「で、でも秀吉さん達が怨霊になる前にあたしが浄化していれば…!」

「残念だが、それは叶わぬ」

「え…」

「僕達の命が尽きたのは、三成君が大阪城を出る少し前のことだからね」

「…!」

「当時の君はまだ、この世界に存在していなかったんだよ」

「そんな…!」


秀吉さん達を助けるためにここまで来たのに…
あたしがしてきたこと、最初から意味なんてなかったの…!?


「悲観することはない。お前が我らを救ったのは揺るがぬ事実。それを忘れるな」

「……」

「千里、本当は君が大阪城を訪れたらすぐに僕達を浄化してもらうつもりだった。すでに怨霊だった僕達は少なからず、この地域一帯の穢れの原因となっていただろうからね」

「…だが、我らはためらった」

「どうして…?」

「君が…そこにいたからだよ」

「え…?」


あ、あたし…?
どういうこと…?


「この世界に降り立って、龍神の神子となった君が目の前にいた。別れるのが惜しくなったんだ。…それだけの話だよ」


肩をすくめて微笑む半兵衛さん。
時々…半兵衛さんは不思議なことを言う気がする。


「…すまなかったね。君を傷つけたかったわけじゃないんだ」

「お前が罪の意識を抱く必要などない」

「そんなこと…」

「千里と会って…忘れていたものをたくさん、思い出した気がするんだ」

「礼を言わねばと、ここで待っていた」


秀吉さん、半兵衛さん…!
涙のせいなの…?
辺りが…かすんできてるのは…


「ありがとう、千里」

「お前は確かに、我らを救ったのだ」

「…!ま、待って!」


夢が終わろうとしてる…!
ダメだよ…!
まだ覚めないで…!


「最後に一つだけ、聞いてくれるか」

「え……?」

ふたりがどんどん遠くなって…


「三成君のこと、頼んだよ」

「秀吉さん!半兵衛さんっ…!」





















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彼女の何らかを見て、優しい気持ちみたいなものを不意に思い出してくれたらいい。
さぁ目覚めますよ。