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愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛し

初めましてゾンビです。……ん? あれ、違ったかもしれない。キョンシーとかだったかな。いやしかし、実際その辺はどうでも良いのかもしれない。括りとして自律した死体であれば、それがゾンビだろうとキョンシーだろうと問題は無いはずだ。重要なのは死んでいる。いた。と言うことで、名称に拘りはないのだ。――多分。
「死んで出直してこい」
そう彼女が言ったから、僕の告白への回答としてそう言ったから、僕川越 四三二は、死んで出直してきた次第である。
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守宮の恩返し 【sil.c's arrange】


pixivの方に上げた、【できそこないアウトレット】と言う企画で、別の方の設定を小説にすると言う感じ。
いつもと違った小説となりましたが、どうぞ。





自分を主人公だと思ったことはないだろうか。私は、ある。しかしながらそれは、自分には特殊な才能が眠っているとか、実は世界は宇宙人に管理されていて、私は奴らを倒す鍵で―――とか、そう言うSF(サイエンス・フィクション)な主人公ではない。極々平凡ながら、しかし物語の中心たる可能性を持つ主人公。言うなれば、SF(少し不思議)な主人公である。
改めて言おうか。私は、自分が主人公だと思った事がある。
「………恩返しに、参りました」
成る程、実にSF(少し不思議)である。

