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◆ビアンカ編〜登場人物紹介≪2≫



≪第2部≫
「B&M」


◆ジュリアーノ・ステファネリ……イタリアン・マフィアの若きドン。
金髪碧眼の美しい容姿とは裏腹に荒々しい性格の持ち主。
普段はナンパに明け暮れる典型的なイタリア男だが、実はかなり冷徹かつ合理的。そして、情熱家である。
記憶と悪魔的な容姿を失っていたビアンカに惚れ、お互いに惹かれ合うが、それが全ての悲劇の始まりだった。
(モデルは、リバー・フェニックス)



◆セルジオ・ステファネリ……ジュリアーノの父親。
先代のステファネリ・ファミリーのドン。
病床で息子のジュリアーノとファミリーの行く末を心配していた。


◆クラウディア・ステファネリ……ジュリアーノの母親。
ジュリアーノが幼い頃に他界しているらしい。



◆ファビオ・メタネーロ……メタネーロ産業の会長。
ビアンカの祖父。マリアの父親。
失踪していたマリアとその娘ビアンカをずっと探していた。


◆アントニオ・メタネーロ……ファビオの息子で、メタネーロ産業の社長。
ビアンカには伯父にあたる。
レベッカの父親。



◆レベッカ・メタネーロ……ビアンカの従姉妹。アントニオの娘。
深層の令嬢であるが、ビアンカに似た風貌と更に輪をかけた様な“じゃじゃ馬”だった。
従姉妹であるビアンカに本気で惚れていた様子。



◆アル、マリオ……ドン・ステファネリに仕えるジュリアーノの側近。
先代のボスからも信頼は厚い。


◆ビットリオ……ドン・ステファネリの忠臣と言われていたが、ドン(セルジオ)の死後裏切ってファミリーを乗っ取ろうと画策していた。


◆アリッサ・マキャベリ……ジュリアーノの元カノ。金髪美人だが、我儘で貪欲な性格が嫌われた。
ビアンカに熱を上げるジュリアーノに嫉妬していた。巨乳💙



◆“死神”パトリック……魔界から遣わされた暗殺者。
裏切り者のビアンカの父ベルフェゴールとその弟ロッソを抹殺する為にやって来た。

『そして、希望と言う名の闇』(ジュリアーノ外伝)





「セルジオの親父も長くねえなぁ…」


酒場には、ステファネリ一家の名だたる幹部が集まり、力の衰えた自分のボスを嘆く。

「ああっ…むしろ新興のマルコーネ・ファミリーの方が勢いもあるし、若い連中が集まってる。現にビットリオはマルコーネに降ったって話だ…」


その言葉に幹部達はどよめいた。


「何?親父さんの右腕だったビットリオがか…?」


暗い酒場が、なお暗くなる。


「ああ…もうステファネリ一家もおしまいかねぇ…」


チラリと外を見ると、スポーツカーの横で派手な身なりの美女をナンパしている金髪碧眼の青年がヘラヘラと笑っていた。


「待てよ。アリッサ…僕はもう君しか見えない!君がいないとダメなんだ♪」


大袈裟な身ぶり手振りで、アリッサの気を惹き車に乗り込ませるジュリアーノ。

呆れたような顔でアリッサはジュリアーノの傍に寄る。


「あんたのその瞳にはいつも負けるわ…」


「ありがとう♪」



「ステファネリの跡取りが…あんな坊やじゃな…」







病床に伏せるジュリアーノの父親、セルジオ“ドン”・ステファネリは、息子の顔を見るなり、身体を起こした。


「おっ…ジュリーか…?よく来た…」


「親父、あまり無理すんな…」


「…なんの、このセルジオ…まだまだ死ぬ気はせんよ…ゴホゴホ!」


「おい…寝てろって…」


強引に身体を倒すと、優しく毛布を掛ける。

そのジュリアーノの手を握り、その碧眼をまっすぐ見つめるドン。

「…親父…」


「アル…アルとマリオは、信用出来る男だ。お前が困った時は奴等に頼るんだ…ぐふっ」


「何の話だよ…?」


「…だが、ビットリオ…奴には気をつけろ…」


「ビットリオおじさんは親父の最高幹部じゃねーか…」


「ふふ…お前の瞳は死んだクラウディアにそっくりだ…」


「母さんに…?」


「ジュリー…お前は、わしの希望だ…ふふふ…」


意味深な笑みを残し、セルジオはそのまま寝入ってしまった。


「親父…」






その年の10月、ジュリアーノの父親、ドン・ステファネリは逝った。


葬式は盛大なもので、各地に散らばる幹部から、生前世話になった一般人から警察の者、果ては政治家までがセルジオを偲んだ。


その中に、黒服に長身、茶髪のロン毛の男がボルサリーノ帽を胸に当て、跪いていた。


「ふふ…安らかに眠れ。セルジオの旦那。ステファネリ一家は俺に任せておけ…」


“ドン”の霊前で頭を垂れるビットリオは、一人ほくそ笑んだ。

(…これでファミリーは俺のものだ…)


