※芸能人パロで小政お忍びデート in 某夢の国
※準備とかは無しでもういる体です
ここまで広いと、いっそ国として独立するべきじゃないか。
国って言ったって、王とか大統領とか、それから資産も無いとな。
あのネズミが次代のリーダーで、資産はもう十分あると思う。
もっと必要なものがあるだろうが……できないことも、ないか。
そんな会話をしながらゲートを入って、土産屋の前を通り、火山の見える開けた海に出る。
これだけでけっこう感動する物だ。
最後に来た数年前より、アトラクションが増えて、より壮観に見える。
「すげぇよ小十郎っ」
「あぁ。―――名前」
「あ、sorry」
来て早々に口を滑らせて、慌てて口を塞ぐ。今更遅いが。
俺、政宗は、アイドル俳優だ。
今はまだアイドルの方が強いが、いずれ俳優になるべく、演技の猛練習中。
で、隣で苦笑してる、その顔すら渋くてかっこいい、サングラスをかけた強面が、俺の憧れの俳優であり、恋人の小十郎。
お気付きかとは思うが、今日はデートだ。
しかも、お忍びで、男二人、遊園地。
先に断っておくが、誘って来たのは小十郎だ。
本人がうっかりというか天然で、「猿飛が恋人なら恋人らしく休みの日にこういうところへ行けと言ってな」と暴露しながら、譲られたチケット二枚を提示して来た。
佐助面白がってやがるとか、それは言わないで自分が提案したことにするもんじゃないのかとか、何で男二人、しかも片方は三十過ぎのおっさんが遊園地なんだとか。
色々ツッコミはしたかったが、ちょっと期待の眼差しを向けてる小十郎にそんなこと言えなくて、OKした。
まぁ、俺も行きたかったし、いいよな。
「平日なのに、随分賑わってるな」
「今ハロウィンだからな」
「ハロウィンだと賑わうのか?」
「海の方はそんなにハロウィンやらないけど、国の方はこんなもんじゃないぜ」
やけに詳しいな、と真面目に感心される。
久々のデートだからって、力入れて下調べしたのがバレるのは恥ずかしいので、まぁな、とだけ答えた。
そうか、と何故か小十郎が満足そうに言って、じゃあまずどうする、と尋ねられる。
「まずあの火山!の、パスを取る」
「ぱす?」
「そ。パスを取っておいて、指定の時間に行けばあんまり待たずに乗れるんだぜ」
数年前には、知らなかったお陰で散々な結果だった。
下調べはするもんだな。
「早速GOだぜこっ……景綱さん!」
「急いだ方がいいのか、藤次郎」
「少し急いでくれたら嬉しい!」
言い忘れたが、約束として、お互いの役名の、名前と通称で、今日一日過ごすことになった。
他にも、偽名でもなるべく名前は呼ばないこと。
お互い声でバレるかもしれないから、頻繁に大声を出さないこと。
バレても、騒ぎを起こさないようにすること。
以上を守れば、俺は小十郎との楽しいデートが出来る。
お互いに忙しくて(一応二人とも、今をときめく芸能人だ)、中々恋人らしい事も出来ない。
ここでぶち壊される訳にはいかない。
俳優目指してるこの俺の演技力が試されているのだ。
ならば、演じきってみせる!
が。
「迷子早ぇ……」
小十郎が、だ。
パスを取りに行って、並んで、時間がかかるといけないから、「その辺で待っててくれ」と小十郎を列から外した。
五分程でパスをゲットし、近くのベンチを探したが、いない。
周辺を探しても、遠くにいても視認出来る強面はいなかった。
この場合、俺が迷子なのではない、よな?
というか、すぐ近くにベンチがあるのに、どうして迷子になれるんだ。
天然で鈍感な小十郎だが、そこまでドジッ子だとは思わなかった――思いたくない。
「どうすんだよ……火山はあと一時間三十分以上あるからいいとして、……つーかそれより、合流出来んのか……」
ここは夢の国。迷子放送なんて、無い。
あったとしても、園内に聞こえるはずが無い。
「迷子になったらじっとしてろ、……って意味ねぇし……」
頭を抱えた俺は、軽いパニックを起こしながら、とりあえず火山付近を捜索することにした。
待っていてもきっと会えない。
会えたとしても待ってるだけじゃ時間の無駄だ。
なら、探して捜して再会するしかねぇ!
「Let's party……!」
決して騒がず大声を出さず、俺は「伊達政宗」となる。