【樹木の呼吸を身につけよう!・2/静観塾?8】


(一)

 足の裏呼吸が終わったところで私は少し話をすることにした。
 「いま練習した脚の裏呼吸での気の通るルートですが、厳密に言えば、胴体と脚では少し違うンですよね。」
 「陰陽のことですね?」
 允(まこと)が訊いた。
 「そう、陰陽による違いなんです。」
 私が答えると、梨紗(リサ)が声を出した。

*読者のみなさんには申し訳ありませんが、登場人物の女性の名前を紗梨から梨紗にへんこうさせて頂きます。
*サリよりリサの方が呼びやすいものですから…。
<(_ _)>

 「允君はプロなのでかえって混乱するかも知れませんし、梨紗さんも少しは勉強されていると思いますが、あなた方が本で勉強された経絡のルートと、気の感覚によるルートは違うンですね。」
 私は少し説明する必要があると感じ、一度二人を板の間に座らせ、ホワイトボードに図を描いて説明した。
 描いた図というのは、外枠が少し太めの土管を立てたような図だ。
  「胴体での陰陽というのは、実は表裏のことなんですね。」
 「表裏って? おなかと背中?」
 梨紗が訊いた。
 「内外のことだよ。」
と、允が言う。
 「体壁系と内臓系と言っても良いでしょうね。」
と、私は付け加え、そして話した。
 「経絡上に点在する経穴は、陰の経絡の経穴も陽の経絡の経穴も全て体表面に在ります。
 それは、鍼もお灸も体表面からしか施術出来ないからなんですよね。
 経絡、即ち気の通るルートは経穴を結んだ線ではなく、幅の広い立体的な層になって流れているんです。
 陰の経絡の経穴はお腹側にあるけれど、実は、そこは反応点、刺激点であって、経絡がそこを通っている訳じゃないんですね。
 陰の経絡は、もっと体の中、胸で言えば、肋骨で覆われた籠の中にあり、お腹で言えば、腹膜で覆われた中を通っているんです。」
 「それで内外、即ち、表裏なんですね。」
と、允が言った。
 「先生!」
 梨紗が手を挙げた。
 「こんな風に考えればいいんでしょうか。
 その図ですが、例えば、ロールケーキがあり、それを適当な長さに切って立てて、それを胴体と見立てると、外のスポンジの部分が陽で、中のクリームのところが陰って訳ですね?」
 「なるほど!」
と、允が小さな声で言った。
 「そう、先ほどの〔樹木の呼吸〕は、そのスポンジの部分を陽として三つに分け、中のクリームの部分が陰で、それを一つにして中心軸にして、胴体の気を通す練習をしたんですよ。」

(つづく)