目を醒ませば、そこにはいつもの光景があればいいのにと。
何度も願ってしまう。







寝苦しさで目を醒ませば、そこに広がるのは見慣れたようで見慣れない天井。
あの頃の少し崩れた、でも居心地のいい家とは違う…小綺麗な部屋。



「……また、あの夢…か」

溜め息を一つ。手で顔を覆って視界を遮っても、何も変わる訳は無く。
裸足で床に足をつければ、その冷たさで現実味が更に増した。







「また眠れないのか、真朱」
「……一体誰のせいだと思ってんのよ、ジャック」

水を飲みにキッチンへ行くと、少し不機嫌そうな(というかこいつはいつも仏頂面だけど)ジャックが立っていた。
気にせずに水をくんで、一気に飲み干した。…少し、喉に滲みた気がした。


「何故、あの時逃げようとしなかった?未だ間に合った筈だ」
「…………」
「お前は「今更、そんな事訊かないでよ。アンタは今の方が満足してるんだから」

背中を向けたまま、動こうとしない私に向かってジャックが問いかける。


……あの時もし、私、が




「私は自分の意思で此処に来たのよ。自分の生きたいように生きるわ」
「ならば何故、あのカードを使わない?この前の時も出せた筈だ」
「別に。あの子を出さなくても勝てる相手に使ったって、意味がないからよ」
「真朱。お前は期待しているんじゃないのか?奴が…遊星が此処に来ることを」




期待、している訳じゃない。だってあの時既に、私自ら絆を経ったのに。




「明日も早いんじゃない?早く寝ないと明日に響くよ」
「っおい真朱!」





その場から立ち去るように私は自室に戻ると後ろ手にドアを閉めた。
そしてそのまま座り込む。




「どうしようもないの。
あの子を出したいのに…出せない。スターダストがいないのに…」

もう、自分でどうしたらいいのか解らない。
あの時の自分が正しかったかなんて解らない。
何故こんな事になってしまったのか解らない。





どうして、涙が出るのか解らない。








「……教えてよ、京介…」





アンタがいなくなってから、みんなバラバラになったんだよ?
いっその事、あの頃に戻れたらって…何度も願ってるのに。
その願いは、全て夢の中に消えるんだ。




「…遊星…遊星なら、何て言ってくれる?」









窓の外の星に尋ねても、返ってこない。