わずかな音と土煙を残して
二匹のひつじが歩いていく
はるかに遠い目的地
けれど、確実に近づいている
一歩一歩 踏み出して
迷わずに向かっていこう
なのに、一匹のひつじは立ち止まった
そのひつじは傍らの仲間に囁く
「ちょっと疲れたんだ」
だからボクに立ち止まれとでも言うの?
「そんなに頑張らなくてもいいじゃないか」
それでもボクは行くよ
立ち止まるわけにはいかないから
まっすぐに向かう場所があるから
ボクにはボクの行くべき道がある
だから、歩幅を合わせて遅らせることなんてできないよ
道が違えてしまう時があるなら
ボクはボクの道を進むよ
それはボクだけのものだから
立ち止まるひつじと、前を進んでいくひつじ
ひつじは一匹になっても進んでいく
ずっとずっと、まっすぐに
迷うことなく、前を見据えて
果てのない空と、いつまでも続く道
ひつじのもとに届く風は心地よい便り
それらを抱いて
希望を抱いて
ひつじは目的地へと進んでいく――
+++
時には水のみ場や匂いのする草に誘われたり、崖の上に立って冒険したくなる。
けれど、何度も道を確かめた。
その上で、一歩一歩進んでいくんだ。
わたしは立ち止まらない。
歩幅を緩める気もない。
進まなければ、きっと後悔することになるから。
この道は、夢はわたしだけのものだもの。
闇で覆われた空に
光が射し込む時刻
ボクは大地に立つ
翼広げて
風をきり
どこまでも休むことなく
どんな障害に遭っても
心が折れそうになったとしても
ボクは翔んでいく
前だけをまっすぐ見据えた矢先
ボクは不意に視線を変えた
真下で見えるのは
翼を折りたたんだまま
さまようキミ
向かう先は水辺でも
目的地でもない
定まらない その足は
一体どこに向かっているの
大声でボクはそう呼びかけた
答えないキミ
聞こえているのに黙っているキミ
怒りより 悲しみより
ボクが抱いた感情は哀れみ
黙ってなんていられない
だってキミはボクの仲間だろう?
定まらない その足は
一体どこに向かっているの
幾度呼び掛けても
返ってくるのは沈黙
けれど ボクは諦めたりはしない
何度だって叫ぶよ
ボクはキミを救いたいから
ねえ
定まらない その足は
一体どこに向かっているの
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母も私も、きっとこんなに落ち込むのは家族ゆえだと思うのです。
怒りも悲しみも感じずに、耐えず心が掻き乱されるこの感情は、きっと哀れみに似たものなんだと思います。