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都会へ行こう!2(66666hitリク)



約二時間半後、バスは目的地に到着した。
ここはS駅。様々な公共機関、店等が集合する都心最大級の駅。
バス停と乗車券の販売店もあるので、郊外からの観光客が利用することは少なくない。
早朝ゆえか、出発から一時間程で眠っていた黒神以外の五人は、眠い目をこすりながらバスを降りた。
ちなみに、その寝顔すら車内の空気を変化させていたことを、五人は知らない。
黒神はそんな人間たちを、寝ている振りをしながらただ観察していた。楽しかったようである。

「あっという間だったな」
「寝てましたしね。さて、早速ですが電車移動です!」

欠伸をかみ殺したαは、キリっと表情を変えて両手を上げた。

「S駅の行路は複雑ですが、そこは遠慮なく神の力を駆使して道のりを把握してますのでご安心を!」
「堂々と反則宣言か!」
「まぁルールがある訳じゃねぇが」
「それじゃあこちらです!着いて来て下さいね!」

どこから出したのか「神様ご一行」と書かれた旗を高々と掲げて歩き始めたαを全力でMZDと六と九が止めながら、六人の道中はようやく本番となったのだった。


最初の目的地は、年配の男女に人気の寺。
計画の段階で黒神が異議を申し立てた場所である。
「もっと若者の街に行きてぇ」とのことだったが、「最近は若い人も行くんだよ!」とαの力説と、他六兄弟の感触が良好だったので、決定した。
――駅を出て少々歩くと、あまりに有名な寺の門が見えて来た。

「……円堂がいるのか?」
「それは某サッカーゲームの学校だ、読み方が違うぞ黒」

大きな提灯に書かれた文字に、黒神が首を傾げながら言う。
違うのか……と何故か残念そうである。

「あれが風雷神門ですね!」
「詳しいな、アルファ」
「調べましたからねっ!あの提灯は、ニホンの有名な技術者が提供したんだそうですね!」
「それは知らなかったな……百年近く焼失したままだったらしいのは聞いたことがあるぞ」
「ニホンの建造物は良く燃えますねー、お城とか」
「……その言い方は、語弊がある……」

六人で並んで山門を眺めていると、提灯よりも六人を撮影する一般人が多かった。
芸能人である六は慣れっこで、撮られることにさほど拒否反応をしないのだが、写真を残されてはまずい、貭がいる。
いつもなら慌ててαが止めに行くところだが、今回はその心配は無い。

「今回だけ特別に、写真や映像に貭が写らないようにしてもらいました」
「真隣に交番あるぞ」
「記憶にも残らないようにした。あれも人間の脳に記録される映像みたいなものだからな!」
「……お前神だったんだな」
「ろ、六ちゃん酷い……」

「九、あれ、人力車乗りたい」「参拝終わって時間があったらな」という黒神と九の会話を聞きながら、六人は提灯の横を通り、敷地内へ向かう。

「見て見て貭、提灯の裏側!ドラゴンだよ!龍!」
「おお……」
「あーちゃんはこの龍の由来、知ってる?」
「……知りません……」
「そ、そんなに落ち込まなくていいんだけどな……。えーと、あのな、龍の刻印があるのはこの寺だけじゃなくて、色んなところにあるんだ。火事にならないように、っていう祈願なんだぜ」
「燃えたんじゃねぇの?」
「重箱の隅をつつくな黒」
「この提灯が寄贈されてからは火事が起きてないから、いいんだば」

まだまだ正月ムードで、宝物殿までの直線の道のりには、屋台と商店街が並んでいた。
門の両側にある風神雷神像と、その裏側の天竜金竜像についてαが頑張って説明していたが、黒神と九は出店に夢中で聞いていなかったのは内緒である。

一行は本堂に向かうべく、二列で進んで行くことにした。
所々でそれぞれが「サムライ!カタナ!ニンジャ!」とか、「人形焼きやべぇ絶対後で買う」とか、「ウル●ラマンすっごい飛んでるんだけど」とか、色々楽しんでいる間に宝物殿を過ぎ、門の後ろにある大きな草鞋に「でけぇ」と口々に感想を漏らし、あっという間に本堂へ到着する。
少し離れた所には五重塔があり、「京都?」と黒神が更に首を傾げた。
そして、参拝。

「ここ、神社と同じ参拝方法じゃだめなんですよね」
「なにそれ面倒」
「面倒とか言うな、作法だぞ」
「寺はお賽銭入れて、願い事する。以上」
「簡単だな」
「お線香があれば刺さないといけませんね」
「……語弊がある……線香は、焚くんだ……」

というわけで全員手前に戻り、線香を購入した。
煙を浴びると悪い所が良くなるんですよ、というαの言葉に、六が無言でMZDの下半身と頭に煙を送っていたのが九のツボに入っていたのはともかく、無事参拝を終える。
戻ろうという中で、本堂の中の入り口付近でαがお守りを購入し、貭に渡していた。

