「これから、あっちの世界に行く」ってそう言ったあの人に興味をもったのは何故なのかしら。
きっと特に理由なんてないんだわ。
でも強いていうなら見てみたかったのかも知れない。
他人があっちの世界に行く瞬間というものを。

ですから追いかけたのです。
ロープで大きなわっかを用意してるときも。
魔法の薬をばら蒔くそのときさえも。
あの人は嫌がったけれど、わたしの見えないとこで勝手に行かれたくなくて。
そのせいなのか。
あの人はあっちの世界に行くのを止めちゃった。
ぶーたれた愚痴や相談を聞いてしまったのがそもそもの間違いか。
あぁなんてつまらないのでしょう。

美味しそうにココアを啜る頭を小突いてやりたい気持ちは拭えないけれど、その笑顔に免じて止めておきましょう。
因みにあっちの世界に行く瞬間を見せてくれるひとは随時募集中である