「ビットリオ…おじさん…?」


その声に振り向くと、普段の麗らかな笑顔が消えた悲愴な表情のジュリアーノが立ち尽くしすていた。


「おお…ジュリー…」

両手を拡げて、彼を抱き締めるビットリオ。

「…親父さんはいい男だった。これからは力を合わせてステファネリ一家を支えていこうな。これからはお前が“ドン”だ。ジュリアーノ…」


「ビットリオおじさん…」


「式が終わったら相談しようじゃないか。今後の事を…」


「そんな暇はないよ。ビットリオ…」


「ん?」


ジュリアーノは、懐からベレッタを出すと、そのままビットリオの胸板に突き付ける。
そのあまりに意外な行動に、一瞬目を疑うビットリオ。


「…てめえ…こんな群衆の前で俺を殺る勇気があるのか!?」


「へっ…」



今度は、その拳銃をコメカミに突き付けた。


その異変は、たちまちセルジオを偲ぶ者達の注目の的になった。

セルジオの用心棒だったアルとマリオもマシンガンを宙に向けて放った。


また、ビットリオの部下やマルコーネ側に裏切ろうとしていた幹部達もそれぞれジュリアーノの部下に銃やナイフを突き付けられていた。


「こ…これは…!?」


「お前の動きが筒抜けだって事ぐらいは分かってんだろ…?」


「だが、今日は親父の葬式だぞ!?…それに一般人や警官、政治家までいるんだぞ!!」


「…だから?」


「お前は正気か?ここで俺を殺したらどうなるか…」


「君の部下や反セルジオ組が一堂に会するのは、この日ぐらいしかなかったんでね…ふふふ♪」


「…お、親父さんが君を見たらなんて言うか…」


その言葉にキレたジュリアーノは、ビットリオの脚を思い切り蹴飛ばし、その場に倒して、更に拳銃を向けた。


「てめーに親父の名を語る資格はねえよ…ビットリオ…!!」


ジュリアーノは、さながらローマ皇帝の如く右手を高く掲げると親指を上げ、それを今度は下に向けた。



それを合図に、主だった反セルジオ組やビットリオの部下達は一斉に“粛清”された。


悲鳴と怒号が交わされ、その場は突如、修羅場と化した。



だが、そのあまりに突然の“処刑”現場に人々はただジュリアーノの姿を畏れ立ち竦むのみ。


倒れ、血塗れになる部下達の姿を唖然として見つめるビットリオ。

「な…なんて事を…なんて…」


目の前にいる、一見、天使の様な青年は、もはやビットリオには紛れもなく死神にしか見えなかった。



(俺は…見誤っていたのか?
セルジオの息子は腑抜けだと思っていたが…

コイツはとんだ猛獣だったようだ…)



「こんな…公衆の面前で…お前は…コーザ・ノストラではない…お前のやり方は間違いだ。お前は狂ってる…」


「…ビットリオおじさん…僕はあんたが嫌いじゃなかったが、親父を裏切る奴は許さねえ…」


観念した様に、ビットリオは笑みを漏らした。


「何がおかしい?…最後に言いたい事はあるか?」


「ふっ…お前は、親父さんよりクラウディアにそっくりだよ。顔もだが、そのせっかちな性格もな…」


「母さんか…親父も同じ事を言ってたよ…」


再び、拳銃を後頭部に当てる。


「言いたい事はそれだけか?」


「お前の母親クラウディアは、若い時はとんだじゃじゃ馬でな…ふっふっふ…だが…」


「!?」


「俺もクラウディアを愛していた…」


「母さんを…?」


「ジュリアーノ…お前も好きだったよ…やはり俺はお前達には勝てない運命らしい…ふふふ…」



「ビットリオおじさん…」


再び、銃声が響いた。



それは「ジュリアーノの時代」の幕開けを告げる祝砲だった。







【完】


初掲載2010-05-31





[イラスト/tyakki様]