「…………」
「……どうした、九」
「いや……ちょっと待ってろ」

そう言って九が小走りに窓口に向かっていくのを見て、欲しかったのか、とだけ、思った。
――さて、帰る道で人形焼き(お土産)や模造刀(本物があるのに)やきびだんごを購入して、一同は一つ目の目的地を攻略した。
途中のきびだんごの購入で、歩きながら食べては行けないため、六人で店の横で並んで食べていた時にカメラのシャッター音が多方面から聞こえていたが、自分たちが撮られていることに気付いたのはMZDと黒神と六で、あとの三人は気にしてすらいなかった。

「それでは次の目的地に向かいましょー」
「次は……あれか。見えてるな」

六の言葉に全員が、日本で一番高い塔を見上げた。
青空にその姿はかすむこと無く、天に突き刺さるようにそびえ立っている。

「……でかいわ」
「でけぇわ。九が小さく見える」
「いや、オレよりでかくても人間なら皆小さくみえるわこれは」
「おっきいね貭!今こんなにおっきいのに、近くに行ったらすごいよね!」
「……そうだな……」
「で、あーちゃん時間大丈夫?」
「えっ、あっ、おう!?ほわぁぁぁぁ!」

一人発狂しかけているαに貭が少し身体を跳ねさせて驚く。
予定より若干遅れていることに気付いたαは、慌ててスケジュールを再確認する。

「すすすすすすすみません!五分遅れてます!」
「五分だけだろ?」
「しかも次の移動方法、人力車だろ?」
「焦る必要ないんじゃないか?」
「うわぁぁん優しい!でも、あの、こちらですぅぅぅぅぅ」

半泣きで案内するαに、貭以外の全員が苦笑するのだった。


二番目の目的地、スカイツリー。
ここに至るまでの人力車移動については、それぞれに色々とあるので、割愛する。

観光が可能になってからしばらく経つというのに、人ごみの数は中々減っていない。
黒神が若干嫌そうな顔をしたが、九が人形焼きを一つ渡すと、眉間のしわが一つ減った。

「こちら、展望台に行く予定です」
「チケットあんのか?次の入場時間15時になってるぞ」
「うう、そうなんです……あの五分の遅れで予定の時間を越えてしまいました……」
「あー、なるほど。だから焦ってたのか」

納得した一行だったが、αは納得していないようだった。

「うう、ごめんなさいすみません……あの、説得、してきますから、交渉を、その」
「さり気なく神の力に頼ろうとしてるだろ」
「だ、だって」
「そりゃあだめだば。旅はこういう事態も楽しむもんだぜ。予定通り進むなんてことは、ねぇと思え」

旅侍、侍の旅人である六に言われると、なんだか有り難味が違う。
おお、と九が感嘆し、αに至っては小さく拍手。
持論を言っただけだったのだが、照れ臭くなって、六は顔を少し背けた。
「さすが永遠の旅人、六!」とMZDが囃し立てたので、刀の鞘で殴りつけたのは照れ隠しだろう、多分。

「無理に上る必要も無いだろうな。今回は下で買い物でも良いんじゃね?」
「オレ様たち、空から景色見るとか日常茶飯事だしな」
「それお前らだけだからな。オレたち人間だから無理だからな。……ま、とにかく今回は良いだろ。正直、買い物も目的の一つだ!」

にか、と笑いかける九に、αの緩い涙腺が全力で緩みまくり、だばぁ、と涙が流れた。
泣くなよ!公共の場で泣くなよ!と慌てる九、そして貭がαを宥める。

「泣くんじゃねぇよ貧弱、さっさと買い物行くぞ」
「ありがどうぅぅぅぅ」
「じゃ、そういうことで。別行動でいいだろ、あーちゃん」
「あ、は、はいっ!えと、集合は十三時に、この場所でお願いします!」

言いながらスタスタと歩いて行ってしまう黒神を「おい待てって!」と九が追いかける。
MZDは六の背中を押して急かし、六は、焦んなって、とまんざらでもない様子で歩いて行く。

「……ばらばらだな……」
「え?」
「全員……ばらばらなのに……何故だろうな、……」
「……楽しい?」
「……そう」

こく、と小さく頷いて、マフラーで顔を隠すように埋める。
もふりと鼻まで隠したその姿に、自然とときめきを感じたが、抱き締めたい気持ちを抑え、貭の手を握った。

「やっぱり、好きだよ、貭!」

会話として、と言うよりは一世一代の告白のような声量で叫び、周囲の視線を独り占め。
常に無表情の貭も、さすがにぎょっとしたらしく、寒さのせいではない顔の火照りにさらに赤みが増した。
視線も気にせず一心に貭を見つめるα。
珍しく動揺した貭は、恐る恐ると言った具合に、とてつもない小声で、「己れも」とだけ、返事をする。

記憶に残らないカップルに、一部始終を目撃した一般人は全員、その場でこの言葉を贈った。
「爆発しろ」。



続く。

Tale padre, tale figlio(無駄親子)

