西さんとノアールメインのお話です。
二人とも似たような境遇と言うか…
家柄良いのに不憫な家庭のコラボです←
*attention*
西さんとノアールのお話です
シリアスなお話です
生まれは良いのに環境が悪かった二人
親がいなかった西さんと親に暴力を振るわれていたノアール
とりあえずノアールがすみません西さん
ラストはメイアンと西さんで
メイアンの存在に少しほっとしてる西さんなら良いと思った←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
薄暗い森のなかを駆け抜ける、ひとつの影。
黒髪。
金色の瞳。
遠く異国から来ている少年……西は、やや焦った表情で森を駆け抜けていた。
その理由は、彼の手に握られている一枚の紙。
それは、乗馬から帰ってきた西が見つけた、一枚の紙だった。
そこには見慣れない文字がかかれていた。
そして、その内容が穏やかではなかったのだ。
『君の恋人は僕のところにいるよ。
無事に返してほしかったら僕のところまでおいで』
そんな文字が、かかれていた。
最初は悪い冗談かと思ったのだけれど……
どれだけ探しても、恋人……メイアンの姿は見当たらなかった。
冗談ではないのだ。
そう思って、西は改めて紙を見た。
そこには、国の外れにある森の奥の地図がかいてあって……
メイアンに何かあったんだ。
そう思って、西は部屋を飛び出したのだった。
そうして、駆けつけてきた森の奥。
西はすっかり弾んだ呼吸のまま、周囲を見渡す。
「たしか、この辺り……」
たしかこの辺りにあったはず。
手紙の主が示していた場所は。
そう思いながら暫し歩いていた彼ははっとする。
そして金色の瞳を細めた。
そこに立っていた、小屋。
以前いったぺルたちがすんでいた屋敷よりは小さい。
そう思いながら、西はなかに入っていった。
一歩踏み出す度にみしりと床板が軋む。
それを聞きながら西は周囲を見渡した。
と、ひとつしまったドア。
それを見て西はめを細める。
そしてそのドアに歩み寄っていった。
なかからは人の気配を感じる。
西はふぅっと息を吐き出すと、西はドアノブに手をかけて、勢い良く開けた。
すぐに、武器である馬鞭を構えようとする。
しかしすぐに彼は驚いて固まった。
部屋のなかにいたのは、一人の青年。
漆黒の髪に漆黒の瞳。
綺麗な色白な肌。
背はすらりと高く、華奢だ。
しかし、西が驚いたのはそこではない。
そこにたっていた青年の背や腕に、壮絶な傷痕があったからだった。
着替え中だったらしい青年。
彼の肌はむき出しになっていた。
そこにはたくさんの傷が、痣が、刻まれていて……
「な……」
西は思わず固まる。
相手……黒髪の青年も動揺。
素早く服を身に付けると、射殺さんばかりの視線で西を睨み付けた。
「誰だ、貴様……」
吠えるように言う青年。
西は相変わらずに固まっている。
その様子を見ていたらしい堕天使の声が聞こえてきた。
「あはは、思った通り面白い反応するね?」
そう言って笑う堕天使。
その声が聞こえた方向に、西も青年も視線を移した。
そこには楽しそうに笑っているフォルの姿。
彼は西を見ながら、いった。
「嘘だよ、君のかわいい恋人さんに手出し
なんてしてないからさ?」
安心してよ、そんな怖い顔をしないで。
そう言って笑うフォル。
それを見て幾度もまばたきをした後、西は鋭い表情を浮かべた。
「てめぇ……何のつもりだ!」
食って掛かる西。
フォルはそれに動じた様子なく、あっさりといった。
「退屈しのぎ。
ノアと君は、良くにてる。
家柄が良いことも、家庭に恵まれなかったことも、ね?」
そういいながらフォルは青年……ノアールを見る。
ノアールは彼の言葉に驚いたようにめを見開いていた。
―― まぁ、仲良くしなよ?
