スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

039.重たい瞼【学園的な100題】



目を瞑れば思い出す。
あの日あの時、何気ない君の姿。

目を瞑れば思い出す。
あの日あの時、鼻歌刻む君の声。





寝静まった深い闇。

その中ですら思い出す。
あの日あの時、触れたぬくもり。

重い頭が軽快に紡ぐ思い出の糸。

そのどれもが滑らかに、
そのどれもが色豊かに。

眼前に生々しいリアルさを見せながら、君の残像を織り成す。





誰か歯止めを。

刻み込んだ肌理の細やかさ。
覚え込んだ首筋の匂い。
抱き込んだ身体の線。





誰か、誰か早く歯止めを。





とめどなく思い出す。

あの日あの時、幸せ過ぎたあの頃。

女々しさなんて知る由もなかった、あの頃のふたりを。





気怠い身体が欲するものを、欲するままに与えないでくれ。

ただ安息を。名実ともに平穏な安息を。

どうか、ここに。





時の前に全ては色褪せ、美しく飾られようと、今はまだその時ではないから。

ただ眠りを。束の間の夢を、ここに。





焼き付いたあの微笑みを、もやがかる幼き日の思い出で隠してくれ。





耳朶に残る甘い言葉を無機質な何かに変えてくれ。

記憶された悉くを、ほんの一時、封じてくれ。





あの日あの時あの顔で、

無遠慮に踏み込んできた君から。

日の下でチラつく君から。

月夜に舞い込む君から。





ほんの一瞬だけでいい。

解放してくれ。





あぁ、ほら

夜だけがまた、明けていく。





学園的な100題 一覧

038← ‖ →040
続きを読む
<<prev next>>