久々のノアールとフォルのお話です。
奥田美和子さんの「青空の果て」という曲がちょっとノアールにはまってたのでそれを意識しつつ…
彼は十六歳じゃなくて十八歳なのですけどね…ちょいちょいこの歌は意識します←
そしてノアとフォルのこういう関係が好きです…
基本意識してるのはフォルスタ&無彩色極彩色コラボなのですけどね(^q^)
学パロ基本家設定での無彩色極彩色コラボ設定でのお話をやるフラグを立てたかっただけでした←おい
学パロのノアもKnightでの彼とあまり気質は変わってません。
Knightの彼ほど露骨ではないですがキレると暴力的になるのもかな?と思ったり。
でもそれが基本相手が自分をちゃんと愛してくれるかというのを確かめたいからなのだと思います。
何が言いたいかといえば…
本家設定でもフランコさんとノアを絡ませたいです←おい
因みにタイトルは「愛情を渇望する」の英訳そのまんまです←
ともあれ追記から話です!
冷たいコンクリート。
そこに座って空を見上げるのは、漆黒の髪の少年。
彼の黒い瞳は晴れ渡った秋の空を見上げていた。
綺麗な青空が頭上に広がっている。
彼がいるのは、屋上。
細い手首に巻かれた腕時計はまだ授業中の時間を示していた。
要するに……
彼は、授業をサボって此処に居るのである。
静かな屋上。
此処は彼にとって落ち着ける場所であった。
青い空しか見えない景色。
そこは、落ち着くけれど……――
吹き抜けた風が彼の黒髪を揺らしていく。
彼は小さく息を吐き出して、立ち上がる。
屋上のフェンス。
そこに腕をついて、空を見上げる。
その後制服の内ポケットに忍ばせていたシガレットケースを取り出す。
一本の煙草を口にくわえて、胸ポケットのライターを探る。
「……忘れてきたか」
小さく呟く。
普段使っているオイルライターをおいてきてしまったらしい。
溜め息を吐き出しつつ、彼はポケットをまさぐる。
コンビニで買った100円ライターが出てきた。
普通に考えて高校生である彼が煙草を買えるはずなどないのだが、
大人びた風貌と、彼が住んでいるのが学生街であることが手伝って、
年齢確認もそこそこにこういったものを手に入れることが出来てしまうのだった。
体に悪いことは重々承知。
本人もそこまで喫煙が好きというわけでもないためにたまにしか吸わないけれど……
火をつけて、煙草をくわえる。
覚えたてのメンソールの香り。
立ち上る煙。
ふわりと羽根のように広がったそれはすぐに散っていった。
そのまま彼は青空をみあげる。
そして小さく溜め息を吐き出した時。
「ノアール」
後ろから聞こえた声。
それを聞いてノアールは振り向く。
その視線の先に居たのは亜麻色の髪の少年……フォル。
その姿を見てノアールは幾度か瞬きをした。
「……フォル」
小さく紡ぐ彼の名前。
亜麻色の髪の彼……フォルはノアールのすぐ隣に来た。
ノアールは煙草を消す。
流石に友人の前で煙草をふかすのは気が引ける。
フォルはノアールを見てにこりと微笑む。
そして小さく首を傾げた。
「サボり?」
「そういうお前もな」
そう。
此処に居る時点で彼も同罪だ。
クラスメイトの彼。
クラスにサボリが二人もいるとなれば、教師は頭を抱えていることだろう。
それを想っておかしくなったのだろう。
フォルはくすくすと笑って、言った。
「ふふ……君がいないから探しに来ちゃった」
そんな彼の言葉にノアールは少し眉を寄せる。
そして呟くように言った。
「また怒られるぞ」
フォルは学業成績は優秀な生徒。
しかし素行があまり良いとは言えない。
しょっちゅう授業をサボる。
下手をすれば教師に喧嘩を売ってエスケープ、なんてこともある。
有名なのは世界史の時の事件。
彼の"恋人"を侮辱するような発言に怒った彼が授業中に学校から逃亡するという事件だ。
あれは、ノアールも驚いた。
だからまた怒られるぞ、と彼は言ったのだけれど……
フォルはにこにこと微笑みながら、彼にいった。
「君もね」
サボってるのは同じでしょう?
