リボーンの武くんと幼馴染の女の子のお話。
およそエルシーらしくないと言えばらしくないような…。
たまには良いよね…?
「痛い。」
「痛くしてんだよ。」
「どうして?優しくしてよ。」
「嫌だね。」
「なんで?性癖?」
「…お前ってほんと良い性格してるのな。」
「だって山本そう見えるんだもん。Sって感じ。」
「えどの辺が?俺自分ではさわやか好青年って感じだと思ってたんだけど。」
「うん、そうだね。三ツ矢サイダーって感じ。でも私、」
「炭酸飲めないー、だろ?聞き飽きた。」
「飽きるほどは言ってないような。あっ、痛い!ねぇ山本、本当に痛い!」
「だから痛くしてるって言ってるだろ。」
「だからどうしてって聞いてるじゃん!本当に性癖なの?痴漢されてお尻触られてスカートの中に手突っ込まれてあげくパンツまで脱がされそうになって最後の勇気を振り絞って足を踏んだら逆ギレされて降りる時にホームに突き飛ばされて両足を擦り剥いた私が可哀想だと思わないの?」
「へらへら笑って言うのやめろ。もっと痛くするぞ。」
「へえええええ、いったいどういう展開?現国2の私にも分かるように説明を要求します!」
「…。」
「ねぇ山本、どうしてそんなに怒ってるの。」
「怒ってるってのは分かるんだ。」
「分かるよ。長い付き合いじゃないか。」
「だからへらへら笑うのよせって言ってるだろ。」
「もとからこの顔だもん。」
「お前なぁ。」
「いいから説明してよ。どうして怒ってるの?どうして痛くするの。」
「本当は分かってるだろ。分かって言ってるだろ。」
「うん。」
「ほんと、いやな女。」
「女だって!そうだよね、誰もいつまでも男でも女でもない子供じゃいられない。」
「だから尻触られんだろ。」
「そうだね。うん、全くそうだ。」
「…。」
「…。」
「…ほんとは分かってないんだ。」
「うん。テキトーに頷いてみただけ。」
「…真性のバカだったんだな、驚いた。」
「ねぇ真性のアホで良いから教えてよ。」
「…。」
「黙るのはずるいよ、ミスター・サイダー。」
「適当に答えるヤツよりマシだと思うけど。」
「そうかも知れないけどさ、山本、」
「…。」
「…。」
「ただ、」
「うん。」
「ただ、ムカついただけ。」
「痴漢が?」
「痴漢に。」
「私を触ったから?それとも日本の風紀の乱れ方に疑問を感じて?」
「どっちも。」
「そこは私って言ってよ山本!将来高い志を持った県議会議員になりたいの?」
「なれたら良いな。」
「嘘ばっかりはどっちだ。」
「ごめん、今のは嘘だ。」
「分かってるけど。」
「本当はさ、」
「うん。」
「色々ムカついてる。」
「うん。」
「お前を選んで触った痴漢も、簡単に触らせるお前も、そもそも健全な市民がそういう不埒な性犯罪者の被害に晒されてるって現状も。」
「うん。」
「お前を、守れなかった、自分にも。」
「比重は?」
「7:1:2:10」
「滅茶苦茶だよー。」
「つまり、自分に一番ムカついてるってこと。」
「そんなの無意味だよ。山本は歩きじゃん。電車じゃないじゃん。」
「そうだけど、事実関係とは別次元の感情なんだ。」
「ええ、なんか段々恥ずかしくなってきた。」
「世の中、俺なんかにはどうにも出来ないことが山のようにあってさ、それには俺の世界で一番大事なもんに関することまで含まれてるんだなーって思ったら、イラっときて、」
「うん。」
「痛がって泣きそうな顔が見たくなった。」
「やっぱりSだね。」
「意味分かって言ってる?」
「うーん、たぶん、大体。」
「ほんとに子供じゃなくなっちゃったんだな。」
「お互いね。」
「なぁ。」
「うん。」
「お前、俺が好き?」
「好き、大好き。」
「俺もお前が好きだ。だから痴漢にあったり怪我させられたりするなよ。」
「難しいよ。」
「善処して下さい。じゃないと俺、ミスター・サイダーを保てそうにない。」
「あはは、それは大変だ!あまたいるファンの女の子を幻滅させるわけにはいかないもんね!」
「あんまいじめないで。Sはガラスの剣なんだから。」
「銀魂ネター?でも私総悟よりもマダオが好きー。」
「えっ、まじ?」
「うそー。一番好きなのは多串くんだもん。」
「…(こいつ!)。」
「でも山本も好き。」
「もって言うな。俺はお前しか好きじゃないのに。」
「山本だって野球好きでしょー?それと同じような意味だよ。別次元で好きってこと。」
「俺も段々恥ずかしくなってきた。」
「お互い様だよ。私達、今までずっとお互い様で均衡を保ってきたし、これからもたぶんそうなるんじゃないかな。それが一番良いんじゃない?」
「そうかな、お前にそう言われるとそんな気もする。」
「そうだよ、たぶん。」
「痛くしてごめん。アイスおごってやるから許して。」
「サーティワンでも良い?」
「良いよ。」
「ダブルでも良い?今ならダブル頼むとトリプルになるキャンペーン中なんだよ!」
「良いけど、そんなに食べられんのか?」
「半分こすれば良いじゃん!」
「…(こいつ!)!」
BGM【蝋の翼】鬼束ちひろ
やっぱりさ、俺らは隣同士でいるべきなんだよ。だから逃げたりすんなよ。逃げてもまたつかまえるけどな!