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揺るぎないもの

それが1つあれば、私は大丈夫。


砦A

心配をしてくれている。
それだけで、救われる気がするなんて。
私はうつむいて、あらためて微かに笑ってしまっていた。

私はなんて簡単で、ちっぽけな人間なんだろう。
小さなことに一喜一憂して。


そして多分、とても愚かなのだ。
まだ、君のくれた言葉を、信じている。


こんな扱われ方には覚えがある。

思い出したく、なかったのに。


「・・・ん、なさい、・・・ごめん、なさい」

きっと、私は何かひどく間違えたのだと思う。
君を、こんな風に暗い瞳にさせる理由が、何か私にあったのだろう。
信用してほしい。
許してほしい。
怒らないでほしい。
嫌われたくない。
こんな風にされるのは、嫌だ。
・・・・でも、もう、嫌になったのかな?
私の事、嫌いになったのかな。


だけど、他にどうすればよかったんだろう?


近いようで、君が遠い。
もっと近づきたいのに。
君が離れて行ってしまったら、私はもうがんばれない。

もうここには居られなくなる。


洩れそうになる嗚咽を我慢して、手の甲で口元を覆い、戦慄きながら見上げると。


君は何故かひどく狼狽えた様子で、戸惑ったように私を見ていた。

「・・・・悪かった、」
何故か君が謝ってくる。
困り果てたような表情で。

もう、怒っていないのだろうか。
ゆるしてくれたのだろうか。
だったら、いいのに。


ぽたぽたと涙がこぼれ、急いで腕でこすって誤魔化した。
すると君は、うつむいて、もう一方の手で顔を覆う。
それから震えるような声で、「ごめん」ともう一度呟いた。
私は、ぶんぶんと首を振った。
なにも、悪くない。君は何も。
ただ私が未熟で、力が足りないだけで。

そんな風に落ち込まないで。傷付かないで。
君の手をそっと握った。

少しでも温もりが伝わるように。

力を込めると、君の指がピクリと動いた。

私にちゃんと、守らせて。
君のために、私にはこれしかできないから。
君を癒したい。
君に元気でいてほしい。
どうか、君の傍にいさせて。



分からない感情は

たくさんの書物と生きた声から勉強する。


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