スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

メモと言うか、厨二設定案




【最終正義】
[コンタクト・ストップ]→[コレクト・ライン]

始動後、一定区間の正義執行を制限する。また、他の正義行使の代行権を有する。

【夢想正義】
[イフ]→[バッド・シンキング]

このキャラクターへの正義執行は弱体化する。このキャラクターは他の正義を感知する。

【逃走正義】
[タップ・ダンス]→[アイ・マイ・ユー]

他キャラクターの正義を感知できる。また、このキャラクターに当たる筈の弾丸は1/2の確率で外れる。

【殺戮正義】
[ピースレス]→[ピースフル]

全正義中唯一の連射型銃を所有。また、このキャラクターは全キャラクターから感知される。

【武断正義】
[ホリック=ホリック]→[デス・ペナルティ]

全正義中唯一精神干渉を行えず、相手は物理的な苦痛を感じる。また、このキャラクターは他の全キャラクターから感知される。

【不純正義】
[ラビュー=ラビュー]→[ノンチョイス]

撃ち込まれた異性を、(行動可能なら)夜時間内において使役可能。ただし、一度に出来る命令は一つ。かつ、複雑なものは出来ない。「追う」「撃つ」など。同姓へは通常ダメージ。

【慈愛正義】
[エンドレス]→[キラーシップ]

通常の感知能力を無効にする。逃走正義はその限りではない。このキャラクターは他の正義を感知する。

【架空正義】
[ミスリード]→[ブックマーク]

弾丸が、対象と執行者を結んだ丁度反対側から放たれる。感知もずれて反応する。ただし、逃走正義はその限りではない。

【自己正義】
[アンブレラ]→[ブルー・スカイ]

最も射程が長く、最も当たり判定が広い。人間を感知(正義ではなく、キャラクター感知)可能な唯一の正義。

【完全超悪】
[ジャスティス]→[ワールドエンド]

Unknown
誰にも感知されず、誰かを感知もしない。ただ、名だけが存在すると言う噂もある。

秒速15メートルで、


――――初めまして。

その言葉に、人々が抱く思いとはどの様なものだろう。
挨拶。そう、挨拶。その程度だろう。初めて逢う人間に使う、そんな意識しかないだろう。
「………初め、まし、て?」
眼が見開かれ、息が詰まる。視界が吹き飛んでいくような、景色が一新するような、世界が壊れたような、創り直されたような感覚が、全身に走る。
違う。今使うのはこんな言葉じゃない。初めてではない。既知の間柄に初めましてなんて使わない。だが、じゃぁ何て言うんだ。おはよう? こんにちは? こんばんわ? 久しぶり? どれも違う気がした。ただ、久しぶりが一番近くはある。確かに久しい。だが、ゲームじゃあるまいし、数週間逢わなかったからって面識がリセットされる訳じゃない。初めましては違う事は変わらない。
じゃぁなんだ。
僕は何て言えば良い。初めましてと言った口がやたら乾く。
「初めまして。私は―――」
「木祖ヶ峰 一条。知ってるよ」
「当たり! でも、何で?」
「なん、で………だろうな」
本当に解らない。そう言う表情だった。僕だって解らないさ。何で君が解らないのか、僕にはさっぱり解らない。
「えっと、貴方は、縢緋 一色君で合ってる?」
何かメモの様な物を見ながら、彼女は僕に問うた。僕は黙って首を縦に振って答えた。
「そっか、良かった。なんだか、眼が醒めたらよく解らないけど、一色君の所に行かなきゃって――――知らない人なのにね」
「木祖ヶ峰、さん?」
「一条で良いよ」
「一条さん」
「なに? 何か解った?」
「いや、一条。君、先週確かに死んだよな?」
「――――――――――――――うん」



