スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

永遠なんて言葉はないのに

私たちの距離は近くて遠い
手を伸ばせばそこにいるのに。届かない。


***

惜別を惜しむ時間などないくらいにヴァンパイアの私とハンターはお互いの立場のまま動きだした。

そんな矢先に彼との利害一致により彼の血を呑む機会があった。愛という感情とかではなく、あくまでもお互いの立場のための吸血。

枢が行方不明になってから私は先が見えない闇の中、純血の姫として生きなければならなくなった。

そんな中で彼の血を呑むことが、私の感情を揺さぶることとも知らず。ただ貪欲に 言葉の通りヴァンパイアという獣として彼の血を呑む。

彼の銀色の髪が生臭い血の匂いに微かに汚れた。血の匂いは私の嗅覚に甘美であり、少し己の立場を忘れさせるものであって。
我に返ったとき、銀色のハンターの血色は更に悪くなっていた。なのに止められない。

その血が私に流れて初めて彼の感情を知る私は目を見開いた。
甘くて切ない。

何故だろう。

涙が溢れた。

私は口元に残った彼の血を拭うとゆっくり話す。

「ありがとう。零。私もう迷わないよ。」

苦しそうに患部に手を当てた零は私を寂しそうな睨みで見つめた。

「…っ…」

「私はこれからも零と対立すると思う。だけど邪魔したら容赦しない。たとえ零であっても」
「俺も同じだ…ヴァンパイア…っ」


その時、私は極上の嘘の笑顔で微笑んだ。そして、彼に背を向けて再び歩きだした。

このヴァンパイアと人間の戦いが終わった先に私たちが一緒になれる未来がないのはわかっている。

どんなに足掻いても彼と共に歩む未来はないだろう。

だからお願い零。

私が死ぬときは、あなたにいて欲しい。
好きなんて言葉はいらない。あなたから貰った最初で最後のキスの温もりで私を抱きしめて欲しい。

生まれ変わったら私はあなたの側で本当の笑顔で笑いたい。叶うはずない夢を心にしまって。

涙が滲む瞳を拭い空を仰いだ。

fin
続きを読む

突然の出会い

注意。パロディとなってます。優姫はお姫様で零は優姫に尽くす騎士みたいな…

パロディ苦手な方はバック!おkな方はどぞ!




*******


小さくトクントクンと波打つ脈。火照る頬。

この話は報わない恋の話。

広々とした王宮に寂しそうに俯く黒髪の少女。彼女の名前は優姫。

優しいお姫様。国中の人々はみんな彼女の優しさを慕っていた。身分制度を廃止すべく優姫は動いていた。
貧しい奴隷を売る人身商売や、女性や少女の売春はどの時代にもあることで。汚れなき姫は心を痛めていた。どうにか奴隷を解放させたいと考えていた優姫はお父様である王に秘密で王宮を抜け出した。
ボディーガードは二人。一国の姫と悟られないようにと顔をフードで覆う。
最近、新調したばかりの羽織りは桃色で彼女の可愛らしいさを引き立たせた。

***

奴隷の刻印を腕に受けた子供たちを優姫は保護するため、せりにでていた。ほとんどを今日も引き取ることができたが、まだまだ足りない。無力さで涙が溢れた。


「…ころせよ…」微かに聞こえた声の主に優姫は振り返る。ボディーガードたちが無礼者とひざまずかせていたが、噛みつくような鋭い眼光。銀色にたなびく髪。殺気だった表情。