フォルはそういうと姿を消す。
部屋には暫し沈黙が満ちた。
その後、ノアールがふぅっと息を吐き出す。
そして、小さく呟くような声でいった。
「……主が何を考えておられるのか、わからん」
そう呟きながらノアールは服のボタンを止めた。
そんな彼を見て、西は躊躇いがちに口を開く。
「その傷……」
頭に残っている、先程の彼の姿。
色の白い肌に残っていた、大きな傷跡……
それが、気になっていた。
そして去り際の堕天使の言葉も。
それを聞いてノアールは目を細める。
そして、自分の腕に触れながらいった。
「子供の頃に受けた傷だ。
……実母実父にな」
そんな彼の言葉。
何のことはないようにいった彼だったが、西はそれを聞いて目を見開いた。
「な……」
思わず、言葉を失う。
親に?
「所謂虐待というやつだ。
もう記憶には薄いがな」
ノアールはそういうとネクタイを締めた。
そして、西の方を見る。
すべてを見透かすような、漆黒の瞳。
それに見据えられて西は少し面食らう。
しかし動じていないように装って、彼を睨み返した。
ノアールはふ、と息を漏らす。
そして、呟くようにいった
「貴様も、貴族家系の人間か。
主がそういった人間と俺を会わせようとするのは、何もはじめてではない」
ノアールはそういいながら目を伏せる。
そんな彼の瞳には、憎しみにも似た色が灯っていて、彼は呟くように付け足した。
「……もっとも。彼奴は家柄にも家庭にも恵まれていたがな」
そう呟いたノアールは西の方へ視線を戻す。
そして、静かな声で彼に問いかけた。
「貴様は、そうではないのだろう?
主が先程そういっていた」
そんな彼の言葉に西は眉を寄せる。
それから、溜め息混じりにいった。
「……まぁ、恵まれてるとは言えないだろうな」
幼い頃に母親と引き離され。
父親も兄も、早くに亡くした。
残ったのは周囲の冷たい視線だけ。
暖かい愛情も何も知らず、孤独のなかで生きていた。
それを不幸ぶるつもりはないけれど、お世辞にも幸福だとは言えないだろう。
そんな西の反応にノアールは小さく鼻をならした。
そして、"貴族なんてそんなものだ"という。
「金銭ばかりがあれど、何ら意味はない。
まぁ、金銭がないというのも困り者ではあるがな。
かといって親がいるからといってみたされる訳でもない」
そういいながら彼は目を伏せる。
そして、吐き捨てるようにいった。
「家柄も家族も、鬱陶しいだけだ」
そういう彼。
その言葉を聞いて西は金色の瞳を細めた。
彼の言う、"家柄なんて鬱陶しいだけ"というのは、まぁ納得できる。
周囲の人間が自分を見るときに"バロン西"としか見ないことを知っているから。
自分の内面を見ようと、知ろうとする人間なんて殆どいない。
その点、家柄というのは確かに煩わしいものかもしれない。
けれど。
「親がいるだけ、幸せだろう」
西はぼそりとそういった。
金の瞳を伏せながら。
ノアールは、実の親から虐待を受けていたといった。
それは確かに気の毒だとは思う。
幾つの頃に受けたそれかは知らないが、今でもあれだけくっきり傷が残るような虐待を受けたのだ。
辛かったと思う。
けれど。
親がいなかった自分からしてみれば。
親の温もりに満足に触れることも出来なかった自分からしてみれば。
暴力を振るうような親だったとしてもいただけ良いではないか、と思う。
そんな彼の発言に、ノアールは漆黒の瞳を細めた。
ぎらり、とそれが光る。
それと、同時。
西は自分の体を強い衝撃が襲うのを感じた。
思わぬ衝撃に受け身をとることもできず、西はその場に倒れ込んだ。
「う……」
小さく呻く西。
その上に影が落ちる。
ノアールに殴られたのだと、馬乗りになられているのだと気づくのには、やや時間がかかった。
ノアールはもう一発西を殴った。
口のなかに血の味が広がる。
冷たく自分を見下ろすノアールの瞳。
それを見上げながら、西は浅い息をした。
「実の親にこんな傷を負わされてそれでと幸せと言えるのか」
そういいながらノアールは西の胸を膝で強く押す。
息が詰まって苦しげに顔を歪める西を見下ろしながらノアールは口元に歪んだ笑みを浮かべた。
「親がいればそれだけ幸せ?それはどうだろうな……
いなければ良かったと思ったことこそ、ないが……居てよかったと思うこともない。
生憎、俗に言う"親の愛"とやらを感じたことはないからな」
俺にはわからない。
きっと、貴様にもわからないだろう。
俺が貴様の感情を理解出来ないように、貴様も俺の痛みは理解出来ない。
ノアールはそういうと小さく鼻をならして、いった。
「それとも何か?
