────お城からの招待状は
ハートのトランプ─────
「「………トランプ?」」
封筒の中から出てきたのは
手紙ではなく、ハートのエースのトランプ。
「………一番最初の 扉がスペードで………次がダイヤの扉。それに、クローバーの封蝋に、ハートのトランプか…」
「ねぇ、浩平!これ、全部夢の仕業なのかな?」
「…違うね。だって、これが『夢』の仕業なら、最初に俺達を此処に連れてきた時のように姿を現せば良い話だよ。
わざわざこんな見つかりにくい所に手紙を置く必要がないだろ?
それに………今までの、道のり。
気付かなかった?本棚にあった本と同じだよ。
『一番目アリス』に『二番目アリス』…………だとしたら、これは『三番目アリス』の女王の手紙だ。
………進もう。アリス候補者は此処を通った事になる。………つまり、その先に………夢がいる可能性が高い」
「そっか…
うん!早く夢を見つけなきゃ」
「「夢の望むアリスになる為に!!」」
僕等は
お茶会の席を立ち
もう一度、手を繋いで歩き出した。
*…*…*…*
暫く歩くと、僕と浩平は『クローバー』の模様の描かれた扉を見つけた。
そこを抜けると………大きな大きなお城。
浩平は……『3番目のアリスがいる筈だから、お城に行こう』って言った。
…でも
でも………
「………ハートの、扉と…」
「…………」
お城のすぐ隣には
招待状と同じ、ハートマークの描かれた扉。
それと
それと…
「〜〜の小道を辿ったり♪
薔薇の木の下でお茶会♪
お城からの招待状は♪
は・あ・と・のトランプ♪」
………『夢』だ。
「………あっ!!
アリスです!!思ったより早かったのですっ」
にやり。
そんな言葉の似合う笑みで微笑むと、彼は僕等の元まで走ってきて。
そうして…こう呟いた。
「僕の望んでいたアリスは………『僕』を………例え夢が醒めたとしてもも、夢を忘れない人。
ボクの言う『アリス』に気付いてくれたですね?
嬉しいですっ。おめでとうございます、あなた達こそアリスにふさわしいですっ。
ただ…」
………にやり。
次は、その笑みに嫌な予感を覚えた。
………そう。歓迎、と言うにはあまりにも歪な笑みで
………まるで
狂気を含んだような。
「あなた達は、お互いがいればそれで良い様に見えますです。
きっと………あなた達は夢が醒めて二人で過ごす内に、ボクの事を忘れてしまう。ボクを忘れた人間と同じ、です。
それじゃあダメです、それじゃあアリスとは言えないです。
だから………ボクは、あなた達のどちらかだけをアリスにしよう、と思うです」
……何、それ。
相変わらずにやり、にやりと笑みながら、平然と呟いた『夢』に
僕は恐怖から浩平の手をぎゅ、と握った。
それは浩平も同じみたいで………繋いだ手は、同じくらいに強く握り返された。
「アリスになれなかった方は………そうですね。ずっと夢の中でさまよって貰うです。
………3番目のアリスと、同じ様に」
………つまり
どちらかは夢で
どちらかはアリスとして。
どちらかを犠牲にして、僕等は離れ離れに生きなくてはならない、って事…?
「「……あははっ」」
………こんな時まで浩平と声が揃うなんて、少し驚いたけど。
でも、浩平も笑っていると言う事は………どうやら考えた事は同じ。
だって、どちらか1人だけ、だよ?
くだらない、くだらない、馬鹿げてる。
そうだ、馬鹿げてるよ。
だって
僕等は、2人で一つだから。
「…ねぇ、浩平?」
「うん、洋平。
それなら…」
「僕達は」
「俺達は」
「「どっちもアリスには、ならないよ」」
「…………本気で言ってる、ですか…?」
怒った様な夢の表情。
そんな夢の表情を笑いながら僕達を見つめて
僕等は、手を繋いで頭に浮かんだ『歌』を歌い始めた。
「森の小道を辿ったり」
「薔薇の木の下でお茶会」
「お城からの招待状は」
「ハートの」
「「トランプ」」
「四番目アリスは双子の仔」
「好奇心から不思議の国」
「色んな扉をくぐり抜けて」
「ついさっき、やってきたばかり」
「気の強い兄と」
「賢い弟」
「「一番アリスに近かったけど…」」
「二人の夢は」
「醒めないまま」
「「不思議の国をさまよった」」
────予感がした。
きっとこの歌詞は、僕等が見つけたあの絵本の…新しい1ページになったんだ。
僕等は、きっともう戻れない。
それでも、良いんだ。
だって僕等は
『二人一緒なら』アリスになっても良いと思っただけ。
だから、二人一緒じゃないなら
例え悪夢だけが待ち受けているとしても
アリスになるよりもその方が余程マシなんだ。
さぁ、これからも…
2人で、不思議の国をさまよっていこう。
それが僕等が自ら選んだ結末、なんだから。
─四番目アリス 完
*…*…*…*
四番目アリスのサブタイトルは『キズナ』。
意味不明度が高くなってしまった…(汗)
ユニットの性格がリンレンに(特に洋平がリンに)似てなかったら、庭球で人柱アリスパロだなんて無茶は絶対しなかったと思う。←
案の定、一番目アリスを書く前に四番目を完成させてしまったと言う…(汗)
次は二番目不二子を真面目に書いていこうかな。←