2017-1-6 08:33
024.まだら模様【学園的な100題】
手に入らないことを挙げればキリがない。
でも、確かにアナタは
アナタの持てる限りの全てで真心をくれた。
同じ時間を過ごし、同じ物を目にしながら
私には見えていなかった世界を見せてくれた。
私が見ているちっぽけで些末な小さい世界を
美しいと言ってくれた。
もう色も匂いも温さもないと思っていた私に
まだ温もりがあることをまざまざと教えてくれた。
なんの価値もない出来損ないの私を
あたたかいと言って抱き締め続けてくれた。
アナタが大事にしている思い出の場所に招いて
知り得ぬ一端に触れさせてくれた。
潮騒を聞きながら甘い果物を分け合って
これから先のまだ見ぬ道も、
寄り添って歩こうと約束してくれた。
これから会える時間も少なくなって、
これ以上、先に進むこともない私たちの間に
きっと訪れる終わりの日。
そのときに
遠く去った日々の中に
確かな歓びがあったことを思い出せるよう
今、ここに記す。
深くふかく愛したことを。
強くつよく愛されたことを。
あの夏の日が遠く過ぎ去っても
鮮やかさを失わぬように。