この傷を受けられたことさえ愛情だと、そう思うか?」
そう思うなら、貴様も同じ目に遭ってみれば良い。
味方もなく、抵抗もできない状態で痛め付けられる苦痛を。
そういうと同時。
始まったのは彼の容赦ない暴力。
西はそれにただただ、堪え忍ぶ。
親がいればその方がまだマシと思う自分は間違っているだろうか。
そう思いながら……――
***
そっと、頬を撫でられる。
その感触に、西は目を開けた。
「う……」
目を射るような光。
それに目が眩んで、西は小さく呻いた。
それと同時に誰かが覗きこんでくる。
「西!良かった、目が覚めたのね」
聞こえた声で、わかった。
西は幾度も瞬きをしながら、彼の声を呼ぶ。
「メイアン……?」
そういうと、漸く目の前にいる彼の姿がはっきりしてきた。
西はゆっくりとまばたきをする。
それと同時、目の前の彼……メイアンが心配そうに眉を寄せながら、言った。
「何してたのよ、あんなところで!」
そういう彼。
西は視線を彷徨わせる。
思い出した。
自分に馬乗りになり、暴行を加えてきた黒髪の彼のこと。
痛かったし苦しかった。
抵抗も、したかったけれど……
喧嘩は、目の前にいる彼が悲しむ。
だから、下手に反撃することもできなかった。
彼……ノアールはそんな彼に容赦なく暴行を加え続けた。
それこそ、西が意識を失うまで。
親がいるだけマシだと言う言葉がそれほど憎かったのだろうか。
ぼんやりと西はそう考える。
しかし、とりあえず彼にこれ以上心配はかけられない。
そう思いながら、西はゆっくりと首を振った。
「……いや」
「何でもない、は聞かないわよ」
先手を打たれて、西は黙り込む。
そして、ふっと溜め息を吐き出しながら、話した。
ノアールと会ったこと。
彼も、自分と同じように貴族の家系の人間であったこと。
自分同様に恵まれない家の子であったこと。
……彼に殴られて、意識を失ったことも。
それを聞いてメイアンは暫し目を丸くしていたが、やがてふと息を吐き出した。
そして、呟くように言う。
「喧嘩しなかったのは偉いけどね、西……」
そういいながらメイアンはぎゅとベッドに寝かされている西を抱き締めた。
そして彼に言い聞かせるように言う。
「喧嘩するのと抵抗するのは違うのよ?」
貴方が怪我をしたのでは意味がないじゃない。
そういいながらメイアンは悲しげに、そっと西の体を撫でる。
少し、体が痛い。
けれど、そうして撫でられていると痛みが和らぐ気がした。
こうして、気遣ってくれる人間がいること。
それは幸せなことなのだろうか。
西はそう思いながら、ふっと息を吐き出したのだった。
―― Better… ――
(親がいないこと、親に暴力を振るわれること
いったいどちらが、幸せなのだろうか)
(どちらも決して幸せとは言えないのかもしれない。
こうして触れられ撫でられることこそが、幸せなのだろうか…)