潮風

「えへへ」
「何笑ってやがる」

なんでもないよ。なんでもないです。ただ、嬉しかったんだ。玄関を開ける直前よりも、今のほうがもっと、ずっと、好きになっただけです。
だから、ぎゅっと抱きついて、背伸びをして、爪先立ちしすぎて、本当に一瞬、激突みたいになったけれど、鼻先にキスをひとつした。触れるというよりも、ぶつかっただけのキス。

「海、行きましょう!」
「……」
「ぁ、ちょっと待っててください! 鍵を……はい、これでだいじょー、」

鍵をかけて振り返って、そして、またもっともっと好きになった。

「お前って、ホント」

だって、すごく嬉しそうに、どこか子どもっぽく笑ったりするから、いつも大人な雰囲気とあいまって、たまらなくドキドキさせられたんだ。

好きな色

あの部屋の西向きの窓から見える夕焼けは、今日もきれい。同じ色は二度と見られない。だから大切なものを逃がさないように、じっと、見つめるのだ。その色を脳に刻み、たとえ何も見えなくなる日が来ても、それを好きな気持ちを、思い出せるように。

ガラス瓶A

あの時の彼女の行動は、思い返せば彼女らしからぬ行動だったのではないだろうか。

『……ねぇ。幸せになってください』

言葉が重なったような気がした。

「なぁ、お前はなんで人の幸せばっか願うんだ。お前自身の幸せ、どこに置いてきた?」


そう、確かに自分たちは友人だった。かけがえのない存在だった。
隣にいてほしいと願っていた。


一人は、もう一人の幸せだけを願っていた。そのために、自分の幸せを犠牲にして。
一人は、幸せを掴んだ。それがもう一人の犠牲の上に成り立っていたのだとは気づかずに。

ガラス瓶

(……疲れてしまった)

「……なんて、ゆるされ、ない……?」

誰に問いかけるでもなくポツリと言葉を零す。

本日最下位です

逃げるでも、頑張って生きるでも。停滞している時間は一番苦しい。
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