甦る、嵐。
………………………
背後で揺らめく巨体と、それに呼応するよう嵐。
「モ…モトチカ…!!」
さすがのマサムネも驚いた。
血溜りの中へと倒れ臥していた同胞は、どう見ても《死》んだと思っていたから。
――なのに。
『勝手に殺すんじゃねえよ』
にぃとモトチカは笑うが、その顔には覇気がない。
無理をしていることが見て分かった。
「…モト」
傷ついた友人へ近づこうとマサムネが動いた瞬間、
「政宗、離れろ!」
背後から幸村が叫んだ。
途端、目も眩む閃光が辺りを包む。
「――ッ?!」
『――!!』
幸村が放った閃光玉が、マサムネとモトチカの視力を一時的に奪う。
「…なっ!?」
塞がれた視界の先で腕を引かれ、マサムネは慌てた。
『一体何が起こってる?!モトチカは無事なのか?!』
生温い体温に心地悪さを感じつつ、マサムネはモトチカの身を案じた。
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キボウと読みます。嬉しさを望む。
出張に行くはずでした。
………………
「……。」
クローゼットを開けると、中身が何も無かった。
「……。」
下駄箱の中身を見ても何も無い。
分かってる。犯人は、分かっている。
『帰ってこねえって、なんだよ!それ!』
『テメエまでオレを置いていくのか!
あれから姿を現さない。
人の話も最後まで聞きゃしねぇんだから。
「明後日には帰るから」
何も無い空間で、一人言のように云う。
「ただの出張だ。土産も買ってくる」
それに。
「オレがお前を置いてどっか行くわけ無いだろ」
聞いてんのか?
「政宗」
部屋はしぃん、としたまま。
「………ったく」
これじゃホントに独り言じゃねぇか。
諦めかけたその時、
『……土産、忘れんじゃねぇぞ』
姿無き声と共に、無くなっていた背広が一式、部屋の隅に鎮座していた。
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十万小十政二位であげた、人間小十郎と座敷童子政宗さんの元ネタ。
確かこんな話だった。