雪狼三人でのお話です。
こういうほのぼのなお話がやりたくて…←
フィアとシストメインで書くつもりが気がついたらルカメインになってました(笑)
短いですがこの三人での幸せそうな話書くの楽しかったです←
ともあれ追記からどうぞ!
訓練が始まる少し前の時間……
フィアはぐっと伸びをしていた。
最近任務に出掛けていることが多く、こういう訓練をする機会は少なくなっていた。
久しぶりに自由に動けるというのはフィアにとっては良い気分転換で、
良かったな、と思いながら彼は目を細める。
と、その時後ろから軽く肩をつつかれた。
フィアは少し驚いて振り向く。
そこにたっていたのは紫髪のパートナー……シストだった。
「フィア、早いな」
そういって笑うシスト。
フィアはこくりとうなずきながら、いった。
「訓練は久しぶりだからな。少しでも長くやりたくて」
フィアがそう答えるとシストは納得したように頷いた。
そしてにっと笑いながら、いう。
「なるほどなぁ。俺が相手になってもいいか?」
そういって首をかしげるシスト。
フィアはそれを見て小さく頷きながら……ふっと、笑った。
そして少しからかうような声色でいう。
「別に構わないが……素手で相手をしてくれるのか?」
フィアはシストにそんなことをいう。
シストは"え?"と小さく声を漏らして自分の手元を見ると……
アメジストの瞳を大きく見開いた。
彼の手元にあるべきもの……魔術剣がない。
その状況に気がついてシストは溜め息を吐き出す。
「っ、忘れた……」
部屋に忘れた、と彼はいう。
フィアはそれを見てくっくっと笑った。
おかしそうに笑うフィアなど滅多に見られるものではない。
そう思いつつシストは少し驚いて彼を見つめた。
「間抜け!剣もなしでどうやって訓練を……」
訓練しようというんだ、といいたかったのだろうが、最後まで言葉になっていない。
くっくっと笑い続ける彼を見て少しむっとすると、
シストは"とってくるよ!"といって駆け出した。
「やれやれ……」
「案外抜けてるよな、シストは」
そんな調子で隣で聞こえた声。
フィアがそちらを見れば、何処か楽しそうな顔をしているルカがいた。
駆け出していくシストの背を見つめるルカは何処か懐かしそうな顔をしている。
「昔もあったんだよなぁ……」
ルカがそう呟くようにいう。
フィアは小さく首をかしげて、ルカの方を見た。
「昔も?」
「あぁ。俺たちが入団してすぐだよ……
初めての訓練の時にもうっかり剣を忘れてきてさ」
お前なにしに来たんだ、って怒られてた。
そういうルカ。
その表情は何処か昔を懐かしむようだ。
フィアはそんな彼の言葉に幾度か青い目を瞬かせる。
そして小さく笑いながら再び視線を遠ざかるシストに向けた。
「意外だな。しっかりものっぽいのに」
フィアが知る限り、シストはかなりしっかりものだ。
いつも仕事は完璧にこなすし、ミスも少ない。
少々抜けたところがあるのも事実なのだけれど、
それでもあんな風な抜け方をしているとは思えなかった。
ルカはそんなフィアの言葉を聞いてくっくっと笑う。
そして笑いながらいった。
「いやいや、そんなことねぇよ。
大分しっかりはしてきたけど、少なくとも昔はかなり抜けまくってたな」
そういってくくっと笑うルカは楽しそうだ。
フィアはそんなルカの言葉に笑いつつ、聴いた。
「他に何かあるのか?」
「おいおい、それ話したら俺が叱られるよ」
「ふふ、たまにはパートナーの昔の姿を知るのもいいかもとな」
そういってフィアは軽くウインクをする。
珍しいフィアの反応に、ルカはにっと笑った。
「いいぜ、教えてやるよ……」
からかうネタにでもしてやれ、といいながらルカはフィアに話をする。
昔の話。
まだ、エルドも生きていた頃の話も。
先程はなした通りの剣を忘れた話。
朝に弱くて目が覚めたばかりで食堂に北末にパンをかじりながら寝た時の話。
エルドにイタズラされてコーヒーに大量に砂糖を入れられたときの反応……
いままで知らなかったシストの姿。
それを聞いて、フィアは楽しそうな顔をする。
「ふふ、面白いな」
シストもなかなかやるな、などと言いつつ、
フィアはもっと、とルカにせがんだ。
寝る前にお話をねだるこどものようだ。
そう思いつつ、ルカは話をしていく。
剣を手に戻ってきたシストにルカが壮絶に怒られるのは、
説明するまでもなかったのだった。
―― 知らなかった姿 ――
(いままで知らなかったパートナーの姿
昔の彼の様子を聞くのも楽しいな)
(怒られるのはわかってたけど……
フィアが楽しそうにしてるからついつい話しすぎちゃってさ)
2014-9-27 15:15