承DIOでミスジョルで無駄親子。
でも承太郎は一言しか出て来ません。
何故か5部なのにDIO様が生きている設定。






「……貴方はどうしてこう、」

ジョルノは溜め息を吐きながら呟いた。


イタリアを裏から支配するギャング、パッショーネ。
その組織の頂点に立つのは、齢二十歳にも満たない、ジョルノ・ジョバァーナという少年だ。
この少年、ギャングスターを志し、先代のボスによる悪政を正し、一年どころか半年も経たないうちにこの座に登り詰めた。
そこに至るまでの詳細はともかく、そう聞くだけで大抵の人間は恐れる。
(諸事情で先代の時からボスとして在籍していたことになっているが、それは置いておく)
更に彼には、生まれながらのカリスマ性があった。
彼がボスだと名乗るや否や、瞬く間に部下の信頼を集め、彼に忠誠を誓う者が後を絶たない――未だに。
今や怖い者無し状態の彼(本人は否定する)なのだが、現在困っていることがある。


書類の山に囲まれて、語気を荒げる。
普段の彼らしくはない。
それもこれも、目の前で肘をついてじっとジョルノを見つめる、巨躯の男のせいだ。

「仕事の邪魔をしないでください」
「邪魔等していないさ。ただ見ているだけだ」

この男が悩みの種、自らを“DIO”と称する“吸血鬼”である。
そして、ジョルノの“父親”。
ここが一番のわだかまりだった。
ジョルノの幼少期は母の放任と義父の虐待で塗れ、とても恵まれた環境ではなかった。
それらしい愛情を受けず、荒んでいた中でとあるギャングを助けたことから今のように黄金の精神を持つに至ったが、もし彼に逢っていなかったら、きっとジョルノはこの世界を愛せなかっただろう。
そもそも、この男が母と結婚してまともに“父親”をやっていれば、ジョルノの幼少期はもっとマシだったはずだ。
―――否、それは無い。

「DIOは、生まれついての悪の化身だ」

ジョルノにDIOを会わせた承太郎がそう言ったのだ。父親を打ち明ける時に使用する言葉ではないが、DIOは一言も否定しなかった。
それどころか、「私は帝王なのだよ」と誇らし気に言って来た。
この人は頭がおかしいんだろうな、と思った。
しかし、その身体に纏う雰囲気……オーラは、ただ者ではないとジョルノに警鐘を鳴らしていた。
十分に警戒するべきだと、このオーラに飲み込まれてはいけない、と。

「その視線が気になるんです。何故僕の仕事場にいるんですか、部屋を与えたでしょう」

成り行きというか、SPW財団との仕事の関係でイタリアに長期滞在することになった承太郎が、「一人にすると町が一つ滅ぶ」と言って、今イタリアで最も勢力があり、SPW財団と協力関係にあることからパッショーネに監視を依頼したために、DIOはここにいる、のだが。
何か不穏な動きがあればすぐ、財団と承太郎に連絡がいく手筈になっているし、昼間の屋外での活動が出来ない(らしい)ので、本部の一部屋を丸ごと“監視部屋”としてだが、自由に使用していいと言ってある。
ところがDIOは、初日からずっとジョルノのいる場所に必ず現れる。
最初は警戒してそのままにしていたが、さすがに気になって仕方が無くなった。

「あの部屋は好かない。窓が大きすぎる」
「カーテンを閉めれば大丈夫だと聞きました」
「日光だけじゃあない。部屋のレイアウトが気に入らない」

この野郎。
思わずサインを書いていたペンを折りそうになる。
なんて我が侭なんだ。王様気分なのか。確かに“帝王”とは名乗ったが。

「ふふ、怒ったかい?」
「怒ってません」

楽し気にくつくつと笑う。
その瞳の奥には笑みなんか宿していなくて、赤いのにどす黒い何かが渦巻いているように思えた。

「なに、私は興味があるんだ。最初に言っただろう、“君のその力を見せて欲しい”と」

そう言って、不気味に、妖艶に微笑む。
出会ったその日に、DIOはジョルノがスタンド使いであることに気付いていた。
スタンド使いは惹かれ合うのだ、それは仕方ない。
「見せて欲しい」と、今と同じように微笑んだ時、ジョルノの背筋には氷が滑っていくかのようなとてつもない悪寒が走った。
―――見せてはいけない。
見せたら最後、きっと、食い尽くされる。身も心も。

「お断りしたでしょう、自分の力を他人に容易く教えるなんて無駄です」
「他人ではないよ。私は君の父親なのだろう?」

ミシ、とペンが悲鳴を上げるほど憎くなる。
この男には自覚も何も無いのだ。
父親なんてまともな奴はいないんだと思って生きて来た。
それでも、この言い草だ。自覚も無いのに父親であると、どの口が言うのか。

「君の部下はどんなに聞いても、一言も教えてくれないのだ。何人かはそもそもまったく知らないようだったが」
「!貴方、僕の部下に……!?」
「おっと、暴力は振るっていないから安心してくれ。二人くらいは手荒になってしまったが、誰にも傷の一つも負わせていないさ」

口角だけを上げて、大丈夫だと囁いた。
何が大丈夫なものか!

「不用意に出歩くなと言ったでしょう!」
「話を聞いた後は丁寧に忘れてもらったから、まだ私を知る者はいないよ」
「僕の部下にそもそも手を出すんじゃない!!」

声を上げてしまったジョルノの様子を、くつりと笑って見つめながら、落ち着き払っている。
自分ばかりが熱くなって、ますます憎たらしい!
早く承太郎さんの仕事が終われば良いのに!