死んだ人間が生き返る例は僕の知る限り特に無いはずだ。あるにはあるんだろうが。絞首刑の結果、仮死状態から生き返ったと言う話は聞いたことがあるけれど、僕は一条が白と灰の粉末に変わっていく様を見届けている。両親には反対されたが、そこまで見なければ意味が無かったのだ。しかし、どうだろう。別に僕は幻覚と対話しているわけでも、ましてや粉末に話しかけられている訳でもない。実際、彼女は他人にも知覚されているし、対話も出来た。流石に彼女の死を知る人間に見せるわけにはいかないので、コンビニで物を買わせたのだが、そのことから物に触れることも解った。
触れてみても、冷たいと言うことはなく、暖かい。
これでは、これでは――――
「生きてるのと、変わらないね」
「あぁ」
そうだ。
誰にでも見えて、触る事が出来て、普通に体温がある。これは死人じゃない。人間だ。だが、それは絶対に違う。木祖ヶ峰 一条は死んだ。それは覆しようのない事実だ。地域の新聞にも、ニュースにも、数秒だがなった。世界は木祖ヶ峰 一条を死者とした。そのはずなのに。
「どうして、居るんだろうなぁ」
「解らないよ。眼が醒めたら………ううん。『眼が醒めたように』居たんだから」
「起きたら生きてた。そりゃ、起きれたら生きてるけど」
「ねぇ」
何だよ。僕は、少しの困惑と、苛立ちを込めてそう言った。だが、彼女は退かなかった。昔はすぐに謝っていた筈なのに。そう言うところが、彼女が彼女らしくない部分なのかもしれない。
「もしかして」
もしかして―――それを聞くため、それを僕に言うためだけに、彼女は居るのだろうか。ぞっとしない思考が頭に溢れ出す。止めてくれ。止めてくれよ。そんなことの為に。たかが、それだけの為に。死んだ人間が生き返るだと? ふざけている。狂ってる。
「もしかして―――」
そんな僕の思考を余所に、彼女は言葉を紡ぐ。
「―――私が死んだのって、一色君の所為?」
「―――その筈だったんだけどな」



死ぬために必要な事は意外と多い。簡単に死ねる人間だが、自分から死のうとすると障害も多々ある。
所謂飛び降りは、5階程度では普通に生き残れる。勿論死ぬこともあるが、足から落ちれば下半身が動かなくなるとか、その程度だ。清水の舞台から飛び降りても、生存率七割と聞く。銃だって、ドラマよろしくこめかみにぶち込むのは良いとは言い難い。最重要な脳を守る頭蓋骨を、嘗めてはいけないのだ。
「だから、私は、『私達』は十階から飛び降りたんだよね。倒れるみたいに、頭から」
頭から落ちれば、基本的に即死出来る。極論、一階からだって、打ち所が悪ければあっさり死ぬ。だから、彼女は一瞬で死んだんだ。
「風が凄く鳴って、一瞬のような、永遠みたいな時間の後に、全てが消えた」
「あぁ。眼を開いてるつもりでも、何も見えなかった。体から、何か大事な物が抜けていくみたいだった」
「私は何も感じなかったよ」
「―――――へぇ」
それが、生と死の境目か。死を認識も出来ない―――いや、だから、生きてるのか。死を自覚出来なかった彼女が。
「真っ暗じゃない。真っ白じゃない。真っ赤じゃない。全ての色と、完全な無。ううん。『私は居なかった』」
「死んだら、無。とか聞くけど」
「無なのかもしれない。有なのかもしれない。『解らない』。私はそこにいなかったし、気付いたときには『死んでいなかった』」
僕や彼女の存在は死ぬまで、と言う意味か。死んだ後、次眼が醒めるまで、そう。つまりは眠るのか。
夢も見れない眠りなんて、あまり良いとは思えなかった。
「頭から落ちて、なのになんで一色君は生きてるの? それとも、私と同じ?」
「違うよ。僕は生きてる」
そう、僕は言った。噛みしめるように言った。
「ねぇ一色君」
意地悪な、外面の良い子みたいな、甘い声を彼女は放った。彼女が死んだだろう事は、こんな生前との差位でしか解らない。いや、それだって、僕が知らなかっただけかもしれないのに。―――だからだろう。僕には彼女が何と言うか解っている。それは、世界を壊す一言だし、僕の世界が創り直される一言だ。
「私が死んだって証明して」



