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赧の中に身を沈めた彼人の横に膝を着き、マサムネは幸村を睨み付けた。
「…政宗」
「寄るな!」
二人の間には近寄れない距離が出来ている。
「政宗、探していたんだ」
幸村が一歩踏み出せば、マサムネが幸村に向ける殺気は鋭くなる。
それに幸村は気圧され、足が動かせない。
近づきたい幸村と、それを拒絶するマサムネ。
「オマエは仲間を殺した」
「…仲間?何を言っているんだ」
「二度目だ。ニンゲンに仲間を殺されたのは!」
「『ニンゲンに』…って、政宗、どういう事だ」
――仲間って?殺されたって?
「やっぱり『あの時』ニンゲンなんか殺しておけばヨカッタ!」
「!!」
マサムネが吠えた瞬間、倒れ伏していた古龍が身を起こしたのだ。
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怒りに応え――。
沸き上がる殺意
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駆け上がった丘から見えた光景に、目を疑った。
広大な大地には赧黒い水溜まり。その中央に佇むのは――。
「……モト…チ」
見間違う筈もない。
自分の世話役と同種族のソレ。
気が付けば脚が野を駈けていた。
モトチカ!モトチカ!モトチカ!
「――政宗ッ、無事だっ…」
「――!!」
駆け抜けた際に、見知った顔を見つけた。
モトチカの元に駆け寄り、オレはヤツを睨み付ける。
コイツが、コイツが、コイツが―――!!
「テメェがッ!…テメエがモトチカを…!」
忌まわしき記憶が、甦ってきた。
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気持ちは違えて。
躊躇い。
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厭な。
とても厭な気分になる。
「はぁっ…はぁ…、」
全身に浴びた返り血を、幸村は乱暴に手の甲で拭った。
大きさを問わず、モンスターを倒した後はいつもこうだ。
ひどい自己嫌悪に陥る。
ならばハンターになど成らなければ良かったのではないか、と云われるが、幸村には成らなければいけない理由があった。
否。
成らなくてはいけなかったのだ。
『願い』さえ、叶うならば――自分は何時、死んでも構わない。
だがそれまでは、自分は死ぬわけにいかない。
「…すまない」
眼下に横撓る古代龍に幸村は呟いた。
双剣を納め、幸村が歩きだそうとした、まさにその時だった。
「モトチカ!」
「――?!」
聞き覚えのある声が幸村の耳に響いてきた。
声の方角に顔を向けると、探していた彼の姿。
「…政宗!」
無事だったのか、と幸村はマサムネの元に走る。
――だが、マサムネは幸村の事など目にも呉れず古代龍の元へ駆け寄っていった。
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実際プレイした時、双剣なんかじゃ倒せませんでしたよ、私
未知なるモノ
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ありゃあ何だ。
あの武器は何だ?
ざわり、ナニかが全身を駈けた。
「ッオオオオ!!」
ニンゲンが叫んだ瞬間、翼膜へと剣撃が振り下ろされた。
翼膜に鈍い衝撃。
『!?』
モトチカは驚愕する。
風鎧があるのに、傷を付けられた。見れば翼膜からは鮮血が流れだしている。
モトチカに焦りが生じた。
《あのニンゲンが持つ武器は何だ?》
《熱く、紅い、あの武器は》
斬られた部分が熱い。
まるで炎か炎核。
ハッとした瞬間、自分の眼前には敵の姿。
「―――でやァァァ!」
振り下ろされる紅。
飛び散るアカ。
遥か遠くで、マサムネの声が聞こえたような気がした。
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ゲームの中では、シルエット的に一番好みです。クシャル。