大佐殿とペル、ディナのお話です。
やや季節外れですが編み物ネタを…←
*attention*
大佐殿とペル、ディナのお話デス
ほのぼのなお話です
編み物ネタ
好奇心旺盛なペルなので…
いろんなことを知りたがると思うのです←
ディナにからかわれてる大佐殿
頑張るけど小さい手袋しか出来なくてしょぼんなペル(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
甘い、薔薇の香りが漂う部屋。
綺麗な装飾の施されたテーブルや椅子、クロゼットがあるその部屋の、天蓋付のベッドの上……――
そこに座っているのは、長い茶髪の女性と、黒髪の少年……ディナとペル。
ディナの隣に座っているペルは、小さな手で何かを握っていた。
細い棒。
それに絡みついているのはふわふわした毛糸。
ペルはそれを編んでいるのだった。
彼に編み物を教えているのはディナ。
彼女は一生懸命に編み棒を動かしているペルを見ながら穏やかに微笑んでいた。
「そうそう、そこをそうして……ほらできた」
そうして編んでいくのよ、とペルは話す。
ペルは一度手を止めて、ふぅっと息を吐き出した。
そして、目を細めながら言う。
「編み物……楽しい」
面白い、といいながらペルはちまちまと手を動かしている。
今日は彼の兄であるクラウスが仕事で不在。
ほかに、彼の面倒を見てくれるジェイドやシュペーアも仕事で不在。
途方に暮れていたペルを見つけたのが、ディナだった。
―― 私と一緒に遊ばない?
ディナにそう誘われて、ペルは彼女の部屋に来た。
一国の王女の部屋だけあって、部屋の中は広く、豪華だ。
ペルの兄たちも高貴な生まれの人間だが……やはり、それとは違う高貴さを感じる。
そう思いつつペルはほっと息を吐き出した。
座れる場所がないからと、ベッドに座るように言われた。
そうしてディナは暫し、ペルにいろいろな話を聞いた。
彼の面倒を見ている兄たちの話。
ペル自身の話。
色々話をした後、ディナはペルのマフラーに目を止めた。
そして微笑みつつ、言った。
素敵なマフラーね、と。
そういったものを作るのも楽しそうね、と。
それを聞いてペルは目を丸くした。
作る?
そう問いかけたペルに、ディナは編み物を教えてやったのだった。
毛糸を編むことでマフラーや手袋を作れること。
手作りのそういったものをプレゼントすると喜ばれるということ。
それを聞いてペルは興味を持ったのだった。
今まで編み物なんてしたことがなかったペル。
しかし柔らかい毛糸は自分で触っていても楽しくて、夢中になって編み物をしていた。
ディナが教えてやれば、嬉しそうに頷いてその通りに手を動かす。
そうしているうちにどんどん編んだ毛糸は長くなっていく。
自分で編んだその成果を見て、ペルはまたやる気を出していたのだった。
どんどん上達する彼。
それを見たディナは穏やかに微笑んで、いった。
「手袋とか作ってごらんなさい?
貴方の手に合うのなら、割りと早く作れるわ」
貴方の手は小さいから、とディナはいう。
そして手袋の編み方を教えてやった。
それをふんふんとペルが聞いていると、ドアをノックする音が響いた。
ディナは不思議そうに首を傾げて、"どうぞ"という。
ドアが開いて、ひとつの影が入ってきた。
それを見て、ペルはぱぁっと顔を輝かせる。
「クラウス兄さん!」
嬉しそうな声を上げるペル。
そう、ディナの部屋にやってきたのは、ペルの兄であるクラウスだった。
「ディナ王女、弟がお世話をおかけしました」
今まであまり話をしたことはないけれど、と思いながらクラウスは言う。
するとディナは穏やかに笑いながら、彼に言った。
「いえいえ、楽しかったわよ?
可愛い弟ね」
すごくいい子だし、といってディナは目を細める。
そして彼女は隣に座っているペルを見ながら、いった。
「ほんと可愛い子……弟にしたいわ」
息子でも良いかも、というディナ。
無論それは冗談なのだけれど……
そんな彼女の言動に、クラウスは眉を寄せた。
「……ペルは、やりませんよ」
思わずそういうクラウス。
それを聞いて一瞬驚いたように目を丸くしたディナだったが、すぐにくすくすと笑った。
そして、"冗談よ"と微笑む。
「本当に仲が良いのねぇ……羨ましいくらいだわ」
そういってディナは微笑む。
クラウスはそんな彼女の言葉に穏やかに微笑む。
ペルも嬉しそうな顔をして、クラウスの方へ駆け寄っていった。
「クラウス兄さん、編み物教えてもらった」
ペルはそういいながら編み棒と毛糸をクラウスに見せる。
それからあ、という顔をしてディナの方を見る。
「これ……」
どうしたらいい?と言いたげなペル。
ディナはそんな彼を見てくすり、と笑う。
「いいわよ、持っていなさい。
毛糸、なくなったら私のところに来たらあげるわ?」
そういって微笑むディナ。
ペルは彼女の言葉に嬉しそうな顔をする。
そして"ありがとうございます"といいながらぺこり、と頭を下げたのだった。
***
それから、ペルはクラウスと一緒に騎士の棟に戻った。
まだクラウスは仕事が終わっていないようだが、書類仕事だけになったために、こうしてペルを迎えに来たらしい。
いつも通りクラウスの部屋に帰ると、ペルは黙々と編み物をしていた。
クラウスも書類仕事から手が離せなかったし、ちょうど良い。
静かな時間が流れる。
部屋に響くのは、クラウスが書類にペンを走らせる音だけで……
どれくらい、時間が経っただろう。
一度休憩しようか、とクラウスが考えた、その時。
「あ……」
不意に聞こえたペルの声。
それに驚いてクラウスは視線を彼の方へ向ける。
すると、ペルは手を止めていた。
そして、手に何かを持ったまま、困ったような顔をしている。
「どうした?ペル」
クラウスは彼に問いかける。
その声に、ペルは手に持っていたものを差し出した。
それは先程までペルが編んでいたと思しき何か。
ペルはそれを差し出しながら、いった。
「どうしよう……僕でもはめられない……」
そういってペルが差し出しているもの……
それは小さなミトンだった。
先程ディナに教えてもらった通りに編んでいたらしいのだが……
どうやら、小さすぎたようだ。
自分の手にもはまらないといってしょんぼりしているペル。
その様子は何とも可愛らしい。
そう思いながらクラウスは目を細めた。
とはいえ、しょんぼりしている弟を放置するわけにはいかない。
クラウスは真剣な表情をしつつ、言った。
「そうだ、総統が愛犬用の手袋を探しておられたはずだ、あと3つ、作れるか?」
覚えていることといえば、それ。
確かヒトラーが愛犬のための手袋を探していた。
プレゼントしたらいいだろう、とクラウスはいう。
クラウス個人としては、わざわざヒトラーにプレゼントをしたくはないが……
ペルが喜ぶなら、それが一番だ。
案の定、ペルは嬉しそうに顔を輝かせた。
そして何度も頷きながら、いう。
「うん……!僕、がんばる……!」
張り切ったようにそういって、もう一度編み棒を手に取るペル。
彼はふんふんと張り切って手を動かしている。
「本当に、一生懸命やるな……」
クラウスはそういいつつ目を細める。
そして、頑張っている弟を横目に作業を続けたのだった。
―― knit… ――
(可愛らしい小さな手で一生懸命編み針を動かす弟。
頑張り屋な彼だからすぐに上達するのだろう)
(せっせと、編む、編む。
いつか、大好きな人へのプレゼントが作れるようになればいいな)