「部屋に戻ってください、今すぐに!」
「おや、怒らせてしまったようだ」
「ふざけるな!!」
「分かったよ、そういきり立つな。すまないな、邪魔をしたようで」

す、と音も無く立ち上がって、悠々と歩み、窓から差し込む光を避けてドアを開き、何ごとも無かったかのように廊下へ消えていった。
ジョルノは数秒、荒い呼吸をし、最後に深呼吸をして、吐き出しながら脱力するように椅子に腰掛ける。
叫び出したい衝動に駆られて、頭を抱えて机に肘を付き、なんとか自分を抑えた。

「……ボス?」

呼ばれた声に顔を上げかけて、その声が自身の片腕であることに気付いて嘆息する。

「ミスタ、すみません……少し放っておいてください」
「……おう」

書類を片手に一言返事をしたミスタは、執務机の前のソファに座る。
普段はうざったいぐらいに馬鹿みたいなこの男だが、こういう人の不穏な空気は的確だった。イタリアの男らしい気遣いが出来るのが、ジョルノには好ましかった。
ぱら、と紙をめくる音だけが部屋に響く。
数分、それ以外は呼吸音しかしない時間が続いた。

「……その書類は、僕のサインで良いですか」
「ん、三ヶ所だ。……大丈夫か」

なんとか胸のざわめき殺して、ミスタに声をかける。
自分は感情が表に出ない方だと思っているが、ミスタに心配されるほど酷い顔をしているようだ。
はぁ、と息を吐き出して、えぇ、まぁ、とだけ答えて書類を受け取る。
内容に目を通しながらサインを記していく。
それをミスタが見ているのを、ジョルノは申し訳なく思った。
これは自分とあの男の問題だ、私情を仕事に挟むわけにはいかない。

「親父さんのことか」

嗚呼、なのに、この人は簡単に踏み込んで来る。
それが鬱陶しくて、その心配が安堵を齎す。
ミスタだけにはDIOのことを話していた。彼には信頼できるだけの要因がある。
なにより、彼とはそう言う関係だから、隠し事をしないようにしていた。

「ここに来る前、この部屋から出て来る親父さんを見た」
「……」
「喧嘩したのか?親父さん、すげぇ顔してたぜ」

………ん?
どこか引っかかりのある言い方だった。
確か、この部屋を出て行くときのDIOは、ジョルノの怒る姿を見て何故か楽し気にしていなかっただろうか。
なのに、ミスタは今、「喧嘩したのか」と言った。

「その……顔って、どんな……?」
「なんつーか、うーん……怒ってるっつーか、気まずそうな顔?俺が来たことにも気付かないぐらいだから相当すげぇ喧嘩でもしたのかと……ジョルノ?」

違う。
そんな、そんな殊勝な。
どうして?自分で怒らせるようなことをしておいて、何故?
父親らしいこともなにも、してこなかったのに、今更!

わなわなと震えるジョルノに、ミスタは嫌な予感を感じ取った。
怒りに震えている訳ではない、今まで余り見たことの無いジョルノの感情表現だ。
どう声をかけようかと迷っていると、先にジョルノが動いた。

「ミスタ、僕は、DIOという男ではなく、別の父親がいました」
「お、おう?」
「今になって父親なんて必要無いんです。母親だって、」
「待てジョルノ、落ち着けお前何言ってんだ」
「今頃帰って来たって、遅いんです……!!」

視界がぼやける。
目頭が、こめかみが熱くなる。
泣きたいんじゃない、ただ今の感情をぶちまけたかった。

「僕は、ミスタ、僕は!……僕は、期待してしまったんです―――――」

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こんな無駄親子ばっかり会話文(ミスジョルフーとDIO)


