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功法・7

【樹木の呼吸を身につけよう!・1/静観塾?7】


(一)

 「前回の〔自由な気のボール遊び〕は如何でしたか?】
 お盆は明けた。
 残暑と呼べるものではないほどの猛暑の続く中、愚庵を訪れた允と紗梨に私は訊ねた。
 「あれ、良いですねぇ。
 気の感覚もよくなるし、何と要っても自由な気のボール遊びから気の舞にいくあたりの解放感というのか、正にあらゆる心と体の縛りを解き放っていく漢字が〔気功〕って感じで素晴らしいと思いました。」
と、允が珍しく興奮した口調で言った。
 「気功は、前から言っていますが、自然体とか平常心を作っていく取り組みですから、自分を束縛している考えや思い、或いは体の強ばりを取り払っていくことが大切で、その為には固定された決まりのない自由な動きに挑戦してみるということも大切なんですよね。」
 私は応えた。
 すると、紗梨が真面目な顔で話し出した。
 「前回、最後のところの自由な気の舞をなさっている先生や允さんの姿を見ていると、美しいんですよね。
 当たり前かも知れませんが、先生の動きなんか、まるで炎とか煙のようで、何処にも塊や直線的なところがないんです。
 でも、わたしの動きなんか、家で鏡で見てみたんですが、まるで子どもが何かを欲しがって地団駄踏んでいるようなジタバタした動きなんですよ(苦笑)。
 とても〔気の舞〕なんて呼べるものではないんです。」
 「それはサァ…」
と、允が紗梨に向かって言った。
 「自由な気のボール遊びに行くまでの基本的な動きがあるじゃないですか…。
 そこをきちんと練習することじゃないかな、と思いますよ。」
 「そうだよね。
 感覚もそうだけど、基本が出来ていないと自由にもなれないんだよね。」
 紗梨が項垂れながら、自分に言い聞かせた。
 そして、顔を上げ、私を見た。
 「先生、動きの基本って何ですか?」
 紗梨は少なくとも初心者ではない。
 一定の〔ふぁんそん状態〕は出来ているし、それなりの気の感覚もある。
 そこで私は簡潔な説明をすることにした。
 「まずですね、基本的にふぁんそんしていることです。
 これは紗梨さんはかなり出来ている。
 それをベースに、作用点ではなく力点を何処におくかだけの問題なんですね。
 つまり、手や体の動きの殆どは、動いているように見えるけれど、何かの動きによって動かされているだけなんですね。
 体の何処を動かすのか、何処を向いて動かすのかをつかんでいけばいいんじゃないかと思いますよ。
 「力点って?」
と、紗梨が言う。
 私はそれには反応せずに続けた。
 「その力点の持ち方ですが、動きによっての基本があるんですね。」
 紗梨は真剣に私の話を聴いている。
 「まず、体の上下の動きは、力を抜いて真っ直ぐに沈み、一瞬だけ足の裏で床を押すようにすることです。
 片足の場合も同じです。
 背骨の前後や左右の揺れは、骨盤の動きから出発します。
 骨盤が動けば、背骨は只揺らされるという感じでしょうか。
 そして、腕の動きは胸板から始まります。
 大胸筋の内側で動かしていくと言ってもいいでしょうね。
 背骨の揺れの場合は、骨盤だけではなく、ウエストラインからとか胸のラインからなどという場合もありますが、どちらにしろ、何処かさえ動かせバ、ほかのところは、それによって動かされるだけなんですね。」
 「先生の言っていることは何となく解るんだけどなあ。」
と、紗梨が呟いた。
 すると允が助け船を出した。
 「先生はムチとかリボンなどと仰ってるけどね、それだと、動かさないでいるとダラーンと垂れ下がってしまってるでしょ?
 そうじゃないんだなぁ。」
 「そうじゃないって?」
 「竹を1?くらいの幅で薄く平らに切ったとすると、先を持って、動かしていない時でも、ダラーンとしていない。
 棒のように硬く真っ直ぐではないけれど、弾力を持って伸びてるでしょ?
 バネがあるというか、筋が通ってるんですよ。
 その竹の持っているところをゆっくり上下にうこかすと、竹全体が波のように揺れるじゃないですか。
 その、いま持っているところが骨盤になったり胸板になったりするんですよ。」
 口を真一文字に結んで允の話を聞いていた紗梨は「なるほど」という感じで何度も首を盾に振った。
 そして、私たちは練功場に行き、再度、〔気のボール遊び〕のところから動いてみたのである。


