御題!
妖精じみてる。
悪魔じみてる。
聖母じみてる。
この3文+ハリーポッターの登場人物の誰かで、というご指定をいただきました。
もう一目みたときからジニーちゃん。
即興という自分なりのテーマがあったので、ほとんど練らずにキーボードの赴くまま、30分くらいで書きました。
教えていただいたBGM、公開はしませんがとっても素敵な曲で気に入りました。
御題を出してくださったみみ(偽)さん、どうもありがとう。
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第一印象は、妖精じみてる、だった。
赤毛も、つんと尖ったお鼻も、兄弟の多さも、もはや歴史上となりつつある著名人への懸想も、なにもかも。
一目みて、友達になりたいと思った。めろめろになっちゃった。
「もう信じられないの!頭きちゃった!」
でも話してみれば誰よりも女子力満載の普通の女の子。
ハリー・ポッターなる難易度の高い男の子を攻略するために日々同級生たちを手玉に取ってレベルアップを図って、末恐ろしいことこの上ない女の子。
ジニーは私の知らないことを色々知っていて、それを惜しげもなく教えてくれる。
初めての彼氏もまだの私なんかと毎日一緒にいては彼女のレベル上げの妨げをしているんじゃないかと思ったけど、そこはジニーに言わせればこの上女同士の戦いまで抱え込みたくない、のだとか。
それは褒められていたのか?
ジニーが教えてくれたことは、最近流行りの化粧品のこと、誰々が誰々に気があるとかないとか誰々と誰々は3週間で破局しただとか、あの教授の課題はあの本さえ読んでおけば大丈夫らしいよとか、基本的に男子はバラの香水と紫色の服は嫌いだとか、ハリーは特にそういう選り好みは無いみたいとか、髪も睫毛も長いにこしたことはないだとか、とにかく有益なことそうでないこと織り交ぜて色々なこと。
私は学ぶことが多くて、今の人生に役立っているかと聞かれたらそれはもちろん全部じゃないけど、まぁ知らないことを知れるということは有意義だ。
ハリーが熱視線でジニーを見詰め、みんなもそれに気付きだした頃の私のジニーへの感想は、悪魔じみてる、だった。
まったくもってお見事の一言。
ハリー本人はさながら蜘蛛が巧妙に張り巡らせた罠に絡め取られたことも気付かない哀れな蝶だ。
全てはジニーの術中、掌の中だったということも、きっとハリー自身は一度も知らずに死ぬだろう。
もちろんそれで良かったし、それが正しかったのだろうけど。
女子斯くあれ。ジニー、本が書けるよ。
でもひとつ言えることは、ジニーはハリーに対してはどんなときでも真面目で真剣だったし、ハリーに対してだけは弱気になることもあったということ。
ハリーにだけは、きっとハリーと2人きりのときは、きっときっと、私が最初に彼女の中に見出した妖精を、発揮していたんだと思う。
こうして結婚して、長男とお腹の中のまだ見ぬ子そして最愛のハリーに囲まれて笑うジニーは本当に聖母じみている。
ハリーを取り巻く環境はきっと一生普通のそれとは程遠くて、ジニーはそれでも側でハリーを支えることを選んだのだ。
前にジニーが言っていた。
「世界中がハリーの敵に回ったとしても、私だけは最後までハリーの側で彼の味方でいるの。」
愛だなぁ、と思う。
何がジニーをそこまで突き動かすのか、私には一生分からないと思ってた。
本当の意味で理解することは、たぶん無理だろう。
ジニーに私の愛の衝動が分からないのと一緒で。
きっとハリーにだって分からないだろう。
でもだからこそ、夫であるハリーは全力でジニーを守って、愛の結晶である子供とか作ったりするんだろうと思う。
「結婚おめでとう。ついにプロポーズされたのね!」
ハリーを鮮やかに追い払って(「雨どい、やっぱり私じゃ上手く直せないの。前にハリーがやってくれたみたいに上手に出来ないのよ。」ハリーはやれやれって言いながら見に行ったけれど、まんざらでもない顔をしていた。まったくジニーのお手並みには相変わらず唸らせられる。)、ジニーは学生時代のそれと同じに、くすくすっと悪魔じみた笑顔を振りまいた。
彼女の小さな男の子はそばで積み木で遊んでいる。
ジニーはきっと、この小さな男の子のことも手玉に取って育てるんだろう。言葉はおかしいかもしれないけれど。なんていうか、きっと大きくなって将来結婚してもママとお嫁さんの狭間を上手く立ち回れる男の子に育つ気がする。
私がじっと小さな男の子を見詰めていたら、ジニーも「子供だってすぐ出来るわよ。」と言いながら聖母じみた眼差しで男の子を見詰めた。
「そしたら、女の子を産んで。うちへお嫁によこしてよ。」
微笑むジニーは、やっぱりどこか妖精じみてる。
赤毛は相変わらず日の光でキラキラ輝いて、歳を増すごとにミステリアスな雰囲気も増してるみたいで。
そんな彼女に、私は今でも身も心もめろめろなのだ。
【めろめろめると】
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