083:叫び声【学園的な100題】






ともすれば止まらない衝動を抑えることにも慣れ、

あぁ確かに歳だけは重ねたのだと

妙なところで感心する。




物分かり良くあいづちを打つその裏では

吐き出したところで所詮、

応えが返ってくることも

返そうと努められることもないだろうと、





疾うに打ち切った期待を

未練がましく冷ややかに見ていた。





その口は空っぽの甘言を紡ぎ、

その手は身勝手だけを持って翻っている。





どうして。

どうして、どうして。

そんなことが出来るのか。





尋ねるまでもないと

冷静に誰かが答えたのを聞いた気がする。





本音を隠し、

当たり障りないことを言い始めたのはいつの頃か。





押し殺すことに慣れたこの声を

ただ一人には届けたかった、そのはずだった。




明確な悪意と甘ったれた期待を孕んで吐き出した

切実で稚拙なまでのこの気持ちは

あの日、 ただただ望まれぬことを知った。





黙殺の先にある明確な応えも、

これからの眼前に広がる空洞と

傍らに立つ者の先にのみ待つ穏やかな未来も、





真実を見据える能力を欠いたこの眼球の裏に

そこそこな鮮明さで描き出された。





曇ったまなこが克明に見せた唯一まともな未来図を

それでも信じきれない私を

きっと、人は愚かと呼ぶのだろう。





ただひとつを、

ただ一人を望むことすら

私には許されないのだろうか。





この想いすらも

嘲笑の的にしかならないのなら





いっそ、この命ごと

誰か断捨してくれ。





どれだけ張り上げても届かぬ声が

それでも伝えたいと願うこの想いを

喚き散らす、その前に。





学園的な100題 一覧

082← ‖ →084