(二)

 「では、説明は後にして、続けて〔樹木の呼吸〕をしてみましょう。」
 少しばかり自由な気の舞を楽しんだ後、私は言った。
 「手足で気を通すヤツですね!」
と言う紗梨に、
「ヤツ?」
と、允が漏らした。
 〔気を通す功法〕というところを〔気を通すヤツ〕と表現した紗梨ではあったが、ほかにどんな代名詞があるんだろうと言葉を探してみたが、それ以外の言葉を私も見つけられなかった。
 そこで、
「はい、そうですよ。」
と、私は微笑んだ。
 「この〔樹木の呼吸〕も幾つかに分けて練習しますね。」
 そう言って私は〔足裏呼吸〕から練習に入ったのである。

*ここからは読者のみなさんもご一緒にどうぞ!

1、脚裏呼吸

?ラクに立ちましょう。

?手と呼吸を誘導にして、大地の気を足の裏からおなかの中まで吸い上げ、脚を通して吐き降ろし、足の裏から大地に吐き出しましょう。

?それをしばらく続けたら、今度は胸の中、鎖骨や肩甲骨の上あたりまで吸い上げ、吐き降ろし、足の裏から吐き出しましょう。

?その今のルート全体を、前、左右、後ろ、中心と分けて、それぞれに数回ずつ個別に気を通してみて下さい。
*前側数回
*左右同時に数回
*後ろ側数回
*脚の内側と胴体の中心で数回

?それぞれに練習したら、自分で感覚の弱いところを練習してみましょう。

?最後は足の裏から吐き出して終わりです。

(つづく)

功法・6

【自由な気のボール遊びを楽しもう!(つづき)/静観塾?6】


(一)

 拉気(ラーチー)が終わり、気のボールが出来たところで、一休みする感じで私は話した。
 「これまでして来ました〔掌を下に向けての外回しと内回し〕、〔昇降開合〕、〔掌を上に向けての外回しと内回し、それに〔拉気(ラーチー)〕〕で、背骨を緩めながら掌感覚を強くして、気のボールを作った訳ですが、ここからがやっと〔気のボール遊び〕に入ります。
 ここでは正に自由遊びなので、自由に動いて頂いて構わないんですが、一応、こんな基本的な動きがありますよって感じで色々してみますね。
 まずは基本の動きです。」


(二)

*ここからも、言葉での説明だけを記しますので、読者のみなさんも一緒に遊んでみて下さい。

? 水平に動かす。

*おなかの前でラクに気のボールを持ち、息を吸いながら骨盤を左に捻り、息を吐きながら右に捻り、これをくり返しましょう。
 体が緩んでくると、骨盤の動きからウエストラインが惰性の力で捻れていき、更に胸のライン、肩のラインと捻られて、肩関節の中の腕の付け根までズレるように動いていきますから、故意に力で動かさないでも動いていく螺旋階段状の体の捻れを体感して下さい。

? 上下に動かす。

*息を吸いながら気のボールを顔の高さ辺りまで上げ、息を吐きながら、尾骨から垂直に体が沈んでいくようにして膝を曲げながら気のボールを下腹の前辺りまで下ろし、息を吸いながら足の裏で床を下に押し、その力で体が垂直に上がっていくのに合わせて気のボールを上げていき、これをくり返しましょう。
 体の動きが主になって、気のボールは水の中で風船がふわぁーっと上がっていく感じで上がり、ゆっくり沈めてくる感じで下ろします。