「ジョジョ?」

「ジョジョです」

「GIOGIO。なるほど」

「ジョジョと呼んで頂いてかまいませんよ」

「いや、ハルノがいい」

「……そうですか。貴方がいいならそれでいいですけど、部下の前で呼ばないでくださいよ」

「何故だ」

「僕は今、ジョルノなので」

「ふむ、そうか。尊重しよう。部下以外の前なら良いわけだな」

「えぇ、まぁ……」

「……あの毒虫は部下か?」

「どくむっ……え、誰ですか」

「猛毒のスタンドだ。パープルヘイズ、と言ったか」

「スタンドで人のこと覚えてるんですかパードレは。ていうか毒虫って酷いですよ」

「そうだな。ハルノの部下の言葉を借りれば、“猛毒牛乳”の方がいいか」

「悪化してます!誰ですかそんなことをいうのは」

「スタンドも持っていないカスの戯れ言よ。気にするな」

「問題です、同僚の悪口を他人に聞こえるように言うのは悪質ですよ」

「うむ、それはそうかもなぁ」

「処罰を考えます」

「罰する程のことか?」

「けじめはつけるべきです」

「そこまでしなくてもいい」

「ずいぶん肩を持ちますね……」

「そうじゃあない。“もういないから必要ない”ということだ」

「え?」

「おっと、勘違いするんじゃないぞ。私は手を下していない」

「え、あ、そ、そうですか」

「“猛毒牛乳”が片付けていたのを見た」

「フーゴ!フーゴはいますか!」

「昨日からローマじゃあなかったか?」

「あぁもう!」

「ふふ、焦るハルノも良い」

「面白がらないで止めてくださいよ!」

「その顔が見たかったのでなぁ」

「意地の悪い人だ!」

「生憎、人ではないのだ」

「〜〜〜〜ミスタ!」

「……やだ」

「やだってなんですか」

「いやだよ!何だよ今の会話!フーゴ連れてこいってのか!」

「そうです!」

「落ち着けボス!親父さんに煽られてんじゃねぇ!つーか、親父さんの膝の上でそんな話してんじゃねぇ!いや、まず親父さんの膝に乗るなよ!」

「それはいいじゃないですか」

「それはよかろう」

「日本人とイギリス人意味わかんねぇ!」

「語弊がありますミスタ。全ての日本人がこうじゃありません」

「全てのイギリス人に謝罪しろワキガ」

「やべぇ親父さん怒った」(小声)

「怒ってなどいないぞワキガ」

「パードレが怒ったらミスタは今この世から消えています」

「いつも思うけど仲がいいのか悪いのかわからねぇ……」

「仲良しこよし出来る程も、親子やっていません」

「そうだな。ハルノがボスになってからだからなぁ。さほど仲良しではあるまい」

「ハルノって呼ばないでください!」

「あぁ、そうか。ワキガはお前の部下だった」

「モウヤメテクダサイ」

「それよりフーゴです。今日の夜には帰ってくる予定でしたから、すぐに本部へ呼び寄せないと」

「つかよォ、俺にはフーゴが部下に手をくだしたってのがそもそも怪しいんだけど……」

「ですが、パードレが見ています」

「お前のその親父さんへの信頼感何なの?」

「信頼してません、この人吸血鬼ですよ」

「(うん、この話はやめよう)」

「ハル……ジョルノ。また誤解しているようだぞ」

「は?」

「私は“片付けた”とは言ったが、殺したとも手を下したとも言っていない」

「……パードレ……貴方って……」

「猛毒牛乳直々に制裁を与えて組織を辞めさせたらしいぞ。私が見たのは、制裁を与えている所だった」

「……もういいですパードレ……」

「ふふ、見上げた男だなあの牛乳!」

「もう意味が分からない……」

「(俺は最初から意味が分からないぞジョルノ)」





(回想。)

フーゴ?あぁ、パニーな。
あいつ、ボスと一悶着あったらしいじゃん。
信用できねぇっつーか、スタンドもキモイらしいしな。
猛毒カプセル?マジウケるわー、牛乳みたいな名前でさー。

「(ハルノの部下か。やれやれ、どの時代でもああいう輩はいるのだな)」

ボスもなんであんなのを……

「(……随分と飛躍するな……今の話のどこにハルノの非があった?これ以上言うのであれば、このDIOが殺して……おや)」

え、あ、ふ、フーゴさん

「(あれは……ふむ、あれが猛毒の……牛乳?だったか?)」

違います、あの、

「(……キレているな。あの男、普段は静かな物腰でいながら、腹の中にはあんな顔を隠していたのか)」

ひぃ!ぐげっ

「(あ。
……スタンドを使わなかった所を見るに、まだ甘いな。あんなカスは拳ではなく自身の力を知らしめるべく、叩き潰してやれば良いのだ)」

「あ」

「(む。気付いたか。この私に気付くとは面白い)
君は、ハルノの部下だね?」

「貴方は、……ボスの」

「気にしないでくれ、偶然通りかかってね。うっかり一部始終を見てしまった」

「あの、いえ……その、このことは、」

「おや、いいのかい?報告をしなくて」

「……僕の部下です。僕がけじめをつけないといけなかった。そもそも、あんなことを言わせるようなことがあったことが、ボスに伝わることがないようにしたいんです」

「……君はハルノのことが好きなようだね」

「え、」

「勿論ボスとしてさ。聞いたよ、君のここに至るまでの話を……先代のボスを裏切らなかったことを」

「っ、」

「だがね。ハルノはそういう隠し事は好まない、なによりすぐに気付く。ハルノは聡い子だから。
私はこの件をハルノに伝えるつもりでいる。ただし、一部分だけ隠して」

「一部分……?」

「君がそいつにブチ切れたのは、ハルノの陰口を聞いたからじゃないか?」

「……」

「君が知られたくないのは、ハルノの陰口が存在することだ。だから私は、“君が自分の悪口を言われたから部下を制裁していた”とだけ伝えよう。嘘にはならないだろう?
そうだな……君、しばらくどこかに出張したりしないのかい?」

「あ、えぇと、三日後にローマに……一日だけですが」

「ンン、それだな。そこで私がそれとなく伝えておこう。きっとハルノは君を呼び寄せようとするだろうね、説明しろと言って。
私が宥めておくから、君は帰って来てから、好きなようにゆっくり報告すると良い」

「……ありがとう、ございます……」

「……“何故この人は僕の肩を持つだろう?”かな?」

「う、」

「君は中々面白いスタンドを持っているだろう?その……」

「ぱ、……パープルヘイズです」

「そう、それだ。興味がある。私にその力を見せてくれると嬉しいのだが」

「……!!」

「その見返りと思ってくれたまえよ。ふふ、楽しみにしている……パンナコッタ・フーゴ」

(回想終了。)







