お医者様コンビ及びコラボSSが楽しすぎて量産中←
ネタさえあれば書き続けそうな勢い…(遠い目)
先刻あげた「Call my name」の続き的なもの。
相変わらずの星蘭妄想クオリティでお送りします(おい)
*attention*
・お医者様コンビss
・「Call my name」の続き的な。
・メンゲレさんの意識が戻ったあとのおはなし
・シリアスのちちょっと甘め?かな…
・ちょっとリレー本編にリンク
・ジェイドは本当にメンゲレさんを溺愛してるな、って。
・相変わらずの星蘭妄想クオリティ
・ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
震える、白い翼。
ジェイドはきつく彼を抱きしめたままその場に立っていた。
どれくらいの時間が経過した頃か……
不意に、小さな声が、聞こえた。
「ジェイド、さん……?」
自分の名を、呼ぶ声。いつもの声だった。
少し震えてはいるものの、いつもの、彼の声。
「メンゲレ?」
確かめるように名を呼びながら、体を離してやれば、
深緑の瞳と視線がぶつかる。
さっきのような冷たい瞳ではなかった。
しかし……
「ジェイドさん……僕は、何を……?!」
あたりに視線を走らせて、メンゲレは呆然とした顔をする。
崩れ落ちた城壁。
中庭に張り巡らされた白いワイヤー。
あたりにみちる、冷たい天使の魔力。
自体を悟って、メンゲレは思わず座り込む。
ジェイドは驚いたように彼の前にしゃがんだ。
「メンゲレ、大丈夫……」
「嫌……見ないで、ください……っ」
大丈夫か、と声をかけようとするジェイドを拒む、
メンゲレの強い強い、拒絶の声。
その言葉は、ジェイドを拒絶しただけでない。
きっと……自分の所業をも、否定したかったのだろう。
しかし、認めざるを得なかった。
彼の"かつての"戦闘スタイルは、彼が一番よく知っている。
張り巡らされた蜘蛛(シュピンネ)の糸……
それは、紛れもなく自分の所業。
記憶の断片で、自分のしたことを覚えていた。
―― 白い翼なんて……!
似合わない。残酷な所業を繰り返した自分には、似合わない。
ずっとずっと、そう思っていた。
それに普通の……同じ天使の魔力を持つフィアがもつ翼も、
以前"普通に"天使化した時の自分の翼も、二枚だった。
それなのに、今の自分は……
完全に魔力を解放し、守るべき仲間を傷つけた。
そんな力、いらなかった。
そんな強すぎる力の象徴とも言うべき翼。
それをもつ自分が酷く穢れた、醜いものに思えた。
見られたくない。こんな姿は、見られたくない。
そう思い、彼は拒絶する。
大きな白い翼が忌々しかった。
もぎ取ってしまえたら、どれだけいいだろう。
せめて、消えて欲しかった。今すぐに、消えて欲しかった。
しかし一度解放してしまった魔力はそう簡単に消えず、
背中の翼も、消えない……
体を震わせている彼に聞こえたのは、静かな声。
「……メンゲレ、僕を見てください」
見るということは、視線を合わせるということ。
ジェイドに顔を見せることなんてできないと、そう思っていた。
ふるふる、と首を振る彼をジェイドはきつく抱きしめる。
拒むようにその体を押し返すが、ジェイドの体は動かない。
そのまま、ジェイドはもう一度言った。
「顔を上げて、僕を見なさい」
今度は、命令口調だった。
―― 拒むことは許さない。
そんな口調には逆らえず、メンゲレは恐る恐る顔を上げる。
怒っているだろう。
そうでなければ、幻滅しているはずだ。
ジェイドが他人を傷つける人間を嫌うことはメンゲレもよく知っていた。
自分がしたことは間違いなく、彼が嫌う所業。
しかし、ジェイドはただ静かにメンゲレを見つめていただけで。
ふっと微笑むと、いつものように言った。
「よかった……」
「え……」
彼の言葉の意味を理解できず、メンゲレは涙でいっぱいの目を瞬かせる。
ジェイドはそっとメンゲレの黒髪をなでて、言った。
「貴方が、"貴方"に戻ってくれて……よかった。
無事で、良かったですよ……メンゲレ」
優しい声だった。いつもどおりの、言葉だった。
その優しさが、想いが、今は少し痛くて。
雫がメンゲレの頬を伝って落ちた。
メンゲレはそれを見て小さく笑う。
長い指先で、涙を拭った。
「おやおや……泣き虫ですね、メンゲレ」
「もう、見ないで……ください、ジェイドさん……」
メンゲレは首を振って、もう一度俯く。
背に生えた大きな翼を隠すようにジェイドの視線を、言葉を拒む。
翡翠の瞳が愛しげに細められた。
「何故、見られたくないのですか……?」
「だって、僕は今恐ろしいことを……っ
それに、こんな醜い姿……見られたく、ないです……!」
震える声で、メンゲレは叫ぶ。
忌々しい殺戮の血を、残忍な一面を持つ自分に不似合いな白い翼。
通常と違う、四枚の翼。
すべてが忌々しく、醜く恨めしくて。
しかしジェイドは小さく首をかしげて、メンゲレの翼に触れた。
びくり、とその翼が震える。
「どうして?醜くなんかない……
純粋に、翼を持つメンゲレの姿は美しかったですよ。
確かに、先刻の貴方のしたことは間違っています。
怒りのままに、魔力のおもむくままに戦うことは間違い。
しかし、今の貴方は違うでしょう?