いつもジャン吉小説をご愛読ありがとうございます♪(o^-')b

タイトルはフレンチ・ノワールのパロディです(笑)( ̄▽ ̄;)


応援よろしく!!\(^_^)(^_^)/

B&M外伝〜X'mas記念小説『Silent night』





身を切る様な寒さの中、
自分を御するのは懐の拳銃と、背中のショットガンのみ。

それが、わたし…


わたしはビアンカ。


今日はクリスマスらしい。


悪魔の子のわたしには、もっとも不釣り合いで、お呼びでない日。


手足の凍えを癒すように縮こまり、橋の下で丸まっていると、川に赤や緑のネオンが差し込む。


青白いイルミネーションが反射し、家族や恋人達の語らう声が聞こえてくる。

見上げると、橋の欄干から小さな男の子が自分の方を見詰めてる。

フードを被るわたしの顔は見えないはずだけど、わたしが怖くないのだろうか。


「お姉ちゃん、そんなところで何をしてるの?」


どう応えたらいいんだろうか?
でも、相手は小さな子供だから適当にあしらっておこう。


「サンタさんを待ってるのよ…」

男の子の、クスクスと笑う声がした。


「…そんな所で待ってたってサンタさんは来ないよ〜」


「じゃあ、どこに来るの?」


「待ってて…今、行くから…」


あっ…、と思った刹那、男の子は橋の欄干から飛び降りた。


川によろけそうになりながらも、ビアンカの前に無事に着地する男の子。


「あ…あんた、危ないよ!?」


「へへんっ…平気だよ!」

鼻の下を擦りながら近付いてきた男の子を見て、ビアンカはある人を思い出した。


「ジュリアーノ…?」


男の子は、金髪碧眼で悪戯っ子ぽいところまでがジュリアーノにそっくりだったのだ。
でも、ジュリアーノが生きてるはずがない。
ましてや、こんな小さな子供なはずがない。

だが、不意に目頭が熱くなるビアンカだった。


「どうしたの…お姉ちゃん、泣いてるの?」


「ううん…泣いてなんか……」

ふと、見上げると男の子の姿は消えていた。


川に落ちた…?


しかし、そんな音もしなかったし、気配もない。


何だったんだろう……?

寒さの余り、幻覚でも見た?


足元を見ると、帽子が落ちていた。


ビアンカには、それが見覚えがあった。


そして、すぐに思い出した。
(ジュリアーノの…)


