ホスト仕事をほったらかし、優姫の手首を掴みながらサクサクと歩く零。人混みの中をすり抜けて、外の露店を通り抜け、人気のない体育館裏。
体育館で行われてるバンドの演奏が微かに聞こえ、青空が広がる屋外。
ようやく手を離す零は優姫の方を向く。
「なに泣いてたんだ」
「知らなくて良いよーだっ」
まだ、意地を張る優姫の額にでこぴんする。
「いたっ!!」
「素直じゃないからだ」
「なによぅ!零の方が素直じゃないじゃない!!」
ぽかぽかと零を叩くがあまり効果はないらしい。今日は珍しく抵抗しない零。
優姫は動作をやめて顔を覗きこむ。いつもと同じ、眉間にしわ。
「…ごめん。約束破って」
小さく掠れた声にドキドキしたり。独占欲で嫉妬したり。でも、素直過ぎる零もたまには良いかもと思いクスリと笑う。
「なに、笑ってんだ」
「だって零が素直だから」
からかわれたのが不快なようでまた眉間のしわは不快なる。
そこも好き。
「見るんじゃねぇよ」
優姫が自分を覗きこむから恥ずかしがり彼女の顔を自分の手で覆う。
「あのね。零。あたしさ…零が…」
「俺が大好きってか!?」
「なっ////」
「そんな事知ってるから」
フッと静かに優姫の反応がおかしくて笑う。こんなホスト服着ている彼氏が、零じゃないみたいな。でも零で。
ドキドキで心臓がもたない。零もそうだと良いな、って思う。
「零はあたしを好き?」
「なんだよ、いきなり」
優姫の質問に戸惑う。今度は優姫が眉間にしわ。
「言えないんだ。ふーん、ふーん…」
「俺が言うと思ってんのか?」
「別に、期待してないよーだっ」
「うわっ!!」
すっとんきょうな零の声に満足気な優姫。
後ろからギュ。彼氏彼女の関係になってから、零は後ろから抱きしめられるのは慣れないのか。
昔はそんなに反応しなかったのに。
「ちびのくせに馬鹿力だな」
「だって、どっか行っちゃいそうだもん」
「行かねーよ。ってヲイ!!肉掴むなって!」
「なによ!筋肉だから良いじゃん!肉じゃないよー!ほらほらっ」
「やめろ!触んなっ!」
「くすぐったいんだ!可愛い〜!」
「誰もくすぐったいなんて言ってないだろ!」
「えいえい☆」
「やめろっておいっ!」
零の反応に満足な優姫。今日の事も許してやろうか。今日はあまり抵抗しないって事は実は申し訳ないって思ってんだよね。
「だから触んなっ!!」
「じゃあ、あたしのお気に入りのお店の苺パフェを奢ってね」
黒主学園祭をしまいにはほったらかし、パフェ店に二人で逃亡。
いつもいつも、こんな楽しい日常が続きますように。
fin