「優姫…気持ち悪い…」
「え…あ、零〜!」
勢いよく倒れた零を支えきれず、優姫は零の上に落ちた。零は……………
「桐生くん…酒に弱いんだね」
「枢センパイ!」
後ろに枢は真顔で立っていた。枢は零の倒れてる場所に行ってしゃがみ零を見る。
「何も言わなかったら人間かヴァンパイアかもわからない…」
「センパイど…どういう意味ですか?」
「…気にしないでよ、優姫。それより理事長を呼んで来てくれるかい?桐生くんは酒で倒れたと…」
「はい、わかりました」
優姫は意味ありげな枢の発言が腑に落ちなかったが、理事長を早く呼び、零を介抱したいキモチで駆け出した。
取り残された枢は今までと違う殺気に満ち溢れた赤い瞳になる。
今にも零を殺せそうなほどの殺気。
「君を…生きさせている理由…ちゃんと考えたほうが良いよ。君がこんなだと困るんだよ…?桐生くん…」
零の銀色の髪を片手で掴み、言う。憎い、憎い、憎い、憎い…
零は確かに聞いた。
夢かと思ったが、大嫌いな玖蘭枢の声が聞こえた。
「君は優姫に返し切れない借りがあるのだから…復活の日まで…君に大事な優姫を守らせる…ヴァンパイア……」
ヴァンパイア…
それは紛れもない自分のこと。あの女にやられ見るも無惨に朽ち果て、人間の姿をし、同じ種のヴァンパイアを狙う。
同じ種…聞くだけでヘドがでる。
あいつの顔を見る度に殺したいと思う。そして、優姫の血を見る度に、良い匂いと思ってしまう。
これは夢か幻か、それとも現実か。
うっすら目を覚ますと隣には優姫がいた。
眠ってやがる…
少し動いてその振動で目覚めた彼女はにこりと笑う。
この笑顔が、ずっとずっと欲しかったんだ。
だが、夢か幻か、玖蘭は俺に今は優姫を預けてると言った。
あの意味は一体なんなのか。
この真実はあまりに残酷だとこの時は知らなかった。