あなたはどうする?
空腹に似てるのにどこか違う渇きに耐えて眠る夜。あなたは
どうやって渇きを潤すの…?
君に飢える夜
「ちょっと、ちょっと!!錐生くん!!」
これはハンター協会の日常とかしている。理事長と零のゴタゴタ。
「別に今すぐ退治しなきゃならないヴァンパイアじゃないって言ったでしょ!」
「…野放しにしたらどうなるか。一番わかるのは俺、だ」
鋭い刃に似た瞳で見つめる先には誰がいるのだろう。わかりきった解答がぐるぐる頭を回る理事長は頑なな零にため息を洩らした。
「わかったから。だけど、単独行動はもうやめてほしい。これは協会長からの命令だ。いいね、錐生くん」
小さな舌打ちは昔からのこと。なんやかんやで彼はちゃんと人の気持ちを考えられる。そして、自分のこともわかっている。
だからこそ。
可哀想だと感じてしまう自分がいた。今日の闇夜を君はどんな想いで越えてるのかと。親心とは、血が繋がってる繋がってないは関係ない。彼の中の淡く切ない想いが血液錠剤を飲むごとに募るのもわかっていた。
錐生くんは優しい子。本当に、だから。ハンターなんて頼みたくない。
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「うっ…っっ…!」
闇は残酷に彼の獣を呼び覚ます。耐えても耐えても。
深紅の瞳には涙が滲む。今日も、渇きは癒されない。もしかしたら永遠に。
呪われた双子のハンターへの罰なのか。決して愛してはいけない人を好きになった宿命(さだめ)なのか。
ベッドは苦痛の度に軋み、悲鳴に似た寂しい唸りは響く。猛獣のごとく孤独で。
一筋の希望すらない。
ただ、欲しい血は届かぬ先にある。決して報われず、決して癒されない渇きの先。
「…っ…はは…っ」
零は小さく笑った。発作が起きるほど忘れたい相手は容赦なく浮かぶ。身体に残った彼女の血が駆け巡るのを感じに、眉を潜めた。
君に飢えた夜はまたすぐにくるだろう。
しかし、ヴァンパイアを刈ることで自分を傷つけて、君を感じないくらい自分を傷つけて。痛みを感じないようになろう。
固い誓いは死ぬまで永遠(とわ)に――。
fin