前えんとりの続き。
ちんたら更新ですいませ(><)
SS跨いだのとかはじめてだ。うわ。
後半主人地味に斜めってます。
所詮躁ぶった鬱人間ですから……あはー
。
*…*…*…*
好きと言われる事自体は素直に嬉しい。悪い気はしない。
しかし自分はチャージャーであり、携帯よりもAIがやや簡素に出来ているので、知識だけが存在して実質的には理解出来ない事柄は多い。<好き>の種類、はそのひとつだ。
携帯と違い、俺は仕様により恋愛感情というものを持たない。
携帯とユーザーのサポートを第一目的として造られたチャージャーはその使用目的に背くような不確定事項に惑わされてはならないからだ。それはあくまでも概念として有するに留まる。
要に、<家族愛の好き>、<友愛の好き>、<恋愛の好き>などの、区別がつかない。
どれも単純に同じ<好き>なんだとしか捉えようがないのだ。(と言っても周りが知っての如く、主人に恋愛のそれみたいだとからかわれるほど確かに俺はろんが好きだが、あいつに対する<好き>は<仕事上のパートナーとしての好き>だ。
それだけは解っているし、まず絶対に嫌えないよう初めからAIにそう組み込まれている。チャージャーが携帯を嫌いではそもそも仕事にならない)。
だから主人の言った<好き>の種類が理解出来ない。
それで、これもまたうまく処理できずに俺が反応を返せないでいると、主人は構わず、それにねー、と続けた。
「今月は重いんだって言うとさー、ろんきゅんが『ご主人のいたいの、とんでけ』って心配して添い寝してなでなでしてくれるしねー。うへっ」
「……………!」
結局そんな魂胆なのか。てめえという奴は……いい加減慎みを覚えやがれ。女も男もあるか!
言ったところで聞くはずがないのは虚しいくらい承知している。…が、言わずには居られなかったのだ。
少しでも理解できたなら良かった、などという健気な考えは余計なその一言に霧散した。
「テーブルどかすよ。そっち持ってー」
散らばっていた雑誌類をまとめつつ記憶を掘り返しているうちに時間が経った。掃除は予想よりも速いペースで進んでいた。
自分の作業を終え居間を覗くと、もう粗方片付いていて、残すはダイニングの回りのみだ。今主人らが荷物整理と掃除に取りかかっている。
ろんも変わらず定位置にいて主人から言いつかった仕事をこなしている。今の曲は……鏡音レンのだ。
がたた、引きずる音を立てて載っている物のないダイニングテーブルがずらされた。久しくやってないからそこだけ床が白っぽい。
「おーまっしろまっしろ、」
「きったねー。ほこりだらけ……?!なんかトマト落っこってるし!」
隅を見ていた妹が叫んだ。トマト!?何故そんなところにあるんだ。食物の保管場所に向かないのは明白だろう。
「あー、秋に庭で穫れたやつじゃね?カウンタに置いてたのがなんぼか知らないうちに転がってこんなとこに……うわめっちゃプヨってるまじプヨってる」
あれだ、日本語でおk、主人。
「まあいいや、捨てよ。これじゃ食いよ
うないしさ」
「……しょーがないよね」
ポイッと、主人の手によってまっすぐゴミ袋に入れられた。哀れな……そんな場所に落ちなければ食べられたのだろうに。
目立つゴミは他にないようだ。主人は妹に、さっき降ろしたのだろうダイニングテーブルの上にあった物の整理を頼み、掃除用のワイパーに新たにシート(ドライタイプ)をセットし、ざかざかとやかましく拭き始めた。雑だな。この様子ではまたすぐ散らかすに違いない。
「おねーちゃん、もう終わったー?」
「うーんちょっと待った、仕上げ」
先に片付け終わった妹は早くテーブルを元の位置に戻そうと準備万端だ。主人の方は、汚れたシートを外して、また新しいものに付け替えた。先ほど俺が教えた場所にあったウェットシート。
「ういしょー」
「早く早く」
「はいはい、っと」
「いいねー、綺麗な家。これでクリスマスできるね」
「そーだねー」
「サンタさんきてくれるかな!あーゲーム欲しい……」
「ぶっ、おま、信じてんの。厨房にもなって」
「なわけないよー。冗談じゃん」
「つーかどんだけゲーム欲しんだよ、受験生の身で」
「だってぇー」
「それに、もの貰えりゃいいってもんでもないでしょーが」
ぶーたれる妹に主人が放った言葉は。
「サンタクロースは目に見える、手で触れるものだけしかくれないんだよ。
私が欲しい、……人間にとってほんとに必要な、かたちのないプレゼントは絶対くれないんだから」
――また理解出来ない事柄がひとつ追加された。
『形のないプレゼント』
プレゼント、他人から貰うものに形がないなんて、解らない。そんなものどうして貰えるんだ?あげる方もどうやって渡すんだ。
主人の欲しいものとは何なのだろうか。
*…*…*…*
「………ふう、」
あったかいミルクティーを一口。お掃除の後のティータイムほど五臓六腑に染み渡るものはないね。
しかし、あの時ふと顔をあげたら居間のドアの前で突っ立ったままフリーズしてたくろを見つけたのにはちょっとびっくりした。なんかあったのかと思ってしまった。この間のこともあったし。
前にも何度か同じことがあったんだよな。マニュアルによると、理解能力の限界による情報処理の遅延がたびたび起こるため、とのことだから不調ではないらしいけど。つくりものは便利な反面、制限も多く面倒なところもある。
さっきは確か……妹にサンタクロースがどうのと言ってた時だっけ。あの会話が聴こえてたんなら、その中に何かくろのAIの範疇にない言葉があったのだろう。
――サンタクロース、ねえ。
そういえば昔から私はちゃんと信じていた事はない。プレゼントをくれるのは親なんだって分かっていた。だから手紙なんか書いたことはないし、靴下を吊して寝たこともない。神とか霊とかと同じだ。見たことないものは信じられない。そんな性分。
今考えると無駄にドライな子供だったんだな。
「……サンタクロースはかたちのないものは絶対くれない」
我ながら妙なことを口走ったなあ。妹もよく分からない顔してた。
でも、この時期になるとあちこちに出没してプレゼントを配るコスプレサンタもどき、あれもサンタクロースなんだと考えればやっぱり本物であろうと偽物であろうとこのことは当てはまると思う。
けれど、何となく理由は分かる。
私が欲しいと思うもの……それらは人に与えて、人からもらって、そうやって自分で手に入れなきゃ、自分のものにはならない。
サンタクロースはきっと知ってるんだよね、このこと。だから彼はプレゼントにしない。かたちのないものは。
「――あ、でも……ひとつだけならある、かも」
彼が唯一くれる、かたちのないもの。
それは、今も世界中の子供たちに与え続けてる夢、……かもしれない。
「烏の眼差し、無形、掃除にて。-Seeing is believing-」
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ろんとくろに本格的に掃除手伝わせないのは汚れるからです(^人^)クリーニングしたばっかやもの。
つくりものである事実への依存。
主人が何でも隠さず喋るのは彼等が、つくりものが自分を裏切らない、裏切れないように出来てる事を知っているから。
何か都合が悪い事があればそれを彼等の中からすべて消去してしまえばいいんだから。
なんだかんだ言って彼等をヒトのように扱ってみつつも心の片隅では彼等がつくりものである事を割り切って使ってる。
微妙に主人スレ気味。
年の瀬くらい/(^o^)\クリスマスほぼ関係ねええ!!
主人の欲しいもの、はご想像におまかせします