自分のしたことを悔いている。悔いて、悲しんでいる……
だから、醜くなんかない。
貴方には、他者を想う、優しさがある……
そんな貴方に戻れたのだから何の問題もない」
ジェイドは穏やかな声でそう言って、もう一度メンゲレを抱きしめる。
触れないで、というように首を振るメンゲレだがジェイドは知らぬふり。
もう、抵抗しても無駄だと理解して彼はおとなしくなる。
しかし、こればかりは言わずにはいられなかった。
「ジェイドさん……迷惑、ばかりかけて……すみません」
静かな声で、メンゲレは謝った。
先程までのパニックからは脱したようだが、
それと同時に襲ってきたのは途方もない罪悪感。
この国の仲間を傷つけかけ、怯えさせて、
その挙句に泣いている自分の不甲斐なさ。
呆れられても仕方がない、そう思いながらメンゲレは目の前の統率官に言う。
「僕を、部隊から……」
「外してください、は聞きませんよ。メンゲレ」
先回りして拒まれた。
腕に込められた力が強くなる。
囁くような声で、ジェイドは彼に問うた。
「僕が、貴方を……嫌うと、思いますか?」
「でも……」
「そう思うのなら、僕に嫌いだと、言わせてみなさい。
それが出来ないのなら、僕から離れることは……許しませんよ」
メンゲレを抱きしめたままにそういったジェイドの体からふっと、力が抜ける。
驚いた顔をして、メンゲレがそれを支えた。
「ジェイドさん……っ!?」
「ちょっと、疲れただけですよ。大丈夫です」
メンゲレから体を離して、ジェイドは微笑む。
少し疲労の色が滲んでいるのは隠しきれなくて。
平気、と言ってもなれない魔力に長時間さらされれば辛いのは必至。
対立魔力でないとはいえ、強すぎる魔力を当てられて疲れないはずがない。
メンゲレはそれを思って、眉を下げた。
「ごめんなさい、僕の……僕の、所為で……」
「全く……またそうやって貴方は自分を責める。
今度そういうこと口にしたら、怒りますよ?」
少し、からかうように言ってからジェイドは微笑んだ。
「僕のことを思うなら、離れるのではなく……傍に、いてください。
僕に、支えさせて欲しいんです。貴方のことを」
そっとメンゲレの頬を撫でながら、ジェイドは言う。
「貴方を守り、支えるためなら僕は、楯にでも抑制機にでもなってあげます。
傍にいて欲しいのではない……僕が傍に居たいのですよ」
"それでも僕を拒みますか?"と問いかけるジェイド。
メンゲレは"狡いですよ"と小さく呟いた。
そんな言い方をされて拒むことが、メンゲレにはできない。
ジェイドはくすりと笑って、いった。
「狡くて結構です。以前も言ったでしょう?
貴方が助けを求めるのであれば、僕は絶対に助けてみせる。
どんな小さな声であっても、聞き逃しはしない……
まして、貴方の力や姿によって僕が拒絶を示すなど……
あるはずが、ないのですから」
―― 怖いなら縋ればいい。助けを求めればいい。
そう言いながら、ジェイドはメンゲレにそっと口づけた。
俯く彼の背中で震える、白い翼。
二人の周りに落ちた羽がふわふわと風で揺れる。
暴走する恐怖も罪悪感も消えてはいなかったけれど、
彼の温もりが、優しい声が、抑制機(リミッター)になってくれる……
そんな気が、した。
―― ただ、傍にいて ――
(この力も姿もきっと好きになんてなれない。
でも貴方が傍にいてくれるのなら少しだけ安心できる)
2013-1-13 13:42