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ほっと息を吐く、その瞬間。

こうして離れて、少しだけ隣を寒く感じるようになった。

君がいないだけで肌寒くて、少しだけ寒がりになったような気もする。
カイロを握っても、マフラーを巻いても、手袋をしてもどこか物足りずに寒いまま。暖かさが満ち足りないまま。
時々、まるでずっと立ち止まっているかのように錯覚する。そんなことはないのに。

ただ、君がいないだけ。
それだけの、はずなのに。


依存なんてしていないと、執着なんて。

そう、思っていた。

今でもまだそう思っている部分がある。
だけどその片隅で、近くにない熱を探してしまう癖が付いてしまったことにも気付いている。


何がしたいのか、されたいのか。

互いに見失っていることは分かっていて。
それでも、懐かしく、そして未だに覚えのある馴染みある体温。

心を寄せるのはその手のひら。
心を落ち着かせる、伝え伝わる温度。

こぼすのは、安堵。


――参ったな。
素直に、そんな事を思った。

ボロボロと涙を流す背中を、君の手が撫でている。
自分が何を置いても守りたいと思うその人は、無鉄砲で、向こう見ずなようで――思っていた以上に、とても思慮深く、よく周りを見ている。そして、困った事に情に厚い。自身を欺いていた相手にも、躊躇いなく手を差し出してしまうほどに。

『大丈夫?』
思えば、昔からそうだった。
そのくせ、自分のことだけは誰にも守らせようとしない。いっそ笑えるくらいに、不器用で甘え下手な君。
そんなところがいつももどかしくもあり、たまらなく愛おしい部分なのだろうと思う。
口が裂けても、そんな事を君に伝える日は来ないだろうが。


結局振り回しているようで、いつも翻弄されているのは自分の方だ。
どれだけ自分が君を守りたいと思っているのか。
きっと君だけにはこの先一生伝わらない。
大きな溜息を一つ吐き出して、誰より大切なその人を真っ直ぐに見つめた。


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