楽しみな時間が来る。零の部屋に遊びに行く。
久々に零が一緒にいたいって言ってくれたから、早く行こうと思って行く。
「ぜろ〜!」
バンと扉を勢いよく開けた。中で本を読んでいた零は微笑した。
勢い任せに抱き締める。ギュとギュと。久しぶりの彼の匂いに温もりが幸せで心が騒いだ。零はずっと離さないからおどおどしている。
「優姫…そろそろ離してくれ?」
「いや」
「だだっ子か」
「だって久しぶりにギュとしたんだよ?零は嫌なの?」
そう言って膨れて見る。きっと照れたように笑って抱き締めてくれると思った。
「優姫…大事な話がある……」
「なに?…」
零は珍しく真面目な顔で自分を見つめた。銀色の髪が、目が鋭い。でも目をそらせない。
「優姫以外に好きな奴ができた。から…別れよう…」
「え…ぜ…ろ……う…嘘…」
「本当だよ…」
4月1日。エープリルフール。軽くついた嘘だった――
零は優姫は気楽な奴だからボカボカ頭とか叩いてくると思って優姫を見る。
「…!!!」
激しく動揺した。優姫はポロポロ静かに涙を流してる。
エープリルフールだから嘘をついたのに、本当にそうだと思ったらしい。
困る、そんなつもりで言ったわけでない。ちょっとしたイタズラ心なはずだった。
「嫌だよ、わたし…零が好きなキモチ誰にも負けないのに…」
君の言葉がどれだけ愛しいか、そして申し訳なかった。慰め方が
わからない―――
でも伝えたい。君が好きだと。
泣きじゃくった優姫を抱き締めた零。優姫は何が起きたかわからなかった。
「ぜろ…?」
「優姫…俺…その…嘘だよ…エープリルフール…ー…」
優姫は涙をためた大きな瞳で零を見た。
「…エープリルフール?」
カレンダーを見た。4月1日。
本当だ、良かったー…
「良かった…嫌われたと思ったよ…」
「ばーーか」
「な、ばかですよ!悪かったわね!」
零は優姫が愛しくてたまらなくなる。可愛すぎるだろ。言わないけど。
「零…わたし…零が嫌い…」
「な、…な〜に〜??」
零はびっくりした顔をしている。優姫はべ〜と舌をだした。
「エープリルフール〜!!」
「優姫、お前このやろ!!」
4月1日。今日はエープリルフール。だから、嘘も、ほんともあるもんか!!
「零なんて嫌い」
「嘘つけ!」
「嫌いだもん!」
「じゃあ俺も優姫が嫌いだ!」
「ふ〜んだ!」
優姫は零の本を奪って逃げる。
「まて!!」
二人のお遊びは続く。今日はなんでも嘘なんだ。