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功法・9

【樹木の呼吸を身につけよう!・3/静観塾?9】


(一)

 「脚の場合は、そのロールケーキの胴体を真ん中で二つに分ければいいんですか?」
と、梨紗が言った。
 「そこなんですよ、問題は…。」
 私はそう言って別の絵を描いた。
 サイコロ状の真四角のブロックを横に二つ並べ、それを三段に積み上げたような図だ。
 六つに仕切られた窓と考えてもよい。
 「本当は丸く描いた方が良いのかも知れませんが、これは太腿を水平に切って上から見た図です。
 ですから、本当は左右二つ描かねばならないんですが、まぁ、どちらか片方の脚にしておいて下さい」。
と、私は言った。
 「この図の右側の三つが脚の内側で陰になり、左側三つが外側で陽になります。
 先ほどの胴体はロールケーキでも良いんですが、脚の場合は、縦に二つに割って考えて下さいね。」
 私が言うと、梨紗が
「何処で二つに切れば良いんですか?」
と問うてきた。
 「大まかに言えばですねー、下腿の前の脛の骨の出っ張りのライン、後ろで言えば、アキレス腱からふくらはぎの真ん中を通るラインで内側と外側に分けて下さい。」
 「その外側の部分を前、横、後ろと三つに分けて、胴体の外側、つまり陽の部分とつなげるんですね!」
と、梨紗が声を高くした。
 「脚の内側全体を陰として、胴体の中心と繋げるんですか。
 なるほど、これは経絡を勉強してきた鍼灸師には思いもつかない発想でした。」
と、允は感心していた。
 「厳密に言えば、脚の陰は、アキレス腱の内側の淵と、脛骨の出っ張りを降りていった足首の前の太い腱の内側とを結んだラインで陽と陰に分けた方が良いので、陽の方が少し大きいんですよね。
 ですから、前側の山の頂部分、尾根に当たるところは陽として理解しておくべきなんですよね。」
 私が言うと、梨紗が難しそうな顔で言った。
 「先生、わたしのように、まだ気の感覚の弱い人間は、内くるぶしの幅で上がってきて、そのまま胴体の中に入っていくという感覚くらいでも良いですか?」
と訊いてきた。
 私は梨紗の言った感じの方が判りやすいかも知れないと思った。
 そこで、
「それがいいですねー。」
と応えた。
 「足を左右二つに分けずに、足と胴体を合わせ一つのロールケーキにして考えれば判りやすいです。」
 そう言った後、梨紗が続けた。
 「あっ、そうか、樹木の呼吸なんだから、足と胴体を合わせて一本の太い幹になるんですね?」
 「両足の間の空間も合わせて中心軸、つまり、陰のルートとして理解すべきなんですね。」
と、允が納得した顔をした。
 私は、
「陰陽共に三つに分けて、三陰三陽とすべきところを、〔樹木の呼吸〕の足裏呼吸では、陰を一つにし、陽を三つに分けて練習するようにしているんですよ。」
と言い、図を描き直した。
 描いた図は◎の図で、外側の円を前、左右、後ろとして線で分け、中の○に矢印で〔中心軸=陰〕と書いた。
 「梨紗さんの言うように足も胴体も合わせてロールケーキにしちゃえばいいんでした(笑)。
 この方が判りやすいですね。」
と言い訳をし、次の練習のために二人を立たせたのである。

功法・8

【樹木の呼吸を身につけよう!・2/静観塾?8】


(一)

 足の裏呼吸が終わったところで私は少し話をすることにした。
 「いま練習した脚の裏呼吸での気の通るルートですが、厳密に言えば、胴体と脚では少し違うンですよね。」
 「陰陽のことですね?」
 允(まこと)が訊いた。
 「そう、陰陽による違いなんです。」
 私が答えると、梨紗(リサ)が声を出した。

*読者のみなさんには申し訳ありませんが、登場人物の女性の名前を紗梨から梨紗にへんこうさせて頂きます。
*サリよりリサの方が呼びやすいものですから…。
<(_ _)>

 「允君はプロなのでかえって混乱するかも知れませんし、梨紗さんも少しは勉強されていると思いますが、あなた方が本で勉強された経絡のルートと、気の感覚によるルートは違うンですね。」
 私は少し説明する必要があると感じ、一度二人を板の間に座らせ、ホワイトボードに図を描いて説明した。
 描いた図というのは、外枠が少し太めの土管を立てたような図だ。
  「胴体での陰陽というのは、実は表裏のことなんですね。」
 「表裏って? おなかと背中?」
 梨紗が訊いた。
 「内外のことだよ。」
と、允が言う。
 「体壁系と内臓系と言っても良いでしょうね。」
と、私は付け加え、そして話した。
 「経絡上に点在する経穴は、陰の経絡の経穴も陽の経絡の経穴も全て体表面に在ります。
 それは、鍼もお灸も体表面からしか施術出来ないからなんですよね。
 経絡、即ち気の通るルートは経穴を結んだ線ではなく、幅の広い立体的な層になって流れているんです。
 陰の経絡の経穴はお腹側にあるけれど、実は、そこは反応点、刺激点であって、経絡がそこを通っている訳じゃないんですね。
 陰の経絡は、もっと体の中、胸で言えば、肋骨で覆われた籠の中にあり、お腹で言えば、腹膜で覆われた中を通っているんです。」
 「それで内外、即ち、表裏なんですね。」
と、允が言った。
 「先生!」
 梨紗が手を挙げた。
 「こんな風に考えればいいんでしょうか。
 その図ですが、例えば、ロールケーキがあり、それを適当な長さに切って立てて、それを胴体と見立てると、外のスポンジの部分が陽で、中のクリームのところが陰って訳ですね?」
 「なるほど!」
と、允が小さな声で言った。
 「そう、先ほどの〔樹木の呼吸〕は、そのスポンジの部分を陽として三つに分け、中のクリームの部分が陰で、それを一つにして中心軸にして、胴体の気を通す練習をしたんですよ。」

(つづく)
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