リボーンの骸さんと、顔見知りの女の子のお話。
ううん、骸さんはもっと色々書きたい、というか書けそうな気がするお人です。
私ね、前から不思議だったことがあるの。よく布団を干すと「お日様の匂いがする」って言うわよね?あれ誰が最初に言い出したんだろうって。不思議に思わない?だってそうでしょ?お日様の匂いなんて本当は誰も嗅いだことがなくて、だけど日光がもたらす匂いを何となくそう信じたかっただけなんだとは思うんだけど、でも誰が最初にそんな粋な表現をはじめたのかな。不思議よね。とっても詩的な表現なのに、おばちゃんとかでも普通に使うから、あの言葉を最初に使った人は本当にエラい人だと思う。日常にもう少しだけ詩的な表現が増えれば、世界はもう少しマシになると思わない?例えば日本の満員電車の中でも、下品な広告じゃなくて詩を載せたらどうかな。ペーパーラジオも良いと思うけど、あれは観光地先の思惑が滲み出すぎてて最後嫌な気持ちになるから、詩。ポエムよ、ポエム。ありがちな一般投票じゃなくて、ちゃんと職業がポエマーの人に書いてもらうの。そりゃ、たまには素人でも良いと思うけどね。だけどやっぱりプロは凄いじゃない?それがどんなプロでも。え?偏見なんて無いわ。うん。金箔職人でもAV女優でも、皆誇りを持ってるなら素晴らしいと思う。綺麗ごとに聞こえるかしら?あなたには?でも本当よ。心の底から思ってる。だけど、こんな私でもね、こんな偽善者風の私でもね、認められない職業というか、プロがあるの。それがあなたよ、骸。あなたなのよ。私には、計り知れないでしょう。あなたが体験してきたこと、抱えているもの、これから起こり得る出来事。だけど、計り知ろうとも思わない。思えないのよ。人を殺すのは最低よ。例えばどんな理由があったとしても。決して許されるべきではないし、実際に許されない。苦しめるだけなら…それでも推奨は出来ないわ。殺すよりマシってとこね。だから私は今、今!足元に転がっている血だらけで湯気が立ちそうなこの肉塊を栄光だとは思えないの。あなたは間違えた。私もたぶん間違えた。何がって?あなたと出会ってしまったことよ、骸。出会いさえしなければ、好きになったり愛したりしなかったもの。私と一緒に陽だまりで詩集を読んで欲しいなんて思わなかったもの。だから私は間違えた。あの日、あの場所に行くべきじゃなかった。えぇ分かってる。こんなことは無意味だって言いたいんでしょう?あなたは聡明な人だものね。だけど言わせてちょうだい。だってあなたは私が喋り終わったら私を殺すもの。最初から知ってたわ。あなたは私なんか何とも思ってなかったってこと。嫌いじゃないけど好きでもないってヤツね。だから、もし私がこの光景を見さえしなければ、あなたは今まで通りだったはず。だけど見てしまったから、途端に私が邪魔者になってしまったの。残念だわ、骸。とても残念よ。私はまだまだ死にたくなかった。ずっと生きて、たまにはあなたとお喋りしたかった。こんな風に急き込んでるんじゃなくて、ゆっくり、陽だまりの下で。お日様の匂いがするシーツの中で。骸、今ならまだ間に合うかも知れない。自分を大切にして生きてちょうだい。最初で最後のお願いよ。心に、いつでも、詩を思い描けるくらいのゆとりを持って生きて。
「さようなら。」
BGM【星に願いを】Cocco
僕には似合いませんよ、陽だまりなんて。