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崩壊舞台の戯曲とカーテン・コール

誰かが言っていた

「僕達は、舞台の駒だ」って

駒には役目があって、それを成さなければならないと、ぼんやり思い出した











明かりも無い暗い空間で、嫌にハッキリと認知する面影が2つ

ひとつは、僕
この空間の王であり、神である存在

もうひとつの男は、飄々と笑う
一分の隙も無い装飾で欺く存在





「そろそろ飽きて来ない〜?」


へらへらと笑いながら、彼、瀬戸不識は口を開いた


「飽きるなよ、訓練なんだから」


僕は手帳にペンを走らせながら不識を見る


「だってさぁ〜、ねぇ?」


両手を上げてヤレヤレとおどけてみせる


次の台詞が出る前に、手にした銃が鉛を吐き出し、不識の頭を撃ち抜く


倒れた死体を観察して、再びペンが文字を書く


「死に役も大変なんだよなぁ」


筆記が終われば、何事も無かった様子で不識が二の句を繋げる


刺殺、銃殺、絞殺、撲殺、圧殺…様々な方法で僕は彼を殺害している


僕達は血生臭い事も遂行する場合があるから

と言っても、僕は殺しは範疇外だ
だからこれは疑似体験でしか無い

死ぬ覚悟と殺す覚悟のテストみたいなモノで、僕達はそれを認識しているから、何十回こんな場面を繰り返しても雑談する余裕が有る


「ぶっちゃけ、エゼルのストレス発散にしかならないよね、ここまで来ちゃったらさぁ」


疑似体験と認識した死には、慣れが生じる
だから何回やっても、茶番劇にしかならない事も僕達は理解してしまっている


「そうだとしても、寝覚めの悪いストレス解消だね」

「ま〜、刺激に欠けるよねぇ、昔っからしてればさ〜」

「僕のやり方が気に入らないって事かい?」

「そうじゃ無いけど、どこまで逝ってもリアルには及ばないね、って話」

「事実は小説より刺激に溢れているからね」


彼は絵を描く、僕は文字を書く
どこかしらで表現の限界を薄々気付いてしまうものだ

最も、僕は記録だから、あるがまましか書きはしないが


「イデアたるロゴスは喪われた、だが、我々は新たなるロゴスを手に入れたのだ」

「何それ?」

「ん?インターネットワークって、そんな感じだなぁ、って」


突拍子無い三文芝居に呆れ顔で不識を見つめた


「完全完璧なんて、望んじゃいけないよ
そんなもんは、あくまで理想でなくっちゃ」

「何でさ」

「幻滅しちゃうっしょ?」


あっけらかんと、何が楽しいのか、笑みを絶さぬ男は言う


「綺麗に見えた建物も、近付いたら荒れまくりの廃墟だった、って感じじゃん」

「廃墟なんて見慣れちゃって綺麗なんて思わないよ」

「あら、残念」


あぁ見えて綺麗な所も有るのよ〜?なんておどけてみせる主旨が、分からない


聞き流す軽口を他所に僕はぼんやりと思い出した事に焦点を向けていた


「……僕達は舞台の駒…か…」


「うん?」

「不識は、僕達が何の舞台を演じていると思うかい?」


急に変わった話題に2、3度瞬きを返してから思案顔を見せる

我ながら馬鹿馬鹿しい話だったかも知れない


「Ah〜…何でもない、今日はもう終わろうか」


些か居心地が悪くなって、僕は空間解除を始めた



綻び出す世界の中、しばし沈黙していた不識が口を開いた



「昔々の、思い出話」

「え?」


揺らぐ視界で立つ不識は、珍しく笑っていない





「………家族の物語だよ……」



俺にとっては、ね









そんな幻聴の様な囁きごと霧散した空間
意識を取り戻した僕は、弾かれた様に相対者に視線を送る


「ふぁ〜…、ん、エゼルンお疲れ〜!
ってな訳で俺何か飲みに行こうかなぁ〜」

伸びをひとつしてから椅子から立ち上がる


「………」

「何、エゼルも一緒来る?」


視線に気付いたのか、いつも通りの軽快な声が発せられた

「あ、いや…不識、僕の質問に答えたかい?」

「質問?何か言ってたっけ?」

「答えて無いなら良いよ」

「ふぅん?何か飲む〜?」

「僕は遠慮するよ、やる事有るし」

「忙しいねぇ、学生さんは大変だ」



軽く茶化すと不識はヒラヒラと手を振って部屋を出て行った


「はぁ…らしくも無いね」


溜息を吐き出し、机の上にある学園の仕事と資料整理に手を付けた











舞台はやがて幕を開け
そして何時しか幕を降ろす




僕達は何を演じて、何を成すのか?

知る者はきっと居ないのだろう

































暗い暗い、部屋の中





舞台はもう、始まっていると笑みを溢した







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