024.まだら模様【学園的な100題】






手に入らないことを挙げればキリがない。

でも、確かにアナタは

アナタの持てる限りの全てで真心をくれた。





同じ時間を過ごし、同じ物を目にしながら

私には見えていなかった世界を見せてくれた。

私が見ているちっぽけで些末な小さい世界を

美しいと言ってくれた。





もう色も匂いも温さもないと思っていた私に

まだ温もりがあることをまざまざと教えてくれた。

なんの価値もない出来損ないの私を

あたたかいと言って抱き締め続けてくれた。





アナタが大事にしている思い出の場所に招いて

知り得ぬ一端に触れさせてくれた。

潮騒を聞きながら甘い果物を分け合って

これから先のまだ見ぬ道も、

寄り添って歩こうと約束してくれた。






これから会える時間も少なくなって、

これ以上、先に進むこともない私たちの間に

きっと訪れる終わりの日。





そのときに





遠く去った日々の中に

確かな歓びがあったことを思い出せるよう

今、ここに記す。






深くふかく愛したことを。

強くつよく愛されたことを。





あの夏の日が遠く過ぎ去っても

鮮やかさを失わぬように。





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