(数時間後。)

「……そうですか。僕の陰口ですか」

「すみません、その……頭に血が上ってしまって……」

「君の論理感を否定はしないが、理由が理由だ。言っておくけれど、その陰口を言わせた原因は君じゃない、極端に言えば僕だ」

「そんな、」

「僕はそういう隠し事を好まない。自身に指摘されたことは反論も否定もするし、受け入れるし肯定だってする。だからフーゴ、なんでも殴ったりフォークで刺したりしないように」

「……フォークの件は忘れてください」

「冗談だよ。……DIOが見ていたそうですよ」

「!」

「仕事中に報告を受けました。貴方が鉄拳制裁をしていたと」

「…………」

「スタンドをただの人間に使わなかったので良しとしましょう。
……知ってます?あの人、“焦る顔が見たかった”からって僕で遊ぶんですよ」

「え、あ、あ、はぁ(そういう人だったのか……)」

「おかげで、僕は今日一日仕事をする気が無くなって、必要な書類だけ片付けて引っ込むことになりましたよ」

「……もしかして、」

「?」

「ジョジョ、最近寝不足だったんじゃあ」

「寝不足……まぁ、十分な睡眠を取っていたとは言えませんが。何故です?」

「DIO様は、ジョジョを休ませたかったんじゃないかと思って……」

「………………」

「…………………………」

「無いです」

「無いですか」

「あの人がそんな殊勝な気遣いをする訳がありません」

「バッサリですね」

「そんなわけがない、だって、いや……そう言えば久々にベッドの上で仮眠をとって起きたらすぐ傍であの人、彫刻の本を読んでいた……まさかずっといたのか……!?」

「え」

「はっ」

「…………愛されてるんだな、ジョルノ」

「あ、いや、いや、……あぁもう、今日は散々だ……!」









(全部がジョルノを休ませる為の布石?)

(いやいやそんな、そんなわけないだろ!)








++++++++++++++++++++++++++

ジョルノ大好きDIO様。でも表には出さない。本当のDIO様はこんな気遣いできないししない。

フーゴ「隠したかったけどボスのお父さんに隠し事はしない方が良いって言われたから報告することにしました」
ジョルノ「ホントあの人は僕で遊ぶのが好きだな、いいですけどね!」
DIO「パープルヘイズもジョルノの焦る顔も見たかったし、寝不足で顔色が冴えないジョルノをベッドに放り込みたかったから全部やった」
パードレの一人勝ちです。

公式が出るまでは「貴方」呼びにしておきます。
公式が「あんた」になったら直すです。

ジョジョ会話文(ミスジョルとフーゴ)



ミスジョル前提で恥パの後のフーゴとジョルノ。
敬語じゃないジョルノに違和感。




「…………」

「……ジョジョ?」

「……あ、はい。なんですか、フーゴ」

「何か悩んでますか?」

「……そう見えましたか?」

「すごい顔でしたよ」

「うーん……そう、そうだな。僕は悩んでるのか」

「十五分程同じ顔をしていました」

「そんなに?書類を片付けていただけだったんだけど……そうだな。フーゴ、解決策を考えてもらえますか?」

「えぇ、ぼくで良ければ。何で悩んでいたんです?」

「先日、フーゴがシーラ・Eと出張していた間に解散させた組織があるんです」

「解散?壊滅ではなく?」

「構成員のほとんどが幹部に脅迫されて所属していただけだったので」

「なるほど」

「どうやらその幹部が水面下で動いているようなんです。面倒なスタンド使いで、解散させるときも、ほぼ逃げられたようなものでしたし、少々厄介なことになっています。……この写真の、中央の男がそのスタンド使いです。アメリカ人で……」

「……貴方が一言、命じれば良いのでは?シーラやムーロロや、貴方の部下は喜び勇んで叩き潰すでしょう」

「わざとですかフーゴ。僕はそういう……」

「失礼しました、分かっていますよ。だからこそ、その幹部の扱いに困っているわけでもないでしょう?」

「……そうなんです。僕が困っているのは、そいつをどうやって、」

「公開処刑するか?」

「……フーゴ」

「直接的過ぎましたね。すみません、ボス」

「なんというか、不敵になったね、君は」

「おや、折角昔のように話してくれたのにな。勿体ないよ“ジョルノ”」

「頭の回転の良い人は苦手だ」

「ボスにそう言って頂けるとは、光栄ですね」

「……公開処刑なんて仰々しいことをするつもりはない」

「…………」

「もっと言うなら、見せしめ、か。そういうつもりはないが、決してそうならないように動くつもりも無い。“それを上手くやってくれる”的確な人物を誰にするか、悩んでいた」

