010:屋上【学園的な100題】





晴れの日も雨の日も

病める時も健やかなる時も

いつだってアナタのそばにいられたらいいのに。





離れていても繋がってるだなんて

欲深な私はそれだけじゃ満足できない。





アナタの笑顔ひとつ、

アナタの声のひとつ、

何ひとつ見落としたくない。





空だけが広がるあの場所で

眼下の街を見下ろしながら

ふたりきりの世界に身を置き、

笑い合っていられればいいのに。





あの町の一角で、一緒に食べた朝ごはん。

あの坂を登って、ぶらぶらと散歩をした昼下がり。

あの光る観覧車の下を、手を繋いで歩いた帰り道。





これから先の日々に

そんな、ささやかな幸せが

ずっとずっと、満ちていればいいのに。





淡い月が浮かぶ空の下で

煌めく街をアナタと見たその事実が

せめて

いつまでも褪せないよう形に残した。





ずっと一緒に居ようと

確固たる約束が出来ればいいのに。





ずっと一緒だよと

いつも言ってくれるその言葉を

素直に信じきれればいいのに。





頷くほどに愚かでも、

割り切って微笑むほどに賢くもない私は

ただ、曖昧に笑って抱きしめるしか出来ない。





想いを口にしないのは

応えがわかっているから。





それでも





ふたり年老いた歳月のどこかで

また

この場所で





変わりゆき、そして

変わらないでもいるであろうこの街を

眺められたらと請い願うばかり。






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