? 盾横回しに動かす。

(左回し)
*体の動きは上下のままで、吸い上げる時に右から半円を描くように上げていき、吐きながら左から半円を描いて降ろし、これをくり返しましょう。

(右回し)
*数回回したら、右から上げたら〔Sの字〕を描くようにして吐き降ろした後、左から吸い上げ、右から降ろすようにして、逆回しもして下さい。

*左右の回し共に、慣れてきたら骨盤の左右捻りを加えて頂いても構いませんからね。


? 横8の字(∞)回し

*次に、?で吐きながら右から降りてきた気のボールを息を吸いながら、腰を左に捻り、左斜め上後ろに上げていき、息を吐き、腰を降ろしながら後ろ回しに半円を描くようにして降ろしてから、息を吸いながら腰を右に捻っていって、気のボールを右斜め上後ろに上げ、右後ろで半円を描いて吐き降ろし、この∞の動きを続けましょう。

? 盾前回し

*?から一度〔上下の動き〕に戻した後、気のボールを恥骨側に近づけてから、体を下から反り上げるようにしながら、肘で引き上げるように気のボールを顔の前まで上げていき、尾骨を後ろに引きながら、ラクに腕を伸ばして気のボールを上から回すようにして前から吐き降ろし、脊椎の波のような動きをしながらまえ回しの動きを続けましょう。
*更に、その動きを続けながら腰を左右に捻り、気のボールで不定形の曲線を描くようにして下さい。


? 横8の字(∞)回し・2

*前から回して降ろしてきた気のボールを、左右どちらからでもいいので斜め後ろ下に降ろし、後ろで半円を描くようにして吸い上げ、腰を反対に捻りながら斜めに降ろしながら後ろ下に吐いてから後ろで半円を描いて吸い上げ、∞の動きを続けましょう。

? ?のくり返し

*一度、上下の動きに戻してから?の動きに入り、再び腰を左右に捻りながら、不定形の曲線の動きに変えましょう。

? 自由な気のボール遊び

*?の後、膝の屈伸と腰の左右捻りを自由に使って気のボールが空中で自由に浮遊しているように動かしてみましょう。
*気のボールの向かう先を決め、それを膝や腰の動きで引っ張る(導く)ようにして下さい。

? 自由な気の舞

*最後は自由な気の舞です。
*気のボールを放し、両手を胸の高さで前に伸ばしてから左右に分け、膝と腰の動きで両手が水の中や空中で揺れるリボンのような漢字で自由に動きましょう。
*手の動きは、勿論、左右バラバラで構いません。

?*収功(スォースィー)

*適当に終わりながら両手を左右に広げ、前に広がる大きな空間の気を受け止め、しばらくしてから、その気を腕の中に集めるように両手を前に回しながら肘を曲げ、掌を胸板に向けて三円式タントウ功の形でしばらく立ちましょう。
*その気を胸の中に吸い入れながら両手を胸板に近づけて掌を下に向け、気を丹田に吐き降ろしながら両手を下腹まで降ろし、掌を丹田に向け、丹田感覚を味わってから、足踏みをしたり、両手を擦ったりして終わりましょう。

功法・5

【自由な気のボール遊びを楽しもう!/静観塾?5】


(一)

 8月のお盆前は全国的に猛暑、酷暑の日々が続いていたが、允と紗梨の二人は元気に愚庵にやって来た。
 暑い中でも更に熱い〔静観塾〕は始まった。
 「今日から〔自由太極功〕という功法を学んで頂きます。」
 「はい、楽しみです。」
と、紗梨が言った。
 「最初に〔自由太極功〕を作った意味と目的について簡単にお話しておきますね。」
 そう言って私は語り始めた。
 「この功法の元になっている気功がありましてね、それは中国の黄美光という人に習った〔太極神功〕という作品なんてす。
 よく出来た作品ではあった訳ですが、私の肌には合わなかったんですね。」
 「どんな風に先生の肌に合わなかったんですか?」
と、允が口を挟んだ。
 「そうですねぇ、幾つかの動きが組み合わされた作品なんですが、全体的な流れがなく、しかも何回するといったような形式的な縛りがあったんですね。
 気功というのは、ある意味、気の感覚の練習ですから、感覚もわからないのに、ただ形だけをしても意味がないんですね。
 それと、気の流れがいる訳で、だから、動きにも流れがいるんですね。」
 「で、先生はどうなさったんですか?」
 今度は紗梨だった。
 「その後に知り合った湯偉忠さんのしなやかなバネのある動きを組み入れることにしたんです。
 それによって縛りから解き放たれましたので、自由という言葉を付けたんですよね。」
 そして、ここで言う太極功法というのは〔気のボール遊び〕という程度の意味で、自由に気のボールを使って遊んでみようということなんですね。」
 「何だか楽しそう!」
と、紗梨の顔がほころんだ。
 「この〔自由太極功〕、即ち〔自由な気のボール遊び〕をする目的は、体を緩めながら掌感覚を強くすることと、縛りにとらわれず自由に体を動かすことにあるんです。
 ということで、向こうに行って実習してみましょうか。」
 そして私たち三人は練功場に行ったのである。 