「……その話、ミスタにも?」

「いや、フーゴが初めてだ。あの人はそういうのに向かないから」

「スタンドが?性格が?」

「両方かな。恋人にするなら悪くはないんだが……」

「惚気は聞きませんよ。
難しいですね。とにかく探してみましょう、パッショーネの人材にはそういうのが得意な者もいるでしょう」

「惚気たつもりはないけど……よろしく。……あぁ、そうだ」

「?」

「“犬の餌がリストランテにあります”」

「…………かしこまりました、ボス」







「ふぅん。で、二日後の今日の朝、“犬は召された”わけ」

「ミスタ……執務室でチョコラータを食べないでくださいと言ってるでしょう」

「休日に執務室にいるお前が悪い」

「答えになってません。……まぁなんにせよ、懸念が減りました」

「お前も人が悪いぜ、今に始まったことじゃねぇけど」

「なにがですか」

「けしかけたのはお前だぜ、ボス。最初っからフーゴに任せるつもりだったんじゃねぇか」

「誤解ですよ。僕は“上手くやってくれる人材はいませんか”と尋ねただけです。組織にいた時間が僕より長く、かつ組織を知る彼だからこそ訊いたんです」

「それだよそれ!“ジョルノ様のご命令”なら、親衛隊の奴らみーんな飛びつくぜ!」

「フーゴは親衛隊じゃあありません」

「今は、な。ったく、増々カリスマ性に磨きがかかりましたねぇ、ボス」

「“父”に似たなら誉れですね」

「どっちに似たんだ……」

「何か?」

「イイエーナンデモゴザイマセンー」

「また忙しくなりますよ、ミスタ。今日はその準備の為の、最後のvacanzeです」

「へいへい」

「今日だけ、です。そのチョコラータも、……bacioも」

「寂しいこと言いなさんな!暇があればいつでもするぜ?」

「それどころじゃなくなるから言ってるんです。僕に言わせる気ですか、」

「baciam」

「……ずるい人も苦手ですよ」

「ti amo!」







+++++++++++++++++++
犬=裏切り者。
英語では「dog」です。イタリアの話だけど、アメリカ人にしたからいいよね?っていう。
父=DIO様とジョナサン。
個人的にはDIO様のこと嫌いじゃないジョルノが好きなので、どちらに似ても嬉しいジョルノにしました。
ASBで「あんた」呼びするという話を聞いてから、ちょっとそっけないけどパードレって言いたい素直じゃない系ボスになりそうです。
そのうちDIO様とジョルノの話も書きたい。

都会へ行こう!1(66666hitリク)


朝6時。

「おっす!おはよーさん六!」

月は一月中旬、寒さが長いピークに突入した頃。
まだ薄暗いバス停で待つ六に、朗らかな声がかかった。

「おはよう、兄上」
「セーフだよなっ」
「ギリギリだなおにーさん」

六の後ろからひょこ、と顔を出したMZDに、九はこれ以上無い程顔をしかめた。
いつもの着流し姿とは違って、レザージャケットに緑のインナー、ジーンズ、ボディバッグという組み合わせだ。
MZDは紺のダウンに青い短パン、濃紺のオーバーニーソックスという出で立ちだった。

「今日四番目に見た顔がテメェということに嫌悪感だ」
「なんだその序列!」
「黒、お隣さん、六、テメェだこの野郎!」
「俺様だってお前が四番目だばーか!六、あーちゃん、ちーちゃん、お前だ!」
「あんだとぉ!?だいたいテメェ、なんだその寒々しい恰好は!」
「寒くないですー永遠の子供なんで風の子なんですぅー!」
「何の喧嘩だよ」

呆れた声を出したのは、いつものように全身真っ黒の黒神。
ただし、猫耳帽子にはいつもはついていない缶バッジが三つついているし、材質の系とはきらきらと光っている。
気持ちが高ぶっているのか、いつものむすっとしたそれより、だいぶ顔色が良い。
こんな黒神はそうそう見ることは無いので、六は進んで声をかけた。

「おはようさん、黒神。朝から悪いな」
「今日突っかかってんのは九だからな、こっちが悪ぃよ。ただし本体はボコリたい」

いつもの黒神で安心した六である。

「おはよークロー!」

溌剌とした声が聞こえた瞬間、黒神の表情が、九のしかめっ面よりも渋い顔に変化した。
この反応もいつもの黒神で、六は更に安心した。

「うるせぇのがきた」
「うるせぇってなにさ!」

ぷんすこ!と朝からテンションの高いαは、白いシャツに空色のマフラー、捲った袖と襟元から覗く黒いインナー、白に黒いラインの入ったパンツという、白を基調としたスタイル。
少しマフラーがアンバランスなのは、話の輪から一歩引いている貭の首にも同じマフラーがアンバランスに巻かれているのを見れば、その理由が分かるだろう。
そんな貭の服装は、和と中を混ぜたような着物で、目立たないながらもひっそりと麒麟の刺繍が施された、見るからに高級そのものだ。
提供は勿論αだし、貭はそれを自然に着こなしているし、末恐ろしいカップルである。

「……朝から、元気だな……」
「そうですね。……でも、兄様も、いつもより、楽しそうです」

でしょう?と六が優しく微笑めば、少し驚いたように目を見開いた貭は、数秒してから、顔を伏せるように小さく頷いた。

――ぎゃいぎゃいと、六と貭以外が騒いでいる中、バス停にバスがやって来た。
気付いた六がMZD頭と九の脇を殴り、貭が黒神とαの間に入る。

「痛い!」
「痛くした。バスが来たから乗るぞ」
「びゃ!びっくりした貭っ!」
「……ますが、来た」
「バスだろ」

黒神がさっさと乗り始め、追うようにαと貭が乗り、喧嘩しながら六に引っ張られて九とMZDが乗り。
全員の乗車と着座を確認した運転手が、ゆるやかにバスを発進させ。
六人の小さな短い旅が、始まる。


都会へ行こう!




