フォル東ssです!
魔力譲渡ネタ…まではいきませんが(ぇ)寸止めです。
葛藤する姿って好きなのですよね…←おい
*attention*
・フォル東SS
・シリアスです
・軽くフォルのトラウマ(?)的状態を演出してみた←
・東条さんは立場上フォルの魔力受け入れるのはまずいかな、ととりあえず寸止め。
・相変わらずの妄想クオリティ
・ナハトさん、すみませんでした…!
以上が大丈夫なかたは追記からどうぞー!
東条はイリュジアの外れにある暗い森の中を歩いていた。
きょろ、と辺りを見渡している。
何かを探しているかのように。
「スターリン殿はこの辺り、と……あ、あれであろうか?」
彼が目を止めたのは大きな廃墟。
かつては有名貴族の別荘だったとか、幽霊がでるだとか真しやかに語られるそこを、東条は探していたのだった。
古いドアを開けて、中に踏み込むと明かりが点っている。
誰かがいることは、確実なようだ。
「フォル殿……?」
そう、彼が探していたのはフォル。
スターリンが任務でいない間彼はよく此処にいると言う。
何故か帰りが遅い彼を心配して、探しに来たのだった。
埃の積もった床にはまっすぐある部屋に向かって延びる足跡。
東条はそれを辿って、その部屋の前に立つ
小さくノックするが、返事はない。
「フォル殿?居らぬのか……?」
声をかけても反応はない。
―― 彼奴、魔力の調整下手でぶっ倒れてることあるから……
スターリンの言葉を思い出した。
もしそれならば、返事ができなくても当然で。
尚且つ、放っておくわけにはいかない。
東条は少し迷ってから、そのドアノブに手をかけた。
鍵は掛かっていなくて、ドアはあっさり開いた。
中にいたのは、探し人。
しかし……
「え……」
東条は思わず言葉を失った。
部屋一面に描かれた不可解な文字や記号。
所謂、魔法陣だと気づくに、少し時間を要した。
その部屋の真ん中に座り込んでいる、堕天使……
海のような、深い青の瞳が東条の方を見る。
そして、それがスッと細められた。
―― チョウド、ヨカッタカモシレナイ……
少し無機質に聞こえた、フォルの声。
東条が目を見開いたその刹那、ドアが音をたててしまった。
誰か……否、フォルにきつく腕を掴まれ床に押し倒される。
強かに背を打ち付けて東条は小さく声をあげる。
「痛……ッ何を……フォル殿……?!」
驚いて東条はもがく。
周りに描かれていた魔法陣が白く、青く、光り始める。
「大丈夫……怖く、ないよ?」
そういって笑うフォルの瞳に優しさや愛情は感じられない。
感じたのは、禍々しい魔力。
―― 悪魔……否、堕天使の、魔力……!?
混乱した東条の頭でも、彼が何をしようとしているか理解できた。
そして、それをされてしまったら大変なことになると言うことも。
東条は帝に仕える身。
堕天使の、悪魔の魔力をその身に灯すと言うことが何を意味するか、理解できないはずはなくて。
自分を見下ろすサファイアの瞳。手首を拘束する冷たい彼の手。
そして自分を囲む、異端の魔力……
「待て、やめよ……フォル殿……ッ!」
恐怖に似た想いを滲ませたきつい拒絶の声に、フォルははっとする。
発動しかけた魔術は霧散し、床に映し出された魔法陣もバラバラになって、消えた。
二人とも荒い息を吐く。
フォルは東条の手首を掴んでいた自分の手を解いた。
自由になった手首を見て、東条は目を見開く。
彼が掴んでいたところにべったりと残る、赤い液体。
それが彼の血液であることは明確で、東条は焦って体を起こした。
「!フォル殿、手を……」
「平気だよ、ごめん……今、触れないで」
―― 同じことを繰り返してしまうから。
ぎゅ、と自分の腕を握りしめるフォル。
その体は小さく震えていて、東条は心配そうな顔をする。
「如何なされた?……何処か、痛むのか?」
触れるな、と言われていたけれど放っておけなくて、東条は彼の肩にそっと触れる。
びくり、と少し跳ねるフォルの体。
しかし、拒絶を込めた意味ではなくて……
「……ほんとに、君は優しいね」
