられない俺から、やがて逸らされた哲博の顔は、初恋の告白を聞いた時のようなつらそうな顔だった。俺がこんな顔をさせてしまっていると思うと、苦しくなる。
「嫌い……じゃない」
やっと、それだけ言った。別に嫌じゃないから、そう言った。
哲博の顔が、途端に明るくなるのを見てほっとする。
「ほんとに?宗一さん、ほんとに?」
「ああ。……でも、嫌いじゃねえってだけで、あとは分からん」
「そんなあ。嫌いじゃないなら好きでしょう?」
「好きってなんだ、俺はお前に恋などしてない!」
「ええーっ。じゃあ、好きになってください。俺、頑張りますからっ」
「知るか!せいぜい頑張るんだな。俺は男なんか好きにならん……っ」
少し声が高くなって、しまったと思っていたら唇を塞がれてしまった。
これは、接吻というやつではないのか?
俺は呆然と、哲博の熱情を受け止めているしかできなかった。
夏夜篇、終。
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VIVA!BETA!ベタ最高ひゃっほー♪と調子に乗った揚げ句。
すんませんベッタベタな昭和の青春映画みたいになっちまいました…orz
BGMがムーディな感じだったのも原因か!
今回の森永くんは大分我慢きいてませんねw
この間の目隠しといい、ことあるごとに兄さんに触りたがるうちの森永くんです。
さあやっと告白したぞー!……ごめんなさいもうちょっと続く……
性 別 | 女性 |
誕生日 | 12月14日 |
地 域 | 東京都 |
職 業 | その他 |
血液型 | A型 |
やっと森が手を出した!!!兄さんがちらちら森をみる感じと、森が我慢効かない3秒前だったのがスゲエ伝わった!
今日もよかった!!
浜辺でじゃれてる、花火やってる、チューやってる!!
・・・あたしだったら我慢効かなくて浜辺の時点で兄さん押し倒してそのままやってる・・・(笑)
いらっしゃいませ〜
いやいや大丈夫ですよ。逆に自由に書いてもらえなくてごめんなさいって感じで…
兄さんもかなり意識してますからねー。原作の兄さんと違って最初から嫌がってないというBLにありがちな展開でございます(笑)。
浜辺でえちは暑いし痛いしオススメしませんよ!我慢してください。
コメントありがとうございました。
森永君やりますねー。
無邪気なワンコなのに、目から色香(欲望?)がダダ漏れなのがいい!
宗一兄さんは清々しいまでにピュアでかわいいし♪
鈍そうに見えてちゃんと貞操の危機を察知してる辺りがさすがですね(笑)
なんだかとってもいいところで終わってしまったので、早くも続きが気になります!
恋心に揺れる宗一兄さんが楽しみ〜♪
ありがとうございました!
いらっしゃいませ♪
兄さん分が不足して禁断症状が出ちゃったみたいです(笑)。
兄さんはあんまりネンネちゃんだとこっちがイラッとするんでw そこそこ感じ取っていただきました。
続きは森永くん視点ですぐ続きを書こうと思ってまーす。
ありがとうございました!
二人が海でじゃれ合う二人が頭から離れません。
あははは、捕まえてみろよ〜
待ってよ宗一さ〜ん
みたいな(笑)青春ですね!
でもその後の花火告白がいいです〜素敵。
二人でしっとり線香花火。
宗一さんをうっとり眺める森永くん。
でも欲情が隠せてない感じがいいですね。
遂に告白まできましたが
まだまだ続いて欲しいです!
楽しみにしてまーす!
いらっしゃいませ♪
そう、浜辺といえばそれです。何が元ネタなのか既に分からないくらいベタなシーン。どさくさに紛れてほっぺちゅー。
告白も「言わなきゃ触れないからもう言わせて!」って森永くんが…ほんとは一年後とかの予定だったのに…(いろいろシチュを考えてたら避暑地の二人を書きたくなってしまったのは私)。今日続きを上げたいな〜。
もう少しおつきあいくださいませ。
ありがとうございました!