まず、この旅の発端は、驚くなかれ貭である。
ただし、他の四人に通知と企画をしたのはαだ。
「旅がしたい」と一言、それが全ての始まり。
長い間一人で放浪と戦いをし続けた貭である、αとのようやくの人生の平穏に、まさかそんな言葉を発するとは、αは思いもしなかった。
訊けば、「旅行、と言った方が正しい」らしく、「大勢で、例えば九や六たちと、行ったことの無い場所へ行ってみたい」と。
貭の新たな一面に歓喜したαは、即、旅行雑誌を取り寄せたり四人の家に電話をかけたり貭を愛したり日取りを決めたりと慌ただしく動き、ついにこの日に開催となったわけだ。

「目指すは都会です!」
「都会ぃ?」
「そう!今現在俺サマと貭は人里離れた山奥に住んでおります!普段目にしない、というか貭があまり知らない世界を!皆さんと観光したい訳です!」

四人を集めて最終的な計画発表をした時、αの(貭に対する)情熱的な演説に、四人共々、「あぁ、やっぱりなぁ」と感想を漏らした。
彼が本気になって動くのは、いつだって貭のことなのだ。
勿論貭に関係のない仕事も、真面目にはやるのだが。

「計画はだいたいこちらで決めます!しかし皆様お忙しい、お仕事とかありますしね!一応日取りは連休の一日目、日帰りの予定です。翌日にしっかりお休みできるよう、考慮いたしました。本当は一泊したいところですが、一月も忙しいですからね」

言いながらプリントを配り、全員が目を通す。
反対の声が無いことに、αはほっと胸を撫で下ろした。
事実、旅好きの六と旅行好きの九と、相方がいればどこでも行ける二柱なので、問題ないのだ。

「楽しみじゃねぇか。俺は賛成だば」
「もち行くとも!六ちゃんの行くところ俺様あり!」
「珍しく連休一日目は仕事が休みなんだ。喜んで行かせてくれ」
「九が行くなら行く」

肯定を得られたαは、ぱぁっ、という音が聞こえそうな程破顔し、隣に座っていた貭の手を取り、「やったよ貭!大成功だよー!」と歓喜する。
貭の頬がほんの少し染まったように見えたとは、後の黒神の談。

「そ、それじゃあ、それじゃあ、また詳しいことが決まったら連絡します!ぜ、絶対来て下さいね!ドタキャンは貭からお仕置きです!」
「うん、シャレにならんからそれはやめてくれ」

お仕置きという名の拷問に、全員が身震いしたのが、一ヶ月半程前。



――バス車内は、一瞬ざわつき、次の瞬間で緊張感のある静寂へと変わった。
その空気に気付いたのは、黒神ただ一人である。

「8A、8A……あ、クロ、そこの席が俺サマたちのとこだよ」
「ん」
「意外と広いんだな。オレ、バスで旅行すんの初めてなんだ」
「俺もだば」
「……ある、ここ……」
「ありがとー貭!」

各々喋りながらの着席に、周囲の視線を感じた黒神は、瞬時にその理由を察した。
九が馬鹿でかいからではない(いや、それも理由かもしれない)し、うるさいからでもない。

「……イケメン六人だな」
「ん?なんだ黒」

目敏く独り言を聞きつけた九に、「なんでもない」と返して、席にふんぞり返った。
ちゃんと座れ、という九の言葉を半ば無視して、乗客を観察してみる。
自分も含め、この六人は、それはもうイケメンの部類に入る。決して思い上がりではない。
認めたくないが、この世界の神の分身である自分と貧弱金髪ヘタレ野郎は、当然イケメン。
侍三兄弟も、十人中八人は一目惚れするだろうイケメン(それぞれジャンルは違うから人を選ぶ)。
六人いれば、こうなる。
普段のポプパでこの現象が起きないのは、あそこに集まるのが、全員芸能人やその筋のプロばかりだからだ。

「なんか静かだな。朝だし、静かにしておいた方が良いよな」

こそ、と小声で耳打ちして来た隣の高身長浅黒垂れ目イケメンの顔を凝視した。
通路側に座った自分の視界の隅に、こちらを覗き込む人間の姿が映る。
ふふ、と微笑って、返事をするように、九の声よりもっと小さな声で、そっと耳打ちした。

「……お前、イケメンだよ」
「は?」

―――何故だか、誇らしくなった。



続く。




佐東様リクエスト、「神六と黒九とα貭の三組のイラスト、あるいは三組の小説」です。
リクエスト頂いたの去年です……もうすぐ一年経ってしまうじゃないか……。
遅くなって申し訳ないです、しかもシリーズにしてしまいましたorz
完結までもう少々だけおつき合いくださいませ……!

ちなみに要約すると東京への日帰り旅行ですてへぺろ!


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