通常、授業は夕方前に終わり、そこから部活をして帰るので、帰宅は7時前後。街の通りも閑散としていて、自転車でも楽に通れる。我が街は極端で、昼は人で溢れかえるくせに、夜はすっかりと人通りが途絶えるのだ。…………しかし、その日は色々な事が愉快なまでに重なった。
一つ、パンク。二つ、高校受験前日なので午前で終了。三つ、同理由により部活も停止。
故に私は駅前でバスを降り、人の多い道をグダグダと歩く羽目になったのである。
「あー、パンク直しに行くの面倒だなぁ」
独りごちて、私は大通りを脇に折れる。少し細くなったとは言え、車が楽々通れる道。人通りはさほど変わらない。人の多さに耐えかねて、私は下を向いて歩く。涙が零れない様上を向く方もいらっしゃるようだが、だって女の子だもんとか言っていたらとんでも無いものに出会した。
「―――ッヒ!」
頓狂な声を上げた私に、一瞬視線が集まった気がしたが、そこは流石無関心社会、すぐに私は無視され始めた。
「え………なんで、こんな所に、まだ居るの?」
季節は一応冬だ。近日中に雪だとか、天気予報で見た気がする。マフラーにコート。対冬仕様な私の足下には…………私の大の苦手な、守宮がへばっていた。
「と、冬眠しそこねた………とか?」
守宮って冬眠するんだったか。いや、嫌いなんで調べた事など無い。兎に角無視して帰ろう。私は自転車屋に自転車を転がしていかないとならないのだ。守宮を避けて、踏み出そうとした瞬間――下を向かなきゃ、気付かないか――そんな事を考えてしまう。人通りが多く、車も少なくないペースで通る。ほっておけば、十中八九踏みつぶされて守宮は死ぬだろう。………それはそれで気分が悪い。嫌いだからって、死ねとは思っていないのだ。
周りを見回す。都合良く、枝が近くに落ちていた。ひょいとつまみ上げると、近くを通った人が眼を見開いてこちらを見たが、こちらも見返すと、そそくさと足早に去っていった。枝先に守宮を引っかけ、道の脇の生け垣に向かう。土の上に家守を落とし、枝は生け垣に突っ込んでおいた。
「ふむ。まぁ、これで良いか」
私は膝を伸ばし、歩きだす。しかし、行き倒れた守宮を助けるだなんて、何というか御伽噺的だ。浦島とか鶴の恩返しとか、そう言うのを連想してしまう。尤も、二つともハッピーエンドとは言い難いが。とは言え、漫画とかなら、家に帰ったら見知らぬ人が居て、恩返しに……とかそう言う展開があるんだろう―――って、私はいくつだ。夢見がち、最近だと厨二病と言うのだろうか。多少自覚はあるが、是非とも脱したい。
「ま、良いか」
ざっくりと、適当に纏めて、私は家路を行く。流石に守宮には出会さなかった。一安心である。
「ただいま……ぁ」
言ってから、今日は誰もいない事に気付く。全く、マイナスな事は重なる事重なる事。
「お帰りなさいませ」
「………………ッ!!」
誰!? と叫ぼうとして、しかし声が出ない。
眼を見開いたまま、私はズルズルとへたり込んでしまった。
「あぁ、大丈夫ですか?」
不審者の手が伸ばされる。ビクリと震えた私の体に、その手は直前で止まった。
「あ、……あ、あなた、は……誰……?」
喉が乾く。渇くのではなく、乾くのだ。喉が塞がった様な感覚の中、何とか言葉を絞り出す。それだけで、喉が擦り切れるかと思った。
「私は、守宮です」
「ヤ……モリ?」
「はい。端野 守宮と申します。命の恩人である君鳥様に恩返しがしたく、やって参りました」
不審者――その守宮と名乗る女性は、そう言った。守宮。つまりは、そう言うことだろう。守宮の恩返しが、現実となってしまった。
「―――い、いやいやいや。いやいやいやいや。あり得ない。あり得ないよ! や、家守が恩返し? そんな、非現実的、フィクションの世界の話、信じられない! 信じられる訳ない! ふざけてる。そんな話あるはず無い。夢? 現実? 違う。現実。現実。現実。これは現実。なら何? この人誰? ………解った。泥棒! あなた泥棒ね! 警察! け、警察を呼ぶわよ!」
「信じて頂けないのは当然です。しかしながら、私は、君鳥様。貴女に恩返しをしたいのです」
「なに、なんなの!? ホントに警察呼ぶわよ!」
すっと、女性は身を引いた。元々あった距離が更に開く。―――そして、世界がブレる。
「え、あ………あれ?」
目の前から、女性は消えていた。初めから居なかったかのように、瞬きすら出来ない早さで、彼女は消えた。……幻だったのか。幻の方が解りやすかった。もう、それで良いと思える。しかし、視界の端で動くグレーの小さな生物が、私の思考を打ち砕いた。
「守宮……」
「はい」
呟きに応える様に、彼女は現れた。消えた位置と寸分狂わぬ位置へ、まるで最初からいたかのように、居なかった事の方が嘘[エラー]であるように。
「信じて、頂けましたか?」
女性は口を開く。
信じるもなにもない。否応なしにこれが現実だと認めざるを得ないじゃないか。納得は出来ない。だが、理解はしてしまう。理不尽なまでに現実的な非日常だった。
「じゃぁ、あなたは」
「はい。先程君鳥様に助けられた守宮です」
「…………嘘、でしょ?」
「私は嘘など申しません。よしんば申しても、それは君鳥様に対してではないでしょう」
すっと、女性は手を差し出した。私は尻餅をついた状態だったのだ。恐る恐る手を取り、私は立ち上がる。人間の感触だった。
「恩返しって……何をしてくれるの?」
「何なりと。君鳥様が望むなら、世界の半分を差し上げましょう」
やっぱこいつ守宮じゃ無いんじゃないかな。
「と言うのは冗談にしても」
冗談かよ。
「随分と不遜な言い方をしましたが、私、この様な姿とはいえ一塊の守宮にすぎません。出来る事と言えば、木に引っかかった風船を取れるかどうか………」
取れないのか。そこは見栄でも取れるって言えよ。まぁ、風船取れる位で見栄を張られても困るのだが。
「そんな私ですが、君鳥様に恩を返したいと言う気持ちは誰にも負けません」
まぁあなた以外居なさそうだしね。
「是非、君鳥様のお力になりたいのです」
「………う、うん」
どこか冷たく笑む彼女に、私は曖昧に笑い返すしかなかった。
それにしても、家に誰もいないのは幸いだった。彼女と向かい合って座る。少し大きめの瞳。愛嬌より、爬虫類的な印象を与える瞳は、成る程守宮の眼と言えるかもしれない。真っ直ぐ下ろされた髪の毛は、灰と黒が混じりあった不思議な色を湛え、腰の辺りで緩く纏められていた。
年齢は……20歳以上と言う位だろうか。
「でも、別に私は守宮にやって欲しい事なんて」
人の姿であるとは言え、彼女は守宮だ。嫌いな生物に頼みたい事は持ち合わせていない。
「何でもよろしいのです。私に出来る事ならば、何でも致します」
「じゃぁ――」
自転車を直してきて貰おうか。いや、これはナイスアイディアかもしれない。確実に私は楽が出来るし、彼女は恩が返せる。そうだ、これにしよう。
「――あの…………」
彼女の眼を見た途端、口が動かなくなってしまった。彼女の眼は語る。それで良いのかと。い、良いに決まっている。良いじゃないか。お互いに利害が一致する。そもそも、私はあなたのような得体の知れない人物と、深く関わり合いたくないのだ。だから、私の願いは―――「お婆ちゃんの家を、探そう」
「お婆ちゃん……君鳥様のお婆様のお宅ですか?」
「そう」
「解らないのですか?」
「そう。解らない。何で解らないかも解らない」
お婆ちゃんは親族からは疎まれていた。お爺ちゃんが他界し、一人になっても頑なに同居を断り、屋敷と呼ばれていた家に居座り続けた。
老朽化した木造の屋敷は、台風が来れば吹き飛び、地震が来たら潰れ、煙草を投げられた日には全焼は免れない。しかしそんな屋敷に、お婆ちゃんは住み続けた。親族も最初は世間体を気にして同居を勧めたが、結局は諦めた。
「それで、どうなったのですか?」
「《解らない》」
「解らない……とは?」
「解らないの。多分お婆ちゃんは死んでしまっている。でも、どうして死んだのかは疎か、何処にお婆ちゃんの家があったかすら解らない」
確か小学校の頃に行った記憶はある。しかし、その後からブツリとお婆ちゃんについての記憶は途切れる。
「成る程。では、探しに参りましょう」
「でも、当てが……」
「大丈夫です」
守宮はふっと笑んだ。―――何故か、大丈夫だろうと、確信出来た。