裏返すと、その鍔に

「Merry X'mas Bianca」

の文字が見えた。


そして、最後には


「G」

と、記してあった。




星空を見上げながら、帽子を抱きしめる。


ビアンカは、凍えそうだった心も身体も暖まった気がした。


「ありがとう、サンタさん。メリークリスマス、ジュリアーノ……」








《END》


すべての愛しき者に、愛の光を。







初掲載2009-12-25

『B&M外伝・レベッカ・ザ・クエスト』《後編》




「ビアンカ…わたしの所に戻っておいでよ」


レベッカは、水に浸かりながら、ビアンカの臍辺りを撫で回しつつ言った。


「ベッキー、わたしの話を聞いてなかったの?わたしは、あんたや自分の祖父を殺した…今更どの面下げて戻れると思う?」


「聞いてるわ。だって、あれは御祖父様が悪いんじゃない!アニーの恋人を殺したのは御祖父様なんでしょ?」


ビアンカは、そのまま膝を抱えてうずくまる。


「わたしは…取り返しのつかないことを…」


「何を今更!あなたはガルシア総統だって撃ったのでしょ?…それでもミカエラやアンジェラは最後には許してくれたんでしょう!?ましてや、あなたは恋人を…」


「復讐したって、ジュリアーノは帰って来ないよ……」


「復讐ではないわ!あなたが生きるため、前に進むためにやったことよ!四人の刺客だって、あなたが倒したんでしょ?」


「刺客…?」


余計なことを口走ったと、口を押さえるレベッカ。


「……なんで、レベッカがそれを知ってるの…?わたし、まだそこまで話してない……」


立ち上がると服を着て、振り返りレベッカに拳銃を向ける。


「まさか…あんたが…?」


「そ、そうよ。あいつらが邪魔だったから…それに、あなたの居場所を捜すのにちょうど良かっ…」
拳銃を頬に突き付ける。


「……また、わたしに無意味な人殺しをさせた……?」


「ま、待って!ビアンカ…わたしまで殺すの?わたし達幼なじみでしょ?従姉妹でしょ!?」


「わたしを利用した…」


「ち、違っ…わたしがあいつらを利用したのよ!?」


「あんたまで…」


引き金の指が微かに動く。覚悟して目をつぶるレベッカ。

だが、何も起こらない。
再び目を開けると、ビアンカは無表情のまま身支度を始めている。


岩場を背に、下半身を水に浸けたまま、身動きとれないレベッカ。


「……わたしはラボミアに行く。ミカエラやアンジェラに会って来る…」


「ゆ、許してくれるのね……?」


首根っこを捕まれるレベッカ。

「あぐっ……」


「あんたは許さない…だけど、殺しはしない…」

おもむろに用意したロープで、レベッカを後ろ手に縛り上げる。

「な、何を……?」


「此処はまだ暖かいけど、砂漠の夜は寒いよ…昼間は灼熱地獄だけど……」


ロープを引っ張り、そのままレベッカを木に縛り付ける。


裸のまま、宙吊りにされるレベッカ。


「ほ、放置プレイって奴…?い、いや…降ろして!」


「殺されないだけ、ありがたいと思いなっ!!」


そう叫ぶと、踵を返し去ろうとするビアンカ。


「ちょっ…ちょっと待ってよ、アニー!?こんな所で吊されたら死んじゃう!!ほ、ほら、なんかケモノの声がするよ、食べられちゃうよ!?」


脚を止めると振り返るビアンカ。
不気味な笑顔を見せながら呟いた。

「安心しな…ここは狼とかの類は出ないから…代わりに、虫がいっぱいいるけど……大きいのやら小さいの……ははは♪」


「いやだーーーっ!?」


「ラクダさんに助けてもらうのね…」


泣き喚くレベッカを尻目に、ビアンカはそのまま闇に消えていった。









『B&M外伝・レベッカ・ザ・クエスト』〜完〜



初掲載2009-12-27

『B&M外伝・レベッカ・ザ・クエスト』《中編》




「祖父を殺したビアンカの首を持ってきて。それが、わたしの望む条件よ!!」

鬼気迫るレベッカの迫力に気負わされる一同。

父親アントニオは、ただうろたえるばかりだ。


「ベッキー…お前、知っていたのか……?」


「ええ、すべてね」


集まった五人の婚約者候補の中から、まず一人が前に出た。

大柄の身体を軍服に包んだ軍人。
彼は敬礼すると、こう名乗った。

「お嬢様。自分は、フランク・ベッキオ大佐であります。そのビアンカなる者の正体は不明で、かの条件も不可解かつ異様なものですが、お嬢様の期待に応える自信はあります!」


