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盂蘭盆はとうに終わりますたが

突発SS。
シーズンは過ぎたがなんか思い立ったので。
(※途中ややお下品なセリフ有り注意)








くゆり、煙が細く立ち上って。
さほど馴染みがあるわけではないけれど、全く知らない訳でもない、それと判る匂いがそこいら中から立ち込めている。

またこの季節がやってきた。
持っていくモノはいつも決まってる。大好きな銘柄の煙草に、発泡酒を二缶。それから桃。生のやつ。「缶詰めは嫌いなんだ、甘過ぎるし太るから」って言ってたっけ……専ら甘党のくせにさ。ぜーたくめ。
それらの入った紙袋を右手に持って、最後に、昨日花屋で買って水に浸けて置いた大きなカサブランカの花束を左脇に抱えこむ。毎回大荷物なんだよなこれ、無駄にでかい花だし。なんでこんなん好きかねえ……?
お気に入りの青いスニーカーを履き、家を出た。


あー、……暑い。今日は無駄に天気が良すぎる。暦の上じゃあもう秋に入ったってのに、お天道様は休憩する気が全くないみたいだ。せめて少しでも風が吹けばマシなんだけど期待出来そうにない。歩くたびにじっとり汗が噴き出す。日差しはむき出しの肌をじりじり焼き付けてくる。こりゃ帰ったら赤くなっちゃうなあ、一応日焼け止めは塗ってきたけど汗かいたらあんま意味ないよねー。
ぐい、と額からこめかみに向かって流れてきた汗を手の甲で拭った。
「ふぅ、」
目的地についた。ここは側に林があるからか、今歩いて来た道よりはちょっとひんやりしてて涼しい。こうも暑いと本当助かるわ。市内でそれなりの広さを誇るこの敷地内を迷いもせず(毎年来りゃ覚えるって)真っすぐあのコの所へ向かう。



「……聞いてる?マサトの奴さ、それでなんて言ったと思う!〈えっ!?…マジ!??ちょ、そんなん急にっ……待ってよ!オレ、〉……わたわたし出してめっちゃキョドってやがんの。ミキも私も思わずポカーンだよ。そりゃちょっとは驚くかもなーとは思ってたけどさ、まっさかココまで慌ててくれるとかさー…。んでさ、そのあとがさ〈オレ、まだお前にプロポーズもしてねーのにっ!!〉――そっちかよ!てかおま結婚する気ちゃんとあったのかよみたいな」
持ってきた発泡酒の缶をあけて煽りながら、しゃがみ込んで向かい合う。ここにくるといつもくだらない話がはずむ。酒の力を借りてるせいでもあるんだけど。
「……バッカだよねー!友達の居る前でムードもクソも無いし。つかプロポーズとかいちいちこだわり過ぎだし……今時フツーじゃん<できちゃった〜>とかなんか。あんな騒ぐ事?だからゴム無しでヤることありゃーそらいつか出来るわよっていつも言って」

思わず溜め息。俯いて、早くも中身が半分程になった缶を地面に置いた。
今日は言える気がする。いや、言わなきゃダメだ。……絶対。

「ねえ、」
今まで言いたかったけど言えなかった事、聞いてくれる?
「私さ、」
あんな事言ったけど。
「さんざん悩んだけど、ホントは」
ほんとうは。
「…………私もあんたのこと、すきだった」
嘘じゃないよ。告ってきたのはあんたの方からだったけど。私はその時あんまりにガキだったから驚いて、気持ち悪いって思ってただただ拒否して拒絶しまくったけれど。
「ごめん……いっぱい傷付けて」
なんでかな。この世のどこにも居なくなってから気付いた、ほんとの気持ち。
「……今日、言わなきゃって思って」
今住んでるとこ、もうすぐ引っ越すから。めったには会いに来られない。そのくらい遠いとこに、3人で。
「私、結婚すんだ。おなかの子は三ヶ月。まだ性別はわかんないけど」
きっと女の子の気がする。
「そしたらさ、」
あんたの名前、もらってもいい……?



――風が吹く。
つられてくゆり、となびく煙は線香代わりの煙草のもの。
次いで備え付けの花立てに活けられた白いカサブランカの花びらを揺らして、そばに供えられた桃の実の産毛を震わせ、あいまって甘く香りたつ。
墓石はまだわずかに湿っていて、ほんのりアルコールの匂いを漂わせていた。


「馨香-懺悔を手向ける-」



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ありがちネタ乙

墓参り。しかし何故ビアンもの。
あんまなんにも考えないで(一応最初は普通に漠然と友情もの目指してた)書いてたらどうしてだかこんなん出来た……(ι-"-)

べ、別にカサブランカってそうゆう意味じゃないんだからね(#`ω´)!!
と言い張ってみるwww

…ヒトはいつも、なくしてからじゃないとソレのありがたみに、大切さに気付けない。
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