世の中、超能力やら幽霊やら宇宙人やらは、いる証明も微妙だが、いない証明も確固たるものではない。だから、いるとも言えるし、いないとも言われる。煮詰まった議論は、逆に中間論者を増やし、無関心な者を生み出す。詰まり、居ても居なくても問題ない。しかし、これは思考の放棄に他ならず、ようは解らないから解るまで見ない振りをしているのだ。
それは解っている。だが、解っている上で敢えて言わせて貰うなら―――
「生きていようが、死んでいようが、目の前にいる。それは変わらない」
「どちらでも同じ、か。一色君は適当だね」
「でもそうじゃないか。見れて、話せて、触れて、『死んでいる』と言う必要がない。かと言って、一条は死人なんだから」
僕はぶっきらぼうに言った。実際、嫌気が差していた。常識を揺さぶられ、頭をかき混ぜられた様な気分が、良い気分であるはずない。閉じた瞼の裏に、煌々と照る赤い火が映った気がした。
「それもそうだね。でも、信じられないなぁ。私、死んでるのか」
「あぁ、僕が狂ってなければ、一条は確かに死んでたよ」
滑ついた液体をまぶした肉に包まれる感覚が、皮膚に走る。一瞬口元を押さえるが、その手も気持ち悪く感じて、僕は歯を食いしばって吐き気を堪えた。人体クッションなんて、味わうものじゃない。
「一色君は、どうして生きてたの?」
「助けられたんだよ。一条に」
いや、本当に奇跡的だった。十階、約2,30メートルの高さを頭から落ちて、僕は何故生きているのか不思議でならない。多分、彼女が胸に僕の頭を抱え込むようにしたから、先に彼女が直撃し、その肉に衝撃を和らげられたんだろうとは考えられるが、かなり非現実的だ。コンクリでなく芝だったから? 頭からでなく肩が先に落ちたから? 愛の力? 馬鹿馬鹿しい。愛の力があるなら彼女と死なせて欲しかった位だ。――――彼女と――――もう、一度。
「多分、私が一色君の所に来たのはその為なんだよ」
「僕は一条と死に、一条は『死に直す』。そうだ。それで、何も煩わしいものはなくなる」
「丁度良かったでしょ?」
風が吹いて、僕の彼女の髪を揺らす。屋上ともなれば、それだけでも十分に恐怖を煽られるだろう。だが、一度死に損ねた身だ。別に怖くはない。
「あぁ、一人ではちょっとね」
自然と、僕は彼女の体を引き寄せていた。死んでようが生きていようが、そうだ、関係ない。微笑む。彼女も笑みを返した。体がグラリと傾く。



彼女なら何か解るかもしれない。でも、いきなり話しかけるのは失礼だろう。とは言え、聞かない訳にはいかない。仕方ない。

――――初めまして。

Play×Play×Pray #11→


閑話休題 U

「ほいポテト」
「ごち」
「死ね」

]T

「雨、好き?」
「嫌いだなぁ」
「何が嫌い?」
「裾が濡れる」

]U

「曇り好き?」
「嫌いだねぇ」
「何が嫌い?」
「湿気とか?」

]V

「晴れ好き?」
「好きくない」
「何が嫌い?」
「続かない所」

]W

「じゃぁ何が好きなのさ」
「天気」

]X

「今日の議題を決めよう」
「以上議題決定」

]Y

「真実なんてない」
「と言う真実ねぇ」

]Z

「君の携帯さ」
「おう」
「ダサくね?」
「お前の程じゃねぇよ」
「ダサいのは認めるんだ」
「…………うん」

][

「好きな人とかいる?」
「君が大好きだよ」
「奇遇だな。俺もだ」









「「うぇ」」

]\

「決定的で、致命的な失敗をしたことがあるかい?」
「ダブチ………」
「まだ引っ張るか」

]]

「恋とか愛とか、そう言うのを議題にするだけで、若いって言うか、青い感じするよね」
「って言って大人ぶろうとしてるんだろ?」
「って言って大人ぶろうとしてるんだろ?」
「堂々巡りも良いところだ」

閑話休題 V

「で、恋愛ってなんだろうね」
「知るかよ」

Play×Play×Pray #1→

Is this communication ?