フォルの言葉にノアールは小さく溜め息。
彼のいう通りだ。
そう思いながら彼は校舎の壁の方へ戻り、そこに座った。
フォルもその隣に行き、座る。
そして彼に言った。
「……珍しいね、ノアールが」
こうやってサボるのはさ、とフォルは言う。
フォルと違ってノアールがサボるのは、珍しい。
"肌を晒せない"彼が良くサボるのは体育くらい。
今は彼も比較的得意なはずの数学の授業。
だからこそフォルは彼をこうして探しに来たくらいである。
ノアールはフォルの言葉に答えない。
唯青い空を見上げた。
その漆黒の瞳は微かに揺れていた。
頭によぎる声。
それはクラスメイトのもの。
―― 彼奴と一緒に居られる人間なんてこの世にいるのか?
からかい口調だったかもしれない。
ノアールがいる事に気づかずの発言だったと思う。
けれど彼は聞いていた。
自分に対する、他者の評価を。
長身で美形。
ただし不愛想で何処か冷酷そうにもみえる。
そんな彼のことを恐れる人間は決して少なくない。
事実先日も委員会でペアを組んだ女子を冷たくそっけない態度と視線で泣かせてしまったくらいだ。
もっと優しく教えてやればいいのに。
笑えとまでは言わないからあんな怖い顔をしなければいいのに。
その時の周囲からの静かな批判も、未だ頭から消えていない。
その視線に傷つかないフリをしていた。
諦めてもいた。
けれど……――
ぐ、と呼吸が詰まった。
ノアールは顔を伏せる。
そんな彼をみてフォルは眉を下げる。
そしてそっと彼の背に触れる。
びくりと彼の肩が跳ねた。
「苦しい?大丈夫?」
問いかける静かな声。
それにノアールは小さく掠れた声で答える。
「……平気、だ」
「あんまり平気そうに見えないけどな……何かあった?」
ねぇ、と問いかける人懐っこい声。
顔を覗き込もうとしてきたのがわかった。
体調が悪いのだろうかと思ったようで額に伸びる手。
それをノアールは思い切り払いのけた。
「やめろ触れるなッ!」
悲鳴じみた声。
それと同時にふり払った手がフォルの頬にあたった。
"痛っ"と小さく悲鳴。
がりっと何かを引っ掻いた感覚が、ノアールにもあって。
「あ……」
小さく、声が洩れた。
みれば、フォルの頬には薄くひっかき傷。
血が滲んでいた。
フォルは少し困った顔でノアールを見る。
軽く自分の頬を拭った後、彼は溜め息混じりに言った。
「爪、切った方がいいんじゃない?」
君もそのうち怪我するよ?とフォルは気遣う言葉を投げる。
ノアールは目を伏せて、呟くような声で詫びた。
「す、すまない……」
あぁ、まただ。
そう思いながらフォルは眉を下げる。
いつも通りを装った、でも怯えたような、謝罪。
彼は自分を突き放した後でいつも、こんな声で詫びてくる。
その時の痛々しい表情を、フォルはどうにも好きになれない。
フォルは少し迷ってから、彼の肩をそっと抱いた。
怯えたように跳ねる彼の肩。
それをしっかり抱いて、彼は言う。
「大丈夫だよ。大丈夫……」
子どもを宥めるような声。
フォルはその声で、ノアールに言った。
「君のことを嫌ったりしないから、大丈夫」
「!何、いって……」
彼の言葉にノアールは大きく眼を見開く。
フォルはふっと微笑みながら、彼に言った。
「怖いんでしょ?僕がはなれていくの……
僕じゃなくても、自分が一緒に居てほしいって思った相手が離れてくのが、嫌で」
その言葉にノアールはぐっと唇を噛みしめる。
そのまま目を伏せてしまった。
長い前髪。
それが彼の表情を隠す。
フォルはそれでもそのまま、言葉をつづけた。
「でも君は不器用だから、素直に聞けない。
言えない……一緒に居てほしいって」
本当は寂しがりやだ。
誰より他人に愛されたくて、愛したくて。
でも、そのためには彼は……不器用すぎた。
「その結果に突き放して、怖がられる。
それでまた嫌われる、絶望する」
その言葉にノアールの体が小さく震える。
浅い呼吸。
彼を落ち着かせようとするようにそっとその背を撫でてやりながら、フォルは言った。
「……わかるよ。君も、書記長様と同じだ。
ちょっと、タイプは違うみたいだけどね」