困ったような、少し泣き出しそうな顔をして、フォルは微笑む。
「ただの、反動。無理矢理魔術の発動止めたから、その反動を受けただけ。
……人を呪わば穴二つ、って言うでしょ?こういう魔術の反動は大きいんだ」
彼の言葉に、東条は目を見開く。
呪術ではないが、それによくにたものであったのだろう。
「何故、このようなことを……?」
東条は静かな声で訊ねた。
咎めるわけではなく、ただその理由を問おうとするように。
フォルは少し目を伏せていたが、やがて答えた。
「僕は、堕天使で……君は、人間だから……共通の“何か”がほしかったんだよ」
小さく笑う、フォル。
その瞳に灯る寂しげな色は、東条にもよくわかって。
「出来うる、ことならね……書記長様のように君にも……」
何かいいかけ、すぐにフォルは口をつぐむ。
駄目だ、と言うように首をふると、フォルは小さく笑った。
―― 既視感(デジャヴ)
部屋に座り、“禁忌”の魔術を使ったあのときと同じだった。
本当は少し、怖かった。
開いたドアの前にたつ東条を見たときに感じたのはきっと、“恐怖”。
棄てたはずの感情。想い。
しかし、それがフォルを動かしたのは曲げようのない事実。
東条の口からあの日の父と同じ言葉が吐かれることを恐れ、
それより先に自分の“願い”を叶えてしまおうとしたのだ。
しかし、東条の拒絶の言葉で正気に戻った。
今思えば、彼の意思も感情も考えずにその魔術を使おうとした自分が恨めしかった。
「……ごめんね、異国の騎士様。
君にも、書記長様と同じ術を、かけようとしたんだ。意思も、確認せずに」
ぽつり、と彼は謝る。
そんならしくないフォルの様子に東条は怪訝そうな顔をした。
「フォル殿……?」
「君も、気づいている?
書記長様に微かだけど悪魔属性の……と言うか、僕の魔力が流れていること」
フォルの言葉に躊躇いつつ、東条は小さく頷く。
前々から、微かに感じていた。
彼自身が持つ氷属性以外の魔力……
それが、フォルのものだと確信したのはこうして傍にいることが増えてからではあったけれど。
フォルは少し目を伏せると、静かな声で言った。
「……契約、の一種なんだ。僕と彼との間には魔力の繋がりがある。
本来その魔力を持たないものが特殊属性の魔力を持つ方法…… それが、“契約”」
静かな声はフォルらしくなく、東条はじっと彼を見つめる。
ぽたり、と彼の指先から血が伝い落ちる。
「それを、いつか君にも……って、思ってたんだ。
魔力の繋がりがあれば、離れていても君を多少なりとも守ることが出来るし、
何よりも……君との、繋がりが欲しかった。
でも、それは正直地上でも天界でも禁忌だし、何より君が抱く忠誠心の強さは、僕も知ってる。
だから、“時が来るまでは”って思っていたんだけど……
君がこの部屋に入ってきたとき、衝動を堪えきれなくなった。
だから、強引に術を施そうとしたんだよ……ごめんね」
ごめんね、といいながらフォルは笑う。
立ち上がって、コートで掌に付いた血を拭うといまだ床に座り込んでいる東条に手を差し出す。
「帰ろ?迎えに来てくれたんでしょ?」
「あ、あぁ……」
冷たい、彼の手を握る。
ほんの一瞬、その目を過った寂しげな光を東条は見逃さなかった。
―― フォル殿……
歩き出す彼の背をじっと見つめ、東条は息を吐く。
帝に仕える騎士……基武士であることに誇りを持っている。
先刻の彼の魔術を拒み、はねのけたことは間違いではない。
それは確信としてあるのだが……
寂しげに、悲しげに笑った堕天使の顔を思い出すと、揺れる想い。
自分との繋がりが欲しいのだと語った静かな声を思い出す。
帝への忠誠。
フォルへの想い。
両者の狭間で、揺れる。
「異国の騎士様?帰ろ?」
先に歩き出していた彼は、振り向いて笑う。
フォルが“いつもどおり”を装おうと一生懸命なのわからないほど東条は鈍感ではなくて……
―― Best answer ――
(嗚呼、何故“どちらか”しか選べぬのだろう?)
(彼を困らせたい訳じゃない でもやっぱり僕は我儘だから…)