「………ねぇってば…。
………もう…そんなに拗ねないでよ…」
ボクが何を言っても、ラルはむすっ、とした表情のまま、頬杖をついてボクと瞳を合わさない様にしていて。
………やっと返事を返してくれた、と思うと、拗ねた様な声でこう呟いた。
「………ミキのそう言う所、キライ。
ユキとかナギアとかより………ずっとオレをガキ扱いするんだよね」
「………それは…キミが由希や凪亜ちゃんには言わない様な子どもっぽい冗談、ボクに言うからでしょ」
「………ジョーダン、ね」
「そうだよ。
だって、さっきだって」
………途端。
カタン、と言う、ラルが席を立つ音が聞こえたと思うと…ラルが再び、ボクへと抱き着いてきて。
それから、首に手を回されたと思うと………下から伸び上がってきた彼の唇がボクのソレへと触れ、ちゅぅ、と吸い上げられた。
微かに、その唇から感じた甘いココアの味と、不敵な笑み。
………そう。それは、本当に一瞬の出来事だった。
「………何するの」
「何ってジョーダンだよ?オニイチャン。
どうせオレ、まだガキだもん」
「……ふーん…『未希』じゃなくて『お兄ちゃん』、か…。
拗ねてるんじゃなくて、怒ってるんだね。
…………でも、どっちかって言うと……今怒りたいのはボクの方なんだけどな」
「………あぁ。『正当防衛』、だっけ?
別に良いよ、好きなだけ刺しても。
オニイチャンに殺されるなら本望だよ、オレ?」
………もう本当に刺しちゃおうかな、この仔…。
思わずそんな考えが頭に過ぎる程、不遜かつ生意気な態度で
相手はボクの首に回した手をそのままに、楽し気に唇を舐めて。
………ボクは正直、少しだけ悔しくて………相手の顔をじっと見ながら、相手に一矢報いる方法を考えていた。
……多分…反撃の方法を普段と変えてみないと、本気で機嫌を悪くしたラルには効果がなさそう、だよね…。
「ねぇ、聞いてる?
大体、アンタが悪いんじゃん。人の事、ガキだとしか思ってなくて」
…じゃあ、これはどうかな。
ぐい、とラルの顎を持ち上げて
さっきラルがボクへした様に、彼の唇にボクの唇で触れてみた。
………唇を離すと、一番最初に見えたのはナマイキな彼の、珍しく驚いた様な表情。
「……何………今、アンタっ…」
「……『何って冗談、だよ?』」
……って言うよりは、仕返しって言う表現の方が正しい気がするけど。
腹を立てた事を悟られる事は何だか余計に癪に触る気がしたから、わざと笑顔で先程彼が言った台詞を呟いてみた。
「冗談って……ちょっとミキ…!!!!」
「たっだいまー。
はぁー、今日もよく働いたわっ」
「………あ。姉さん帰ってきた」
「待ってよミキっ……」
「はいはい。もう冗談はおしまい。
姉さん、疲れてるみたいだし………紅茶でも煎れてあげて?
アールグレイのミルク、お砂糖は2つね」
「いやいやいや、自分から爆弾投下しといて何なの、その言い草っ!!!!」
「未希ー?何騒いで………
…って…あら?未希に………ラルじゃない。
珍しいわね。未希のお手伝い?」
「お帰り、姉さん」
とりあえず、煩いラルの言葉は完全無視。
にっこり姉さんに微笑んで、次は姉さんの頬にキスをすると
…………ラルはぽかんと口を開き、ボクと姉さんを見ていた。
「あら、どうしたの突然?
……ふふっ。まぁ良いわ。ただいま、未希」
姉さんがそう笑うとすぐに、柔らかい香水の香りと、頬への柔らかい唇の感触を感じた。
それから「お風呂、入ってくるわねー」なんてひらひら手を振ってキッチンを出ていく姉さんを見送り……再びラルへと振り向くと、唖然とした様な表情のままのラルと瞳があって。
またにっこり笑って、こう囁いた。
「確かに男兄弟で、しかも唇へのキスの挨拶、は少し特殊だよね。下手したら特別なキス、と勘違いしちゃうかも。
………姉さんとはよくキスの挨拶してたから、ボクはそこまで深く考えないけど」
「………挨……拶………」
「………まさか、忘れてる訳じゃないでしょう?
父さんと母さんが離婚するまでは、ずっと一緒にイギリスに住んでたんだよ?ボク等。
その上母さんと住んでたラルと違って、少し前まではイギリス人の父さんと住んでた訳だし。
………要するにね。ボク等にだって、多少はイギリスの文化が身についてる、って事だよ。
………普段は日本で生活する上で必要がないから、普通にしてるけど」
「…………」
………ボクの言葉に少しだけ、肩を落としてみせたラルは、そりゃあ可哀相にも見えるけど。
でもね。ボクだってキミの親代わりをやっていく上での立場やプライドもあるし
駆け引き勝負で、本当にキミに負けてしまう訳にはいかないんだ。
………だから。
君の冗談には振り回されてはあげないし
もし仮に君が本気だとしても、やっぱり揺らいでなんかあげない。
………ねぇ、だから。
いつまでも『可愛いボクの弟』、でいてね?
大好きな、大好きなキミのままでいたいから。
*…*…*…*
なんか思ったより長くなった。←
ラルが襲い受け、未希が鈍感攻めで
ヘタレないでよ!コースに見えなくもないのが残念な所。←
実際はラルがショタ攻め、未希が腹黒受けです。←
日常の1コマ的な。
ショタ攻めマンセーッッ(`・ω・´)
もっとダラダラ書かない様に努力しなきゃな…ッッ(´・ω・`)