(二)

 「では、スワイショウの時と同じくらいにラクに立ち、合掌して下さい。」
 私たちの練功は始まった。
 「両手を臍の高さ辺りまで降ろしながら掌を下に向け、指先を前に向けて両手を肩幅程度に広げ、肩の力を抜きましょう。
 肘から先が空気のお風呂の上にふわーっと浮かんでいる、そんな感じでラクに構えて下さい。」
 「こんな感じですか?」
と、紗梨が訊いたので、
「それでいいですが、もう少しだけ腋の下の空気を膨らませるような感じで肘を広げてから肩を落としてみて下さい。
 あっ、そうそう、それでいいですよ。」

*此処からは実習ですので、読者のみなさんもご一緒にどうぞ!

? 掌下で外回し

*両手をへそに近づけながら下腹から胸へと反り上がっていき、ゆっくり息を吐きながら尾骨から後ろに突きだし、顎と両手を前に出していき、両手はカエル泳ぎのように外から回し、体を戻しながら両手を臍に近づけてきて、その動きを自分の呼吸に合わせてゆっくり続けましょう。
*脊椎を反らせていったり丸くしたりという波のような動きでしてみましょう。
*手は動かすというより、方向を決めてやれば、氷の上を滑っていくといった感じにして下さい。

?掌下で内回し

*ゆっくり終わり、次は逆回しです。
 両手を臍に近づけ、下腹から胸へと反り上がりながら左右に肘で引っ張るようにして両手を左右に開き、尾骨から後ろへ突き出すようにし、顎を前にだしながら両手を外から前に回し、体を戻しながら両手を臍に近づけ、この動きをくり返しましょう。

?昇降開合

*ゆっくり終わったら、膝と手首を緩め、指先を垂らしてから〔昇降開合〕を続けましょう。
 息を吸い、膝を伸ばしながら両手を胸の高さまで挙げ、息を吐き、膝を緩めながら両手を腹の前まで降ろし、息を吸い膝を伸ばしながら掌を向かい合わせにしながら左右に開き、息を吐き膝を緩めながら両手を腹の前に戻し、この動きを続けましょう。

?掌上で外回し
?掌上で内回し、

*気のボールを挟むような感じで終わったら、掌を上に向けてその気のボールを二つに分け、それぞれの掌の上に気のボールを乗せましょう。
 そして?、?と同じように動いてみましょう。


?拉致(ラーチー)

*ゆっくり止まったら、それぞれの掌の上の気のボールを一つにするように掌を近づけながら向かい合わせにし、拉致気(ラーチー)をします。
 息を吸い、胸板から広がるように肘で左右に引きながら、気のボールを横に伸ばすようにし、息を吐き膝を緩めながら気を圧縮するように掌を近づけ、これをくり返しましょう。

(つづく)
 

功法・4

【/踏み込みタントウをしてみよう!静観塾?4】


(一)