彼の恋人……スターリン。
彼とノアールの境遇は少しだけ似ている。
スターリンもノアールも、両親から虐待を受けていた。
スターリンを暴行していたのが義父義母であったこと、
虐待の内容が少し異なっていたことを除けば、二人は良く似ていて。
でも、それ故に負った傷の現れ方は違っていた。
色々な現れ方があるのはフォルも知っていた。
愛しい恋人のためにと色々な書物を読んだから、わかるようになっていた。
被虐待児がどういう思想を持つようになるか。
何を恐れるようになるか……――
ノアールは恐れている。
他人に嫌われることを。
その割に振る舞い方が下手で、相手を傷つける。
しかしその行動さえも相手を試す行動。
自分が何処まで傷つけても相手が離れないことを確かめたいのだ。
そのことを、フォルは知っている。
それを告げれば、ノアールは小さく息を吐いて顔をあげた。
そして、呟くように言う。
「……まったく。いつもと違って、調子が狂う……」
呑気なフォル。
それがこんなに真剣なことを言うから、何だか調子が狂う。
ノアールがそういうと、フォルは小さく笑った。
「ふふ、僕だっていつだっておとぼけキャラでいるわけじゃないよ?」
たまには真面目な事もいうんだから。
そういって笑った後、フォルは隣に座る長身の彼の頭を撫でた。
「……ほら、もう大丈夫。
君が何をしたって僕は君を嫌ったりしないからさ」
どれだけ傷つけられたってね、とフォルは言う。
ノアールはその言葉に黙っていた。
それはフォルの本心をはかろうとしているようにも、期待しているようにも見えた。
「…………」
「きっと、彼もそうだよ」
フォルはそういって微笑む。
その言葉に入る"彼"というワード。
それにノアールは眉を寄せた。
そして呟くように言った。
「それは……どうだろう、な」
彼。
それは、他校の生徒。
明るい気質の、長い赤髪の少年。
彼がノアールの傍に居ようとしていることをフォルは良く知っていた。
しかしノアールはそれを否定する。
彼もきっと、"他と同じ"だと。
フォルとは、違うと。
そんな彼の言葉にフォルは溜め息を一つ。
そして小さく問いかけた。
「信用できない?」
「……たまにしか会話していない。
俺のことがもの珍しくて声をかけてきただけかもしれない」
その言葉にフォルは眉を下げた。
なるほど、と思う。
信用していないわけではない。
寧ろ、心を開こうとしているからこそ……信じることを、恐れている。
信じて、その末に裏切られることを何より恐れている。
それも、彼のような境遇の"子ども"の特質だとフォルは知っている。
そこを乗り越えないと彼の心に寄り添えない。
彼に傷つけられても平気で許して、それでも自分は傍に居るから、大好きだから、
そう伝えることが出来る人間でないと、ノアールは心を開けない。
「……そう思うなら、それで構わないけど……
あんまり彼の事虐めたらダメだよ?
まぁ、それも……仕方ないのかも、しれないけどさ」
ね、といってフォルはノアールの頭をなでる。
傍に居ると微かに煙草の匂いがした。
フォルはそんな彼に微笑みかけながら、言った。
「……少なくとも僕は君から離れないから、大丈夫だよ」
無論友人としてだけどね。
そう悪戯っぽく付け足して笑うフォルを見て、ノアールは溜め息を一つ。
「……フォル」
「ん?」
「物好きだな、お前も」
こんな俺と一緒にいるなんて。
関わらずにいる事なんて簡単だっただろうに。
ノアールはそういう。
フォルはそんな彼を見てふわっと笑った。
「ふふ。ありがとう」
「褒めてないぞ」
「ふふふ……」
笑い続ける友人。
それを見てノアールも少し困ったような笑みを浮かべたのだった。
―― Hunger for affection ――
(愛されることも、生きている事さえも諦めたことがあった
でもこの呑気な友人が傍に居てくれるから俺はまだ前を向いていられるのかもしれない)
(一番愛してくれるべき存在に愛されなかった彼は器用な愛し方を知らない
それでも彼はきっと誰よりも愛情を渇望していることも、僕は知っているよ)