優姫はその少年に言いようもない何かを感じた。まるで惹きつけられる引力みたいなものを感じた。

「あなたの名前は?」

優姫の問いに零は唇を噛んだまま睨みつけたまま。

「無礼者!姫様の質問に答えろ!」

みぞうちを蹴られた零はそのまま倒れこむ。しかし睨みつけた瞳は優姫に向けられたまま。

優姫は零の側に寄るや否や、手を差し伸べた。

「あなたを助けたいの」

刃向かうように零は優姫の睨みつけて重い唇を開いた。

「王族はみんなそうだ!!俺たち奴隷を助けようとして苦しめるだけで、良いことしたように振る舞う!貴様も同じだ!!」

可哀想で 不憫で
優姫は涙がこぼれ落ちた。

その姿が
あまりにも綺麗で零は目を見開いたまま硬直した。

零を混乱させたのはそれだけでない。
優姫に抱きしめられる自身にも驚いた。知らない感覚に心が震える。

もうすでに俺は恋に落ちていた。のかも知れない。fin
続きを読む

目線の先には、

いつも。あなたの目線の先には彼女がいた。


黒主学園にはデイクラスとナイトクラスが存在する。デイクラスには美男美女がいる。群を抜いた美貌の持ち主、玖蘭枢。

でも私は興味がなくなった。

正確に言うと私、撫子は恋を知ってしまった。こっそりナイトクラスを見に行って、塀から落ちる身体を受け止めてくれた錐生零。

彼は密かにデイクラスで人気があった。常に苦虫を噛んだように眉間にシワを寄せて冷たいオーラを放っていた。

しかし 彼が私を受け止めてくれた時に気づいたのだ。この人はとても優しい人だって。私は彼の腕のたくましさに、感じたことのない胸の鼓動と火照る頬の熱に気づいた。

ああ
恋に落ちた


******


気づいたら錐生零を見つめていた私がいた。彼はいつも授業中寝ている。


どんな夢をみているのかな
その夢には少しでも私はでてくるかな

そんなこと考えていたら自分の目線の先の人物に先生から指名された。

彼は数学が得意。

どんなに難しい問題もいとも容易く答えてしまう。そんな彼を見ていたら目線の先には彼の目線の先が見えた。


黒主優姫

理事長の娘だった。錐生くんと唯一渡りあえるという鉄の女って噂を聞いたことがあった。

ああ
彼は黒主さんが好きなのね。

愛しそうに、時に、私さえも切なくなるくらいギュッと胸が締め付けられちゃう瞳で彼女を見つめて。

もう私に勝ち目なんてないって思ってしまうじゃない。

でも私は勇気を振り絞って、聖ショコラルデーの計画を練るのだった。


続く

続きを読む

全てが憎いはずだった

アイシテルなんていえないのに
アイシテルって言いたいのに
なんて矛盾してるんだろう


全てが憎いはずだった



ヴァンパイア達の定例の夜会にはハンターの同席が必要だ。純血種や貴族階級の身分であるヴァンパイア達の夜会。迷える子羊がいたら大変だ。


『玖蘭優姫様』
『最もみずみずしい純血種の姫よ。』

口々に白々しいほどの叫びが飛び、シャンデリアの輝きは一層増す。
優雅な音楽も
並べられた素晴らしい料理も
美しいヴァンパイア達も
目に入らない。
1人のハンターには敵わない。

****


『…ぜろ…?』
「遅かったな」

夜会会場の屋根裏なんてネズミ以外は誰も来たりしない。薄暗くて蜘蛛の巣だらけな小さな部屋だけどほこりを被ったベッドも完備されている。ベッドに腰かけた零は静かに扉の前の姫に聞いた。


『ちょっと色々あってね』
「いろいろ?」
『うん。純血種を狙う貴族は多いの』


優姫は部屋に慣れた手つきで入り零の隣に座った。


『顔みせてよ。零』
「……」

触れただけで心が高鳴って。血が、騒ぐ。細い手首に頬を寄せた零は普段は見ることができない。
*****


「髪、いつ切るんだ?」
『髪…?』

いつからか生まれた時の姿になってた。求めるままに貪りあって。乱雑に乱れた服は放り出されたまま。


『髪が長い女の子は嫌?』
「…鬱陶しい」
『質問の答えになってない』
「……」
『また、肝心なとこで黙るし…』


優姫は零の首筋を舐める。滑らかで美味しそうな匂い。ヴァンパイアとしての衝動と、先程、愛し合った余韻が交錯してしまう。


「…っ」

洩れた声と共に流れた深紅の液体。

『ぜろぉ…』
「なんだよ」
『ぜろぉ…』
「しつこいな」

じゃれあって。それはまるで何も知らない子供のようで。

『あたし以外にこんな事したら絶対許さないから…ね。血もあげちゃだめ。あたし以外に笑っても、あたし以外にアイシテルって言っても駄目』


「ああ。言わない。血も全部お前だけの…モノだ…」

満足そうに微笑むヴァンパイアの姫。
愛憎にまみれたハンター。


「お前を嫌いになんてなれないさ…ずっとな」

「嫌いにならないで…」

寄り添って。なのに残酷な鐘の音が二人の耳に届いた。

『ああ…もう…行かないと』
急いで仕度を済ませるヴァンパイアの姫は昔の名残を残していて零は笑った。

『零、また今度、夜会でね。』

頬へのキスでは足りないのに。夢から醒めた夢で。届かないもとに、また消えた近くて遠い存在に。全てが憎いはずだったのに君だから愛してしまったんだ。

…なんてふと感じた。

fin
続きを読む

君に飢える夜

あなたはどうする?
空腹に似てるのにどこか違う渇きに耐えて眠る夜。あなたは
どうやって渇きを潤すの…?



君に飢える夜




「ちょっと、ちょっと!!錐生くん!!」

これはハンター協会の日常とかしている。理事長と零のゴタゴタ。

「別に今すぐ退治しなきゃならないヴァンパイアじゃないって言ったでしょ!」

「…野放しにしたらどうなるか。一番わかるのは俺、だ」


鋭い刃に似た瞳で見つめる先には誰がいるのだろう。わかりきった解答がぐるぐる頭を回る理事長は頑なな零にため息を洩らした。


「わかったから。だけど、単独行動はもうやめてほしい。これは協会長からの命令だ。いいね、錐生くん」


小さな舌打ちは昔からのこと。なんやかんやで彼はちゃんと人の気持ちを考えられる。そして、自分のこともわかっている。

だからこそ。

可哀想だと感じてしまう自分がいた。今日の闇夜を君はどんな想いで越えてるのかと。親心とは、血が繋がってる繋がってないは関係ない。彼の中の淡く切ない想いが血液錠剤を飲むごとに募るのもわかっていた。
錐生くんは優しい子。本当に、だから。ハンターなんて頼みたくない。

****

「うっ…っっ…!」

闇は残酷に彼の獣を呼び覚ます。耐えても耐えても。
深紅の瞳には涙が滲む。今日も、渇きは癒されない。もしかしたら永遠に。

呪われた双子のハンターへの罰なのか。決して愛してはいけない人を好きになった宿命(さだめ)なのか。

ベッドは苦痛の度に軋み、悲鳴に似た寂しい唸りは響く。猛獣のごとく孤独で。

一筋の希望すらない。

ただ、欲しい血は届かぬ先にある。決して報われず、決して癒されない渇きの先。

「…っ…はは…っ」

零は小さく笑った。発作が起きるほど忘れたい相手は容赦なく浮かぶ。身体に残った彼女の血が駆け巡るのを感じに、眉を潜めた。

君に飢えた夜はまたすぐにくるだろう。

しかし、ヴァンパイアを刈ることで自分を傷つけて、君を感じないくらい自分を傷つけて。痛みを感じないようになろう。


固い誓いは死ぬまで永遠(とわ)に――。


fin

続きを読む
前の記事へ 次の記事へ