T

「やぁ」
「おはよう」

U

「雨だね」
「あぁ」
「僕ら真面目だと思わない?」
「暇人と同義だと思うね」

V

「食べるって行為は実にエロっちぃと思う」
「どの辺りが」
「食べ物を口に運ぶ動作や、口内に入れる瞬間に見えるぬらついた舌とか、咀嚼する動きとか、嚥下する音とか」
「美女に限るじゃねぇか」
「まぁね」

W

「男と女の差は何か」
「罪があるのが男で、罪を与えるの女だ」

X

「鏡見てて、誰このイケメン!って思ったら僕だった」
「鏡見てて、誰だこいつ!って思ったら本当に知らん人で焦った事あるわ」
「え?」
「ん?」

Y

「鏡で思い出したけど」
「ふむ」
「昔授業で習ったじゃん。鏡が映る理由」
「あぁ」
「あれ、僕らが光発してる風に描かれてるよね」
「そうだなぁ」
「光を発するなんて………あぁ、ゴメン。僕は出来るわ」
「くたばれ」

Z

「へぇ、あんたもナナって言うんだ」
「お前くらいだよ毎度シチ言うの」
[

「食べなければ死ぬのか、死ぬ時食べていないのか」
「食べ物がなければそんな考えもないぜ」「そうだねー、みんな死ぬし」

\

「それにしても」
「なに?」
「チーズバーガーを二個連結した方が安上がりとはこれ如何に」
「先に言えよ」

]

「話す事は人間の営みを続ける上で重要らしい」
「こんな生産性なくてもか」
「生産性があれば良いと言うものでもないさ」
「"生産"性と言う点で言うなら、今は実に問われてる訳だしな」