 「では、もう一つの基本功法である〔踏み込みタントウ〕をしてみましょうか。
 実は、この功法も私のオリジナルなんですよ。」
 私が言うと、
「ですよね。」
と、允が言った。
 そして、
「先生以外の気功の本やビデオを見ても、最初から動かない形だけを書いているので、肉体的にも精神的にも緊張が取れないままにタントウに入るので、もっとラクに出来ないかなぁと思っていたところ、先生の〔踏み込みタントウ〕を見つけ、それをしているうちに僕はタントウが好きになったんです。」
と続けた。
 「それは有り難い。
 実は私もそうでね、習った頃は、どうしてもタントウが好きになれす、教室なんかでも殆どしなかったんですよね(笑)。」
と、私は応えた。
 すると、紗梨が
「どうして〔踏み込みタントウ〕ができたんですか?」
と訊ねてきた。
 私は少し考えてから話し出した。
 「気功って、自然体を作る取り組みだと思うんですよね。
 で、その自然体って何だろう、どういう状態だろうって考えた時、東洋医学の考え方である〔上虚下実〕という言葉が浮かんできたんですね。
 それを練功に当てはめてみると、上虚を作るのがスワイショウで、下実を作るのがタントウではないかと直感したんです。
 すると、自然体を作る為には、肩の力を抜いて緊張を取り除いていくスワイショウだけでは片手落ちで、タントウもきちんとしなければならない必須課題になる訳で、それを疎かにしてはダメだなぁと思うようになったんですね。
 そうなると、タントウから逃げていてはダメで、ではどうすればタントウが楽しくなるか、ラクに出来るようになるかを追究せざるを得なくなりましてね。」
 「その結果が、タントウの前に踏み込みを入れることだったんですね?」
と、允が言った。
 「それを入れることで、どんな役割があるんですか?」
 紗梨が訊いた。
 私は答えた。
 「そうですねぇ、まず、肩の力が抜けますね。
 それから、足の使い方や体重の落とし方が身につく。
 そして、何よりも禅的な境地にもなれるってとこでしょうか。」
 「ゼンテキって、坐禅の禅のこと?」
と、紗梨が首を捻って言った。
 「はい、その禅のことです。
 禅というのは自分のしていることにのみ心を向けていくということで、それによって穏やかで安らかな気持ちになっていき、それを三昧とか定とかと言って、禅と定を合わせて禅定と言い、その境地を得ていくことが、ある意味、禅の目的なんだろうと思うんです。
 勿論、気功は仏道修行ではありませんが、自然体を作るという点で、それを心理的な意味で言えば平常心を作るということになり、その平常心を作ることも気功の大切な課題で、だからこそ、禅的な修行からも学ぶ意味があるんですよね。」
 「それが〔踏み込みタントウ〕ですか…。」
と、允は噛み締めるように言った。
「では、実際に〔踏み込みタントウ〕をしてみましょう。」
 私はそう言って、二人を板の間の練功場に移動させたのである。

*ここからは、スワイショウの時と同じように誘導の言葉だけを記していきますので、読者のみなさんも一緒に実習してみて下さい。

(二)

*足を少し大きめに広げ、足先を前に向けて立ちましょう。

*まず、片方の膝を曲げて体重を掛け、それを左右交互にくり返して下さい。
 ゆっくりため息をつくように息を吐き、肩の力を抜きながら片足に体重を落としていきましょう。

*足の裏でしっかりと体の重みを感じたら、今度は、その後に足の裏で床を踏み込むようにして続けて下さい。

*足の裏に重みを落とした後、床を踏み込む時に、足の裏を掌、腰をボールと見立て、バスケットボールのフリースローのような感じで、床をポーンと踏み込むようにしてみましょう。
 腰がふわぁーっと浮き上がり、反対の足に沈んでいく、そんな感じで続けてみて下さい。

*やがて、足の動きと呼吸と心が一つになり、三昧の境地になってきますよ。

*次に、どちらかに腰が降りたところから、腰を上げないで水平にズラすようにしてみましょう。

*足の裏で床を外に押すと、腰は独りでにズレていく感じです。
 その時に、膝が内側に入って来ないように、股を広げておいて下さいね。

*しばらく続けた後、ゆっくりと真ん中で止まっていくよにしてみましょう。

*足の甲の真上に膝頭があり、仙骨、腰椎、胸椎が真っ直ぐなるように、腰椎(命門)を少し後ろに押してから尾骨から沈むような感じで、体重を踵に落としていって下さい。

*足首はがちっと固めずに、故意ではないけれど、少し前後に揺れていて、その揺れが骨盤を揺らし、脊椎を揺らし、肩甲骨や大胸筋を揺らし、肩の中まで揺れていて、重みはどんどん踵に落ちていく、そんな感じでしばらく立ってみましょう。

