『君だよ』
素早い動きだった
すり抜けて居た筈の京助の手が実態と化した
そして机のハサミを流れる動作で掴んだ
丁度くびれの所を引っ張られ
京助と抱き合い形になった
そして
喉元にハサミを押し付けられた
『僕を殺したのは君だよ』
かすれていた声がはっきり聞こえた
顔には怒りを隠さずに表している
…怒りだけで実際したと言うのか…
「嘘だ!!俺は殺してない!!」
一瞬の出来事に戸惑いながらも
必死に訴える
『君だよ 君が僕にあんなことをいわなければ…僕は…!!』
怒りが悲しみに変わったのが
手に取るように分かった
京助が
泣いている
実態しない筈の京助の涙が俺の手に落ちた
「あんな事…?」