『お婆ちゃん。なんか変なのが居た!』
『――――あぁ、それは』

「――君鳥様? 君鳥様。此処です」
電車で30分。決して近いとは言いがたい、そんな場所に守宮は私を案内した。
左右に藪が高く聳え、細い道を造りだしている。薄暗い道。その奥は更に暗い。
此処が、お婆ちゃんの家だった場所?
小道への入り口は、《KEEP OUT》と書かれた黄色いテープで塞がれている。
「行きましょう」
「え、でも」
このテープは、立ち入り禁止を示すものだ。
「大丈夫です」
テープをかい潜り、守宮は道へと入っていった。影が、彼女の顔に落ちる。
「君鳥様」
小道の中から彼女が手を招く。それは最早御伽噺の世界だった。しかし幻想ではなく、どこか怪異的な世界。
「―――此処が、お婆ちゃんの家、なんだよね?」
「そう。この小道を抜けた先が、お婆様の屋敷です」
私は息を吸い込んだ。冬らしいキンと張った空気の中に、どこか柔らかさが混ざっている。黄色のテープを潜り、小道に入る。土の感触。此処だけ、何故か湿った印象を受けた。
「行きましょう」
テクテクと、彼女は進む。置いて行かれぬようにと、私は少し慌てて彼女を追いかけた。――が、慌てるまでも無かった。藪は数歩で晴れ、眼前には広大な原っぱ。別の世界に引き込まれた様な光景に、私は瞬きすら忘れた。
「………屋敷の後は、もう殆ど残っていませんね」
守宮は真っ直ぐに原っぱの中央へと歩いていった。そして、地面を持ち上げる。………違った。あれは、腐りかけた木材だ。その下から、彼女は何かを取り出す。
「君鳥様。あなたが失った分を、お返しします」
彼女が手にしたのは灰色の懐中時計。こんな所にあったのに、ピカピカと輝き、新品も同然だった。
私は一歩、彼女に近付いた。――――と、地面から一斉に守宮が飛び出し、左右へと逃げていった。草木の隙間に見えた土の色が、灰から黒へと変わる程の守宮の大群。
「な、何?」
「守宮です」
「守宮?」
「えぇ」
左右に分かれた守宮が作った道を歩いて、私は彼女の下へと向かった。
「これを。お婆様から」
「何で、あなたが」
「―――お婆様との、約束です。お婆様を守れない代わりに、君鳥様にと」
懐中時計が私に渡される。

潰れた屋敷。崩れた屋敷。
『何で―――何で!! 守ってくれるんじゃ無かったの!?』

「申し訳ありませんでした。―――私には、お婆様を、屋敷をお守りできなかったのです」
「私は、守宮が嫌いだったんじゃない。嫌いになったんだ」
そう言うと、守宮は優しく笑った。
「君鳥様のお役に立てたでしょうか」
「恩返しかは微妙だけどね」
私は冗談めかして言って。彼女は少し申し訳なさそうに笑う。私は受け取った懐中時計を首から掻けた。
「十年間……此処を守ってくれたんだね」
顔を上げる――そこは原っぱなどではなかった。曝された乾いた茶色の土に、向こうには別の家のコンクリートが風情無く立っている。振り向くと、ただアスファルトの道路があるだけ。藪の小道はない。
「守宮? や、守宮!?」
辺りを見回すが、あの灰色は見つけられない。もう、恩返しは終わりなのだろうか。あの童話のような過去との邂逅が、私への恩返しなのだろうか。
「君! 此処は立ち入り禁止だよ!」
振り向くと、自転車に乗ったお巡りさんと思しき人がこちらを見ていた。
「す、すみません」
「お嬢ちゃん、高校生? 全く、決まりは守ってね」
「あの、此処って端野お婆ちゃんの家だった所ですよね?」
私がそういうと、お巡りさんは一瞬眉を寄せた後、何か考えるように顎を掻いた。
「端野……あぁ、藤婆さんの事か。そうだよ。なんだい、お孫さん?」
「はい」
「ふぅん。まぁ、なんか此処、手を付けようとすると機械が止まったり、作業員が倒れたり、一種の心霊スポット化してたんだよねぇ」
「守宮ですよ」
「は? 守宮?」
「えぇ。守宮です」

『君ちゃん。守宮はね、お家を守ってくれるんだよ。だから、良いかい? 守宮を見つけたら良くしてあげなさい』
『うん。解った!』

小さくカチと、懐中時計の針が進んだ。
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