ノアとフォル、西さんとメイアンのお話です。
「暴走の果ての」のつづきです。
西さんの鹵獲能力に関して話してる影猫二人が不穏です←
*attention*
西さんとメイアン、フォルとノアのお話です
シリアスめな話です
後半は少しほのぼの?
西さんの能力に興味をもつ堕天使
そしてお互い心配してる二人もいいなと(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOkというかたは追記からどうぞ!
傷ついた体を引きずって、屋敷のなかにはいる。
ばん、とドアを閉めて一息吐くのと同時に目の前に影がたった。
「大変だったみたいだね、ノアール」
そんな声が聞こえて、ノアールは顔をあげる。
するとそこには、彼の主……フォルが立っていた。
興味深そうに目を細めて、ノアールを見つめている。
ノアールはそんな彼を見つめ返してから、頷いた。
「驚きの、能力でしたね……」
まさか、武器を奪われるとは。
ノアールがそう呟くと、目の前のだ天使はふわりと笑った。
「幾ら君でも驚くよね。
常人ならさわった瞬間に手が焼け落ちるであろう君の武器をあっさり奪う人間が現れたらさ」
そういって、フォルは目を細める。
その表情に浮かぶのは、愉快そうな笑み。
興味深い……そういいたげな顔で、彼は呟いた。
「他人の武器を奪える能力、か……なかなか興味深いよね。
そんな能力があったら向かうところ敵なしじゃないか」
さっきの君みたいに動揺させることもできそうだし。
フォルはそう呟いて、目を細めている。
ノアールはそんな彼を荒い息を吐き出しながら、呟くようにいった。
「油断、しましたね……思いきり距離を詰められて、そのまま……」
思い出す。
思いきり距離をつめてきたあの少年が浮かべた笑み。
余裕をにじませた表情で、彼はノアールの武器を奪い取った。
強い力を持つわけではない。
特殊な魔力を持っているわけでもない。
それでも、あの少年は強かった。
まぁ、あれは……
フォルの命令で、目一杯怒らせたから、というのもあるけれど。
まだ、体は痛い。
撃ち抜かれた傷がじりじりと痛みを放ち、血が滲むのを感じた。
少し寒いのも、出血の所為だろう。
しかしフォルはそれを気に止めた様子がない。
恐らく、気にかかることが多すぎて、ノアールの傷まで意識が向かないのだろう。
と、フォルが顔をあげた。
そして、サファイアの目を細めながら、言う。
「興味深いと、思わないかい?
あれは、魔術かなにかだったのかな?」
そう問いかけるフォル。
ノアールは少し考えてから、口を開いた。
「魔術を使った様子は、ありませんでした……
私の武器を奪おうと思って近づいてきたわけでは、無さそうですし」
彼がそう答えると、フォルは"ふぅん、そうなの"と呟いた。
そして口角をあげながら、言う。
「君の魔力が移ってる武器だったんだよね」
「えぇ」
「悪魔の魔力も?」
「勿論」
ノアールが頷くと、フォルはますます笑みを濃くした。
それは面白いね、と笑いながら、彼は言う。
「悪魔の魔力があるものでさえ、握れるのか……
それはなかなかに、面白いなぁ」
僕の武器でも握れるんだろうか。
今度、試してみようかなぁ。
でも僕の前でその能力を見せるくらい本気にさせるにはどれくらい怒らせたらいいんだろう。
そういって、フォルは楽しそうに笑う。
ノアールはそれを見て目を細める。
そして、溜め息混じりにいった。
「あまり、甘く見てかかってはいけませんよ、主……」
「わかってるって。
君にそれほどの傷を負わせた人間だもの、ちゃんと気を付けるよ」
どうやら、自分の傷には気がついていたらしい。
そう思いながらノアールはふっと息を吐き出して、一度目を閉じたのだった。
***
ところ変わって、ディアロ城。
その医療棟に、西は落ち着かない表情で立っていた。
「入ってきていいですよ、西」
そんな声が聞こえて、西は病室にはいる。
