紅葉は美しく木々を離れて…


これは草間彌生の詩集から。


言葉のチョイスが美しいです。


松本市美術館で開催されている

草間彌生展へ行ってきました。


テーマは『永遠の永遠の永遠』


なんて心をとらえるテーマ。


入館する前から外にあるオブジェ

を観て「わぁ〜♪」と声を出して

しまいました。


楽しく、可愛く、パワーみなぎる

世界。




さらに入館してみると、そんな

単純な言葉だけでは語れない

深い芸術性から得られる圧倒的な

感動が胸を突き刺しました。


代表的な水玉モチーフの作品を

中心に草間ワールドは炸裂して

おり、心を奪われた私は今開催

期間中2度足を運びました。


以前にも群馬の Haraミュージアム

で観覧しましたが、さらに

パワーアップしているのは明らか

でした。


1年半で描き上げたという100枚

の連作、そのうちの約50点が展示

されており、それらは圧巻。


様々な原色が不思議とぶつから

ない天才的な配色。


子供が描く絵のようなイキイキ感

と、歳を重ねてきたからこそ溢れ

でる愛がカンヴァスから伝わって

きました。


それらの作品を全く下書きをせず

1日〜3日で描き上げるそう。

162×162cm の、かなり大きな

カンヴァスです。


「良かったね、また今日も絵が

描けて。神様に感謝しないと。」

NHKスペシャルの密着取材で

語っていました。


「人生で一番燃えている時よ!」

御歳83歳の彼女は、

「私(自分のことが)大好き。」と

アトリエにいる時は High な様子

でした。


しかし、一見して水玉の世界は

その鮮やかな色彩からとても

可愛く映るのだけれど、草間彌生

が10歳の時に鉛筆デッサンで

描いた母の肖像画には顔や着物、

背景にまで水玉が散りばめられて

おり、これが彼女が幼い頃から

見てきた幻覚の中かと思うと

言葉を失ってしまいます。


昼間はアトリエ、夜は精神病棟の

狭い一室で眠るという生活。

強迫神経症、不安神経症、自殺

願望。


幼い頃から統合失調症と診断され

絵が好きだった少女はひたすら

描く事で幻覚や不安に耐えて

きました。


外に出て河原に行くと何億もの石

が迫ってきたり、スミレの花は

人間の顔をして語りかけたりして

くる…

その恐怖から逃げ帰り、押入れに

入ってガタガタ震えていた少女。


絵に没頭することは彼女が生きる

道だったのです。


しかしその一方で幻覚を見なけれ

ばいわゆる“普通”で“正常”

なのか…

普通で正常ならば幸せなのか…

考えてみると、一概には言えない

のではないかと私は思ったりも

します。


絵画やオブジェ、柔らかい彫刻

だけでなく、草間彌生は詩も

素晴らしく、それらの感性は

やはり世界でも賞賛されるもの

だと納得します。


「宇宙の全てを

    愛でカバーしたい。」

とも語っていました。


今回の作品の中でも草間彌生の

インスタレーションは、まさに

“永遠の永遠の永遠”を表現した

ものでした。


永遠なんて目に見えるものでは

ないと思っていたけれど、そこに

あるものは確かに『永遠』を実感

できる空間でした。


可視化。

見えないはずのものをこの目で

見ることができた不思議。


心を奪われたまま、その中で

立ち尽くしていました。

できればずっとそこにいたいと

さえ思いました。


今年はLouis Vuittonともコラボ

しており、世界中の Flag Shopが

水玉に変わりました。


「1000枚でも2000枚でも描くの。

うんと描いて、描きまくって

死ぬの。」

って言っていました。


そのパワーはどこからくるのか。


眼光鋭く、ものすごい集中力で

イマジネーションをカンヴァスに

ぶつけていく。

震える手で迷いなく描いていき

ます。


【愛と死、宇宙、永遠、平和】

全てが込められた水玉。


ヴィトンの撮影をした写真家

篠山紀信は「草間さんは国宝。」

と言っていました。


強烈なインパクトの水玉の服を

まとい、モノグラム×水玉の

バッグを持った草間彌生は

彼女自身がARTそのものでした。


アトリエで絵にパワーを注ぎ込ん

だあと、さらに病室で新聞を読み

また、たくさんの本を読んで常に

知識を得ようとするその姿にも

感銘を受けました。


【詩】

その「失望」と「虚しさ」を

そして「孤独」の数々を胸に

秘めて生きながらえてきた日々は

人の世の花火が 時として

「華麗」に空に散りばめられて

いた

五色を持って夜空に舞っていく

花火の粉末を全身に散りばめて

いる感動の瞬間を私は忘れない


  『落涙の居城に住みて』より


愛という言葉が決してcheapでは

ないと草間彌生は教えてくれ

ました。