本日お誕生日を迎えました《木下ゆみか》様に、
si「お誕生日だそうですね。おめでとう」
ゆ「ありがとー」
si「すみません。僕には何もあげるものが無くて」
ゆ「言葉だけで十分だよー」
si「成る程。プレゼントは言葉と。任されました」
と言うわけでゆみか様からのお題、《女子校》で、一本書かせて頂きましたが、先に言います。
すみません。
女子校って何状態。
女子校じゃないだろ状態。
女子校じゃなくても良いやん状態。
女子校(笑)
しるく@が一時間で書いてくれました。
それでもよろしければ、こちらをお祝いの品に代えて、お贈り致します。
《I & WE & YOU》
「弥生さぁ」
椅子に逆向きに座る友人のアホ……こと、卯月が声を掛けてきた。中身見えてるけど良いのだろうか。
「お兄ちゃんいるって言ってたじゃん」
「いるけど」
「チューしたことある?」
シパーンと、肌と肌が触れ合う……と言うか、ぶつかり合う音が鳴った。一瞬、教室が静まり返ったが、叩かれた相手を見るや、一様に何か納得した様な表情になり元の教室模様に戻っていった。
「待て、私の扱いが酷すぎるうえに、弥生! 貴様乙女をぶったな!」
「乙女だとか思って欲しいなら恥ずかし気もなく下着曝したり、チューとか言わないの」
そう言うと、卯月は一度立ち上がり、椅子をこちらへ向け、内股に座り直した。
「お兄様と、キ、キスとか……した事あります?」
シパーン。
流石に二度目は誰も振り向かなかった。しかし、私も躊躇いが消えたな。私の右手が光って唸りそうだ。
「えー、無いのー?」
「漫画の読み過ぎだと思う」
「『ちょっとお兄ちゃん』『ぐへへ、嫌よ嫌よもなんたらかんたら弥生のなんたらかんたらうんたらかんたら』『だ、ダメだっ………待てシャーペンはやばい。」
「ピアスとか憧れない?」
「0.5cmのピアスなんざないと思う」
「あ、良いところに裁縫用の糸が」
卯月は逃げ出した。
………はぁ。私は溜息を吐く。
兄ねぇ。
『おい弥生。何とかお前の学校に潜入する方法を考えてくれよ』
ねぇよ。
『おい弥生。文化祭らしいな。よし、俺が行こう』
なんで私の代わりみたいに言ってんだ。
『おい弥生。………写、写メうぉぉぉ、俺のiPhoneがぁぁぁぁ!』
「弥生。ア……卯月が泣いて縋ってうざいんだが」
別の子が話しかけてきたが、いやはや全くア……卯月がどういう扱いか、解りやすい対応である。とは言え、何故私なのだ。
「耐えて下さい」
丁重にお断りだ。
ひたすらに苦い顔をされつつ、私は席を立った。とっとと帰りたい。まぁ、帰ってもアホ二号に絡まれるのだが。強力な攻撃を使える分楽だ。
家に着くなり、兄が土下座していた。
「何だよ」
「お願いします女の子紹か………」
頭を踏みつけて奥へ。嫌な踏み応えだ。
取り敢えずリビングへ向かい、キッチンで飲み物を回収して座る。その足下に兄が滑り込んだ。なんだこいつ。
「頼むよ! いや、別に付き合う様にしろとは言わん。それくらい自分でやる。だが、出会いが無ければ何にもならないだろ?」
「その出会いもものにしろよ」
「コネくらい使わせろよ」
「都合良いなぁ」
改めて兄の顔を見る。………憎たらしい事に整っている。少し細い眼が浮いているが、それを差し引いても見栄えは良い。黙らせた状態で連れていけば、免疫の無い子なら軽く落ちる気がする。20前後で、背が175以上あって、体重は65位で、スーツが似合って、収入がそこそこあって、一人暮らしで、料理が出来て、スポーツ万能で、眼鏡で、勉強が出来るなら誰でも良いとか言ってる人も居たしな。まぁ、彼女は現在その条件を完璧に満たした女性とお付き合い中ですが。本当に誰でもよかったらしい。しかし恐ろしい事に、残念を差し引けば兄は条件に当てはまる。危ない危ない。
「なぁ兄貴」
「なんだよ弥生。後呼び捨てろって言ってるだろ」
自分が呼び捨てで呼ぶから、お前も呼び捨てで良い。兄はそう言っていた。無駄な所で律儀である。
「妹とチューしたりしたいと思う?」
「………無いとは言えないなぁ」
「は? いやいやいや、とうとう女なら誰でも良い系に!?」
「いや。お前が懐いてくれるなら、兄としては嬉しいし、嫌われたなら仕方ないと思う事にしてる。だから、いや別に女として見てる訳じゃないさ。今だって、お袋に優しくされれば安心するし、親父に怒られりゃ凹む。俺は家族大好きだしなぁ」
そう言って兄は照れくさそうに頭を掻いた。
「ま、流石に弥生に手を出すほど飢えちゃねーよ。いや、すまんかった」
踵を返し、リビングを出ようとする兄に、私はとっさに声を掛けていた。
「私は、」
「ん?」
「……ほら、仲の悪い兄妹っているじゃん。私はそんな事ないから」
「知ってるって」
苦笑して、兄はリビングから出ていった。………兄のくせに生意気な。
「弥生弥生やーよーいー!」
翌日。懲りもせず長雨さんが私の席の前に陣取った。
「おい、なんか他人行儀になってる」
「気の所為ですよ。長雨さん」
「いや、今確信した」
「で、何のご用でしょう」
「男を紹介してくれ!」
全力で、拳を振り上げんばかりに卯月は言った。馬鹿だなぁと思っていたが、心なしか今日は教室が狭く感じる。………なんか寄ってきてる?
「良いか弥生。出会いとは待つんじゃ無い。作るものだ。かの有名な…………なんとかさんは言った。ボーイズビーアンビシャス」
「少年ですけど大丈夫ですか?」
「少年には女も含まれ」
「それ青年です」
少女あるだろ。少男が無いからなんとも言えない気もするが。
「よし解った! 弥生、兄を紹介してくれ! コネクションを作っておけば、もう貴女に用はないの。クシャクシャポイ出来る!」
これマジで言ってるのかな。殴って良いのかもしれないな。
………だが、私は少し笑みを浮かべて、ダメと答えた。
「なんでよー。ハッ! まさか弥生さん」
「漫画の読み過ぎ。現実、そんな事滅多に無いの」
じゃぁなんでさと、卯月は言った。
「あれを甘やかす訳にはいかないから」
「ん?」
出会いは作るもの。………まぁ、概ね合っているだろう。でも、私と兄の出会いが作った訳じゃ無いように、出逢う事だってある。作った出会いじゃ無くて、出逢ってから作っていくのも、良いと思うのだ。
「ま、どうせ文化祭には来るだろうし、自分で頑張ってね」
「成る程成る程。私の魅力で悩殺してやれと」
「魅力かっこ笑い」
まぁ、残念な友人を見せたくないのもなきにしもあらずだ。
ありがとう御座いました。おそらくお題を頂かなければ絶対に書けない話だったと思います。
ご満足頂けたら幸いです。
あ、リクエストは受け付けてますんで、なんか書いて欲しいのありましたらコメなりにどうぞ。