真っ白のベッドの上に座らせられているのは、彼の恋人であるメイアンだった。
服がぼろぼろになったからだろう、病室にあるような入院服を着ている。
あちこちに見える包帯が、痛々しかった。
「……大丈夫か?」
西がそう問いかけると、メイアンは微笑んで頷く。
意識は、はっきりしているらしい。
「ごめんなさいね、心配かけちゃって」
「本当にな」
そう呟いて西は息を吐き出した。
メイアンが座っているベッドに一緒に座りながら、彼はいった。
「いったい、何があったんだ」
まだ聞いていなかった。
西がそういうと、メイアンは眉を下げた。
そして、呟くように言う。
「普通に、仕事をしていたの。
部下をつれていって、そこの調査をして……
その途中で、急に魔獣の群れに襲われたのよ。
中心には、背の高い黒髪の人がいたわ」
ノアールのことだ。
そう思いながら西は眉を寄せる。
ぐっと力のこもった手を、メイアンのしなやかな手が包んだ。
「怒らないで、竹一。あなたも、疲れているでしょう」
そういいながら、メイアンはそっと西の頭を抱き寄せた。
ふわりと甘い彼の匂い。
それに混じる消毒の匂いが、またいたいたしい。
西はそう思いながら息を吐き出した。
事実、西は疲れていた。
というのも、全力で相手を排除しようと戦っていたから。
魔力も体力も、限界まで酷使した。
そしていよいよ正気を失いかけたとき、メイアンに抱き締められて、止まったのだ。
もし彼が止めていなかったら。
或いは西がその制止をふりきっていたら。
……今頃倒れていたのは、西の方だったかもしれない。
そう思いながら、メイアンは息を吐き出した。
「竹一は大丈夫なの?」
心配そうにメイアンは問いかける。
西はそれを聞いて、苦笑混じりにいった。
「ん、ちょっと体がだるい、かな」
魔力の使いすぎか、あるいは……鹵獲能力で奪い取ったノアールの武器から伝わった悪魔の魔力の所為か。
そう呟いて、西は溜め息をひとつ。
メイアンはそれを聞いて眉を寄せながら、いった。
「……竹一も休んでいた方がいいんじゃないの」
そう呟くメイアン。
西はそれを聞いて、"平気だよ"とおかしそうにいった。
「俺は別に怪我をしたわけでもないし……
お前含めて、警察の人間は無事だったのか?」
逆に西が彼に問いかける。
メイアンは彼の質問に"一応"頷いた。
「私もたいしたことはないし、みんなももう手当てをしてもらって、平気よ。
たいしたことはないから」
出血は多かったのだけれど、実際そこまで深い傷ではなかったらしい。
彼の部下たちも同様なようだ。
「そうか、よかった……」
西はほっとしたように息を吐き出した。
心底安堵した表情。
それを見て目を細めながら、メイアンはいった。
「遊佐さんも、私の前に手当てを受けていたけど、たいした傷ではなかったって。
暫く安静……そうよね、ジェイド」
メイアンは置いてきぼりになっていた部隊長に声をかける。
するとぼうっとしていたのか、ジェイドがはっとして顔をあげる。
そして曖昧にうなずいた。
メイアンは愉快そうに微笑んだ。
だって。
今、目の前の彼は何処か不機嫌そうなのだ。
メイアンの口から別の男の名前が出たのが嫌だったのだろう。
例えそれが、西にとって大切な家族がわりでも。
そんな彼を見て、メイアンは微笑む。
そして、西の頭を撫でながら、いった。
「大丈夫よ、竹一以外によそ見したりしないから」
心配してくれてありがとう。
メイアンがそういうと、西はふっと表情を崩す。
それからぽすっとメイアンに抱きついたまま、息を吐き出す。
そんな彼を見て目を細めながら、メイアンは彼の名前を撫でてやっていたのだった。
―― interesting… ――
(興味深い能力、興味深い力。
あぁ、もっと知りたいとそう思って)
(本気の恋人も勇ましくて格好よかったけれど…
やはり今のような、穏やかな笑みも愛しいもので)