赤髪金髪コラボでのお話です。
こういうネタいいなぁ、と思いまして…
多重人格気味なライニさんが好きです←おい
*attention*
赤髪金髪コラボのお話です
シリアスなお話です
自分の仕事や気質について悩むライニさんを書きたくて…←おい
多重人格気味なライニさんだからこそのこういうネタをやってみたくなりましたすみません…!
アネットは訳がわからないうちにでもライニさんを慰めるだろうな、と…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
細い月がかかる静かな夜……
そこを一人歩いていく、黒服の少年……ハイドリヒ。
艶やかな金の髪が夜の闇にきらきらと靡く。
彼はいま、仕事を終えて帰ってくるところだった。
パーティの潜入任務ではなくて、とある犯罪組織の殲滅。
先程まで拳銃を握っていた感覚が、リアルに手に残っている。
ハイドリヒは小さく息を吐き出した。
その吐息には疲れが色濃く滲んでいた。
こういう仕事には慣れている。
血にまみれる仕事にも、慣れている。
冷酷に敵を葬れること。
それが"金髪の野獣"の特質である。
周囲にはそう見られていた。
心なんてない。
あったとしても冷たい氷のような心だろう。
そんな風に、周囲の人間がいっているのをハイドリヒは知っていた。
噂話は嫌いだし、何よりそれが仕事に不都合を来すようならば相手を黙らせる。
それくらいの覚悟はあったけれど、その程度の噂は消しても消してもよみがえる。
だからもう、気にしないようにしていた。
否、気にしないというのは、きっと嘘。
ハイドリヒだって、普通の人間だ。
心ない言葉に傷つきもするし、本当に何も考えずに人を殺められるはずがない。
何も知らない癖に。
何も、私の苦労も何も知らない癖に。
ハイドリヒはそう思って、唇を噛み締めた。
何度も何度も……
しかしそれを周囲に吐くことはしなかった。
弱い自分が、嫌いだから。
自分の弱さを周囲に晒したくない。
孤独でも、強い自分を周囲に見せたままでいられるなら……――
そんなことをハイドリヒが思っていた時。
「ん……」
ハイドリヒは路地の向こう側に影を見つけた。
きょろきょろと周囲を見渡している、少年の姿だ。
夜にも良く映える鮮やかな赤色の髪の少年……アネットだ。
恐らく自分の帰りが遅いから心配して、迎えにきたのだろう。
ハイドリヒはそう思いながら小さく溜め息を吐き出した。
いつもそうだ。
アネットは過保護なまでに自分のことを心配してくれる。
帰りが少しでも遅ければ迎えに来てくれるし、
自分が任務を終えて帰ってくれば必ずといっていいほど自分の部屋に来てくれる。
そうして、慰めてくれるのだ。
彼の腕の暖かさが、胸の暖かさが、心地よい。
大丈夫だよ、と告げてくれる彼の声が心地よい。
愛しい。
……縋りたいと、そう思う。
けれど、それと同時……
そうして彼に縋ることを罪だと思う自分もいる。
愛しい人。
そう思うからこそ、彼に頼るのは良くないとそう思ってしまうのだ。
体を使った任務もこなしてしまう。
彼を裏切るような行為さえも……
そんな自分を、彼は許してくれるだろうか。
許すと、大丈夫だと、彼はそういってくれるけれど……――
そう思っていると足が止まる。
先に進みたいと、彼のところにいきたいとそう思えど、足は止まる。
彼のところにいきたい。
でも彼に頼りたくない。
頼ってはいけないと思う。
地面に足がくっついたように動けなくなってしまった。
そんなハイドリヒの様子に気がついたのだろう。
アネットが怪訝そうな顔をしながら彼に歩み寄った。
「ラインハルト?」
どうしたんだ?と声をかけてくるアネット。
彼に答えようとするのと同時、くらっと視界が揺れた。
倒れる。
そう思うと同時に体から感覚がなくなった。
「あぶな……っ」
そんな声と同時に彼に抱きとめられる。
瞬間、意識がはっきりした。
「っ、すみませ……」
少し目眩がして、とハイドリヒは呟くようにいう。
しっかり自分の足で立とうとしたが、それより先にアネットに抱き上げられる。
「大丈夫じゃないだろ……疲れた?」
急にふらつくからびっくりした、とアネットは溜め息をひとつ。
ハイドリヒはそんな彼の胸を押して、下ろさせようとした。
「平気、ですから……別に、体調が悪い訳では……」
それは事実だった。
たぶん……色々なことをいっぺんに考えすぎたのだろう。
頭が考えるのを拒否するように、意識が途切れてしまったのだった。
しかしアネットからしてみれば彼が突然倒れたことに違いはない。
心配そうな顔をして、そっとハイドリヒの額を撫でる。
「体調悪くないっていったって……」
やっぱり心配だよ、とアネットは呟くようにいう。
ハイドリヒはそんな彼を見上げてふっと息を吐き出した。
やはり、彼は優しい。
そうして自分を心配してくれる彼が愛しい。
改めてそう思うのと同時、頬を涙が伝い落ちるのを感じた。
ハイドリヒは大きく目を見開いて、慌てて目をぬぐった。
涙が、止まらない。
ハイドリヒ本人は泣くつもり等ないのに……
意思に逆らってこぼれる涙は、ハイドリヒが普段抑制しているものか。
いずれにせよ、"いまの"ハイドリヒからしてみれば、厄介以外の何者でもない。
アネットもそんな彼に気がついたのだろう。
驚いた顔をして、ハイドリヒを見つめる。
「ラインハルト?!ど、どうしたんだ?!」
「何でも、ありませんよ……っ」
ハイドリヒはそういいながら必死に涙をぬぐう。
それでもこぼれ落ちる涙……
アネットはそんな彼を困ったように見つめた後、ぎゅっと華奢な体を抱き締めた。
「ラインハルト、大丈夫だよ……
俺はちゃんと、傍にいるからな?」
アネットはそういいながらハイドリヒを抱き締める。
彼の腕の温もりを感じて、さらに涙が溢れる。
「っ、もう……いや……っ」
ハイドリヒの口から、そんな言葉が漏れた。
その声は、言葉は、いったいどういう意味でこぼれたものか……
こうして泣いてしまっている自分が"もういや"なのか、
もうこんな仕事をしたくないという意味出の"もういや"なのか……
分離した人格の狭間に揺れる。
そんなハイドリヒを見つめて顔を歪めると、アネットは優しく彼の額を撫でた。
「大丈夫だよ、ラインハルト……」
どう慰めればいいのかわからない。
そう思いつつ、アネットは優しく彼の頭を撫でていたのだった。
―― Divide… ――
(もう自分が自分でわからない
こんな自分が、自分は大嫌いで…)
(でもそんな私を愛しいといってくれる貴方が愛しい
あぁ、私はいったいどうすれば……?)