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075.笑顔【学園的な100題】

笑って、笑って。

思い出の中にある、あの笑顔みたく。

あの日の喜びに勝るものをあげるから。

笑って、笑って。ねぇ、笑って?





あの日の君は機嫌がよかった。

大好きなあの子の隣を陣取って、好きなお酒が飲めるなら、それもムリない話しだね。





照れ屋な君はあの子の顔もまともに見れず、でも、真っ赤な顔を嬉しそうに綻ばしていた。

お酒の進みが早かったのは、赤みを誤魔化す為だったのかもしれないね。





いつもあの子に話しかけられたくて、周りをウロウロしていたけど、やっと夢が叶った思いは如何なもの?

望んだ刻が、あまりに容易に転がり込んで、君はずっと下を向いて照れているみたいだったけど。

あの子の目に唯一写って、あの子の声が自分だけを呼んでいるのは、そんなになるほど良いものだった?





笑って、笑って。

溢れんばかりの嬉しさを思い出しながら。

おどけて、チャラけて、バカをやるから。

笑って、笑って。ねぇ、笑って?





あの日の君はどこにいったのだろう。

大好きなあの子の代わりに隣を陣取る私を、どんな風に見てるのかな?





照れる私は君の顔をロクに見れもしないから、何を思うか皆目、見当だって付けられない。

下向く視線を上げられないのは、もしかしたら本当のコトを知りたくないだけなのかもね。





いつも君を眺めていた。

あの子を見つめる熱い眼差し。

愛しくて恋しくて、大切で仕方ないと語る視線。

恥ずかしくて触れられず、眩しすぎて目も見れない、その様子を。

あの子がいつの間にか消えてしまってから、あの笑みもが君の中から消えていった。





代わりになろうなんて、おこがましいこと、思っちゃいないけどさ。





笑って、笑って。

得意の道化で、笑わせてあげるから。

ねぇ、お願い。





笑ってよ。





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020.窓際【学園的な100題】



窓際の指定席。

穏やかな陽光が午後一番の眠気を誘う。

2つ前の席にはアナタ。





女の如く白い肌に、黒檀の髪。

血のように赤い、紅い唇。





さながらアナタは白雪の君。

おとぎの国からやってきて、毒のリンゴを待っているよう。





気怠い授業にあくびを殺し、前向く首に浮かぶ筋が艶っぽい。

節くれだった細い指で、血色の透ける肘を撫ぜる様だけ、子供っぽくて微笑ましい。





いつもと同じ席に座るアナタを、いつもと同じ席から眺める火曜の3限。





見上げる程の長身が、持て余すように手足を揺らして歩いていく。

その姿を見守った。

手を伸ばせば触れるほどの近さで隣を歩き去った後、アナタの残り香だけが親しげに絡み付いてきた。





例えどこに居ようとも、その美しさを見紛うことなど、ありえない。

その唇の如く赤いリンゴでアナタを眠らせられるなら、

キレイな硝子の箱に飾って、この世の果てまで眺めていよう。





あぁ、見遣るほどに焦がれるこの身を、どうしたらいいのだろう。




身体を巡るこの毒を、

誰か

誰か早く解いてくれ。










白雪の

君にまみゆる

度ごとに





露をも慕う

我が身苦しき





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056.課外授業【学園的な100題】



大きな窓からは観覧車が見えた。

闇夜の中、鮮やかなネオンを纏い、いつも私を誘っていた。

私はいつも、くだらないと笑っていたけど。





話し相手は決まってルーズリーフ。

あるはずない世界を描いて、願っていた。

変わり映えのない日々に何かが起きることばかりを。





望む都会はラッシュのリボンに飾られて、哀れな私に教えてくれた。

欲しいものはいつも手元にあるのだと。





ぼんやりボードを眺め、

何度も聞いた話を無感動に流していた私は気付けなかった。

振り返れば、あれだけ望んだ何かは

あの頃、もう私の手の内にあったのだと思う。





ないものばかりを求め、必死に足掻いていた。

持っているべき夢を探して、闇雲に焦っていた。





例えばあのときら素直に寂しいと言っていれば

手にしたものに早く気付けていたのかもしれない。




大きな大きな回り道をして、

ようやく知ることができた。

変革なんぞ、すぐに起こせるものなんだと。





今日、





見ているだけだった観覧車の下に

放課後の授業をサボって遊びに行こう。





それから、傍らにいる君に大事な話をするんだ。





もしも上手くいったなら

あの観覧車のてっぺんで










初めてのキスをしようか。





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076.理由【学園的な100題】






あの頃よりも低くなった声と、

肩を竦めてはにかむ君を、

抱きしめたいと思う不謹慎な私をどうか許して欲しい。





昔が恋しいと過去を引きずるその理由は、君の存在があんなにも近かったからだろう。

だんだんと大人になっていく君の背を、昔と変わらぬ私が未練がましく見つめているようで癪に触る。





顔を上げなければ見ることができなくなった君の襟首。

抱きすくめることができないくらいに広くなった背中。





これからもっと大人になっていくよ。





笑って言う君の声に
胸が痛んだ。





「あの頃に戻れれば」





そう切実に
願わずにはいられない。





恥も外聞も捨て、抱きしめておけば良かった。

意地を捨てて、君が顔をしかめる位しつこく“好きだ”と言えば良かった。





振り向きもせずに去っていく君の背を見て、後悔せずにはいられない。





君は

これからも

大人へと変わっていく。





私の手が、

届かぬくらいに遠く遠くへと

行ってしまう。





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059.半分こ【学園的な100題】


なんでもかんでも半分こ。
君とボクでさ、仲良く行こう!

あの山この川越えて、
見たこともないトコロを目指そう。





朝露輝く草原で
どちらが早いか競争しよう。


賑わう城下の裏道で
屋根の上から世界を見下ろそう。





砂原、湿地を越えて、
地図の隙間を塗り潰してこう。


不安がやってきても、
君とボクでさ、笑い飛ばそう!





星降る月夜の森の中、
1つのリンゴを分け合おう。


遠くに望んだ街の灯を
ふたり寄り添い、眺め続けようよ。





なんでもかんでも半分こ。
君とボクでさ、仲良く行こう?





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