閑話休題 T

「飲み物買ってくるわ」
「ポテト頼む」

ドサリと、雪の落ちる音で目が覚めた。眼を開くと、小さく橙に光る電球の光が眼に刺さる。起き抜けにそれは些か痛い。
「何、時……」
充電器に刺さった携帯を手探りで引き寄せ、光を遮るように携帯を開く。
「眩しっ!」
いつもは薄ぼんやりとした光が、今はやけに頑張って輝いた。お陰で眼は覚めたが、私は欠伸を一つ。まだ眠い。
「4時………どうしよう」
寝るのは簡単だ。眼を瞑れば、それで多分寝られるだろう。連日の夜更かしが祟って、崩れ落ちる様に眠りに落ちた割に、実際あまり寝れていなかった。しかし、体の睡眠欲とは裏腹に、意識は妙に覚醒してしまっていた。顔がひんやりとする。冬を実感する瞬間。
「雪、降ってたのかな」
何気なしに首を動かすが、カーテンの隙間から覗く窓ガラスは、白く曇っていた。その露を拭いに行くほど、私は好奇心旺盛ではなく、ぐぐっと体を縮こまらせる。眠れ、眠れと、子守歌には些か気合いの入りすぎた、そんなワードを念じるが、やはり意識は遠のかなかった。
「―――――――」
がばっと、私は起きあがった。冷えた空気が、凄まじいスピードで私の熱を奪う。私は身震いする。しかし勢いをつけて立ち上がった。タンスから適当にズボンと上着を引き抜き、そそくさと着替える。別に誰に見せるわけでもないので、コーディネートなどは気にしない。どうせちょっと歩くだけだ。コートとニットキャップを引っ付かんで、私は玄関へ向かった。踝程度までのブーツを選ぶ。玄関は自室よりも更に寒かった。吐く息が白く濁る。
「はふ………」
ピリピリとした、痛みに似た冷気を感じ、少し躊躇いを覚えたが、気合いを入れ、一気に扉を開け閉めた。
「何故閉めた!」
自分でも驚きの行動だ。瞬間冷却を喰らった唇を一舐めして、私はそろそろと扉を開く。視界に広がったのは、暗い中でも鈍い銀に輝く雪と、それに覆われた黒い世界。後一時間程で消える、夜の世界だった。
「はわ」
白い吐息が漂い、風に揺れて頬を撫でる。踏み出した足が、ざくと雪に落ち、数センチの窪みを生み出した。罪悪感に似た何かを感じつつも、私は次々に足跡を雪に付けていく。ザクザクサクサクと、冷えた雪は小さな抵抗感と共に愉快な音を立てた。スキップでもしたい気分だ。出来ないけど。何だよ。スキップ出来なきゃ死ぬのかよ。良いだろ出来なくても。
鼻歌交じりに、私は夜の中を歩く。冬の夜は暗い。どの季節より静かなのもあるが、それよりもどこか重さが先行して、光まで地面に落ちたように感じる。
静けさの中に、私の足跡だけが響く。
どこまで行こう。どこまでも行ける気がした。でも、顔を上げると足が止まってしまう。平坦に続く銀の道は、永遠の様な気がしてしまった。だから私は下を向いて歩く。サクサクと。
数分歩いた所で、私は立ち止まった。更地にされたその場所は、まだ誰も足を踏み入れていない為に、ただひたすらに艶やかな白に覆われている。……私が、最初に。そう思い、私はゆっくりと形だけの柵を越えようと足を踏み出した。
「二階堂?」
「え? え、えぁ、きゃっ!」
不意にかけられた声に、私はとっさに振り向いてしまった。中途半端に上げた足は、柵に当たり、私はバランスを崩して後ろに倒れ込む。コンクリートではあるが、積もった雪のお陰で直接当たるよりは幾分かマシに思えた。
「幹柴、君?」
「何やってんだ。んな時間に」
「み、幹柴君こそ」
「あー、俺ぁ眼が醒めちまったから、まぁ雪も降ったしな」
「―――雪、凄いね」
「冬だからな」
どこか噛み合わない言葉を、数度交わし、私達は空き地へ視線を向けた。相変わらず、白一色の空間。
「しっかし二階堂もワルだな。なんだよ、足跡でも残すつもりだったのか?」
ケラケラと、幹柴君はからかうように言う。
「ちょっとした出来心。もう醒めちゃったわ」
「そか。んじゃー俺が行くか」
よいしょと、幹柴君は足を上げ、柵を越えようとする。一瞬眼が見開かれ、私はとっさに彼のもとへ走っていた。ダメ! 叫び、彼の体を捕まえる。馬鹿か! 阿呆か! 彼も叫ぶが、片足を上げたままではバランスが保てない上、叫んだ所為で更に体が揺れ、私達は二人して、私は本日二度目の雪へのダイブを味わった。
「…………………」
「ごめんなさい」
「いてぇ」
「ごめんってば」
のそのそと私達は立ち上がり、私の事をみる幹柴君の眼が痛くて、私は視線を逸らした。また白が眼に映る。
「悪かったよ」
幹柴君はぶっきらぼうにそう言った。パンパンと服に付いた雪を払っていく。
「ほら、行けよ」
私は言われるまま、ゆっくりと歩きだした。柵に近付き、片足を上げる。柵を越え、そろそろと雪の上に足が落ちる。
ザクッ―――氷り始めていた雪が、重みを受けて沈んだ。静まり返った世界に、やけに大きく響いた様な気がした。背筋に冷たいものが走るのを感じながら、私は更に残った足も柵の内側へと踏み入れ、ザクザク音を立てながら走り回った。
「きゃ!」
窪みに足を取られて、私は雪の上を派手に転がった。二回転ほどして、私は仰向けに倒れた。
「たいじょぶか二階ど―――おい、大丈夫か。どっか打ったのか?」
軽々と幹柴君は柵を飛び越え、私の元へと走ってきた。どうしたのだろう。
「どっか打ったか?」
「大丈夫だよ?」
「そうか、なら良いんだ」
「どうしたの?」
「いや、泣いてるように見えたから」
私は顔に手を当てる。手袋をしているから、よく解らない。手袋を外し、目尻に触れると、確かに濡れている。でも、これは雪の所為だ。そう、雪の、冬の所為に決まっている。
「夏より、冬の方が良いね」
「風邪引くぞ」
幹柴君は手を差し出してくれた。私はその、がっしりとした手を握って、雪の中から立ち上がる。濡れた服が冷たくて、不快だった。
「送ってくよ。家は――」
「いい。一人で行く」
「――そうか」
それ以上何も言わず、彼はゆっくりと空き地から去っていった。
「またな」
「うん。またね」
その背中が消えるまで見送って、私は汚い空き地を一瞥してから家に戻った。
前の記事へ 次の記事へ