*終わる時は足を戻し、少し膝を上げ下げして、膝をラクにしてから終わって下さい。


(三)

 私たちは〔踏み込みタントウ〕を終えて座敷に戻った。
 紗梨が口を開いた。
 「立つ時間はどれくらいから始めればいいですか?」
 「そうですねぇ、最初は1分くらいから始め、3分、5分と長くしていけば良いでしょうね。」
と、私は答えた。
 「僕は、いま、約10分くらい立つようにしているんですが、それでも構いませんよね?」
と、允が訊いたので、「我慢大会じゃないんで、自分が心地よく出来ていれば、それでいいですよ。」
と、私は答えた。
 「足幅は?」
と、紗梨。
 「これも、最初から大きく広げないで、5分くらい立てるようになったら少し広げてみるといった感じでいいと思いますよ。」
 と、私は言った。
 「タントウは少し難しかったけれど、その前にした足の動きが気持ち良かったんですが、あの気持ちよさが禅的なんですね?」
と、紗梨が言い、私と允は顔を見合わせて、クスッと笑った。
 「では、次回から、私の創作功法に入りますね。
と、私は告げて、第一回目の〔静観塾〕を終えたのである。

功法・3

【スワイショウの続き/静観塾?3】


(五)

 〔体感しながらのスワイショウ〕が終わり、私たちは座敷に戻った。
 「先生…」
 座るなり紗梨が声を出した。
 允と私は紗梨の顔を見た。
 「スワイショウですが、いま先生が為された順番でするのがいいんですよね?」
 紗梨がそうだと言う訳ではないのだが、気功の内容を自分で自分らしいものにしていくという理解のない人の場合は、物事を固定的に考えてしまい、本来、自らを自由にして行くべき気功であるにも関わらず、教場的に学んでいくことによって自分を縛ってしまう可能性がある。
 それが気功を形式的なものにし、個人崇拝という間違いに陥ってしまわせるのだ。
 ここはきちんと伝えておかねばならない。
 私はそう思い、口を開いた。
 「この〔体感しながらのスワイショウ〕の目的はね、体内をふぁんそん状態、つまり、気功の出来る脳と体を作るところにあるんですね。
 ですから、その人の練習の度合いによって、何をするかは違っていいんですよ。
 脳波がα波になり、体内が副交感神経優位になり、その変化した体内を体感する能力の出来具合によって、何処を体感していくかは自分で決めていけばいいんですよね。」
 私の説明に対して允が自分の考えを確認するように続いた。
 「つまり、雑念が多く、意識が外に向くことが多い人は、大胸筋や肩関節、肩甲骨の動きに没頭していけばいいし、それが出来て、指など手や足の先に変化が出て来た人はそれに没頭し、胸や腹など胴体の中の変化も体感できてきている人は、そこに没頭すればよいってことですね。」
 「ということは、最終的にはスワイショウをしながら丹田感覚が出て来るようになるといいってこと?」
と、允の後を追うように紗梨が訊いた。
 「あなた方はよく勉強されているので詳しくは述べませんが、三つの段階で体感を深めていけばいいんですね。
 一つ目の段階は、動きを体感すること、二つ目の段階は皮膚、特に手足の末端の皮膚の感覚を体感すること、三つ目の段階が胴体内の感覚を体感することです。
 そこを理解しておいて、各段階の中で自分が体感しやすい得意なところの感覚に没頭していくことが大切なんですね。」
 「私の説明を聞いて、
「それぞれに体感が判ってきたら、自分が余り体感できていないところの感覚を体感していくのもありですね?」
と、紗梨が言った。
 そういう練習は少し高度な練習になるので、私は少し目を丸くして紗梨を見てしまった。
 そして、
「そうできれば、更にいいですね。」
と、私は応えたのだった。