レベッカは、満面の笑みでフランクの手を握る。


「相当な自信がおありの様ね……では、頼みましたよ?」


「はっ…」
彼は、再び敬礼すると踵を返し部屋を出た。



数日後、隣国の川で彼の銃殺死体が発見された。


「返り討ちにあったのか……?」


「ふふふ…さすがに手強いわね。貴方達はどうするの?」


残った四人を見遣るレベッカ。


お互い顔を見合わせる男達だが、今度は礼服に身を包んだ神の僕が前に出た。


「お嬢様。わたくしはアンジェロ・ダミアーニです。神に仕える身として、そのような悪魔は許し難い存在です。今度はわたくしが参りましょう…」


「頼もしいお言葉。では、貴方…見事ビアンカを倒したあかつきに、わたしの心を掴んでくださいな…」


「吉報をお待ちください!!貴女に、主の御加護のあらんことを…」

アンジェロ・ダミアーニは、勇んで出発した。


しかし、数日後…

今度は、また違う国で胴体を真っ二つに斬られた姿で発見される。


「神の御加護は無かったワケね。…貴方達、どうするの?」


更に残った三人を睨むレベッカ。

「もうよせ!レベッカ!これは殺人事件だぞ?警察に任せて、お前は馬鹿な条件を振り回して命を玩具にするような真似を…」
アントニオが頭を抱えながら叫ぶ。


「馬鹿な条件とは何よ?男が女のために命を懸けるなんて、素晴らしいことじゃなくて?」


「そういう問題ではなくてな……」


「ああ、パパ…今更、わたしが嫁ぐのが心配になったのね……?」


その言葉に呆然とするアントニオ。

残る三人のうち、首相の次男坊ジョルジオ・カステラーノと、アンドリーニ社の御曹司トニー・アンドリーニは顔を見合わせると頷き、そのまま退出した。

部屋に残ったのは、ターバンを巻き浅黒い肌をした皇太子アブゾーラ・ソロモン13世だけとなった。レベッカは不思議そうな顔で彼を見た。


「貴方は行かないの…?」


「俺は、目星がついている。ビアンカが何処に居るのかも。我が国の優秀な人工衛星が、既にそのビアンカなる者の居場所をキャッチした…」


「……だったら、何故行かないの?わたしが欲しくないの?」


「俺は、確証を得たい」


「なんの?」


「あなたが何故ビアンカの首を欲しがるのか…」


「決まってるでしょ。ビアンカは、わたしの祖父の仇なのよ?」


「本当に、それだけか?」


その言葉に、諦めた様に溜息をつき、目をつぶるレベッカ。


「……いいわ。では、わたしも同行しましょう」


「いいだろう」


「お、おい…お前、まさか……ビアンカに会いに行くのか?危険過ぎる!」


「パパは黙ってて!!」





数時間後……


レベッカとソロモン13世を乗せたヘリは、砂漠のど真ん中に降り立った。

空は、すっかり夕暮れだ。真っ赤な夕陽がヘリを染める。


「……こんな所に、本当にビアンカが居るのかしら?」


アブゾーラは、砂漠に点在する黒い塊を指差した。

「あの、黒く見えるのはオアシスだ。水がある。恐らくビアンカは、そこに隠れているはずだ…」


「オアシス……」


突然、瞳を輝かすレベッカ。おもむろにバッグの中から拳銃を出すとアブゾーラに向けた。


「ご苦労様。もう、貴方は用済みよ。後はわたしに任せて…」


「最初から、そのつもりだったのだな?」


「どういう意味かしら?」


俯きながらアブゾーラは言った。

「貴女の眼中には、最初からビアンカしか無かった。我々は、ただビアンカを探る為に利用されただけだ…恐らくあの二人も餌食になったのだろうな。それに…」


「それに…?」


「俺も、貴女には興味はない。俺には、俺が自ら選んだ恋人がいる。この縁組は、親である国王が勝手に仕組んだものだからな…」


「うふふ…わたしと同じなのね…」


アブゾーラは、彼女に笑顔を向けると踵を返し、そのまま去って行った。


「幸運を祈る……」


「ありがとう。さようなら…」

レベッカは、それを見送ると砂漠のオアシスに進んで行った。


水音が聞こえた。

焚火が燃え、近くに女物らしい服が干してあった。
岩場に身を隠し、顔を覗かせると、そこには居た。


裸で水浴するビアンカが…


「ビアンカ……」

頬を染め、恍惚の表情でそれを見詰める。


「誰!?」


気配に気付いたビアンカが、直ぐさまショットガンを構える。レベッカもまた拳銃をビアンカに向けた。


銃を突き付け合う二人。


「久しぶりね…アニー…やっと会えた」


「あ…あんたは…!?」


ショットガンを下ろすビアンカ。

「忘れたの…?わたしよ、レベッカよ…」


「ベッキー?ホントにベッキーなの!?」


「アニー!会いたかった……」


そのまま、レベッカはビアンカに抱き着いた。


「もう…会えないと思ってた…」
涙を流すビアンカ。


「あらあら…泣き虫は変わってないわね…」


言いながら、レベッカも服を脱ぎ始めた。

「ちょっと、ベッキー…」


「気持ち良さそうね…わたしも水浴びするわ…」


そのまま、二人は星空の下、水浴する。


「ねえ…アニー…」


「なに?ベッキー…?」

レベッカは、ビアンカの身体をまさぐり始める。


「ちょっ…アニー…どこ触ってん…」


「アニー…大好きなの…あなたが……」


ビアンカは、戸惑いながらも身体を水に浮かせたまま、レベッカのなすがままに任せた。


「ベッキー…わたしね」


レベッカは、ビアンカの身体を弄びつつ、水面から顔を覗かせた。


「なあに?」


「色々あったんだ…あれから……聞いてくれるかな?」


「聞かせて。ゆっくりと……」


「ありがとう。ベッキー……」
ビアンカの瞳は星を見詰めていた。




満天の星空と、黒く佇む大地が一つに溶け合う世界で、二人の声と微かな水音だけが響いていた。






《続く》


初掲載2009-12-22
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