ぺルとシュペーアさん、スターリンさんもちょろとなお話です。
飴主食なぺルには定期的にまともな食事をつくってもらうしかないかな、と…
お手数かけますシュペーアさんスターリンさん←おい
*attention*
シュペーアさんとぺルとスターリンさんのお話です
ほのぼのなお話です
偏食なぺルのために彼の国の料理を作ってくれるシュペーアさんを書きたくて…
ほっとくと飴しか食べないぺル
でもシュペーアさんが作ったものは喜んで食べるだろうな、と…
彼なりのお礼がああいう形ですみません←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
賑やかな食堂。
その一角で夕食をとっているのは、長い黒髪の少年と、銀髪の少年。
任務を終えたシュペーアと一緒に、ぺルが食事をとっているのだった。
シュペーアがいたって普通の食事をとっている横で、
ぺルは小さな皿の上に色とりどりの飴玉を転がしている。
それを見ながら、シュペーアは彼に問いかけた。
「相変わらず飴なの?」
ご飯それだけ?とシュペーアは首をかしげた。
ぺルは彼の言葉にこっくりと頷いた。
「うん……今日のは、フルーツ飴」
おまけしてもらった、といいつつ、ぺルはポケットから少し大きめの飴を取り出す。
どうやらシュペーアと一緒にいったあの菓子屋は彼の行き着けとなっているらしく、
度々訪ねてきては飴玉を買っていく彼に店員がおまけをするようになったようだ。
それを嬉しそうに報告する辺りがまだまだ子供っぽくて、可愛らしくもある。
もくもくと飴を食べる彼を見てシュペーアは苦笑する。
「色々変えてるんだ?」
「ん……ミルクのとか、他のも、好きだよ?」
薄荷だけ苦手、といいながら、彼は飴玉を口に運ぶ。
飴玉だから、食べているというよりはなめているという方が正解。
小さな口にあう小さめな飴が好みらしいために、
傍から見ればなにも食べていないようにも見えた。
彼の飴好きはシュペーアもよく知っている。
好きなものを食べるのは決して悪いこととは思わないけれど……
「ちゃんとしたもの食べないと駄目だよ?」
シュペーアは少し心配そうに彼にいう。
彼がお腹がすいたと言い出すことは稀だから、
もしかしたらそういう感覚自体がないのかもしれないけれど、
栄養バランスやら何やら考えれば、飴だけというのはいただけない。
一応城の食堂のものは料理人が作ったものが並べられていて、
そこから好きなものを好きなように持っていく形だし、
それは外部から出入りしている人間も同じ。
だからそういったものを食べれば良いのにとシュペーアはいうけれど……
「うん……でも、一番好きなの、これ」
……予想外に彼は頑なだ。
好きなもの以外は食べたくないのかと思ったが、別にそういう訳でもないらしい。
食べ物にこだわりが特にない。
だから、好きなものを食べている。
普通の人間でない彼は別にそれで問題はないというけれど……
「うーん……どうなんだろ、それ」
良いのかなぁ、とシュペーアは呟く。
本人は良いといっているのだから大丈夫だとは思うけれど、
彼の仲間であるロシャはゲッベルスと一緒に普通の食事をとっているし、
本当はちゃんとしたものを食べる方が良いのだと思う。
けれど何かを食べるのを強制したい訳でもない。
本人が食べたくないものを無理に勧めるのは気が引けるし……
そんなことを彼が考えていた時、ぺルが小さくくしゃみをした。
そんな彼を見て、シュペーアは少し心配そうな顔をする。
「大丈夫?風邪?」
「んん……ちょっと寒くなってきた」
風邪じゃない、大丈夫。
ぺルはそういいながらマグカップを手で包み込む。
飴玉と同じくらい彼が好きなのはホットミルクだ。
「暖かいもの飲んで、体暖めた方が良いかもね」
「うん……そうする」
シュペーアの言葉に素直に頷くぺル。
いうことは素直に聞くんだよなぁ、と思いつつ暫し彼を見つめていたシュペーアは、
ふと良いことを思い付いたような顔をした。
良いこと、といっても簡単なこと。
先日と同じように、自分が何かを作ってやれば良いのではないだろうか?
この間も、シュペーアが作ったお菓子は喜んで食べていた。
懐かしかったのもあるだろうけれど、自分が作ったり渡したりしたものは好んで食べる。
それを利用してやればちゃんとした食事をとらせることも可能ではないだろうか。
そう思ったシュペーアはぺルを見つめて目を細める。
そして、その計画の算段をたてたのだった。
***
そんなことを思った、次の日……
「それで、頼る相手が俺なんだな」
シュペーアの話を聞いた浅緑の髪の少年……
スターリンは息を吐き出してそういった。
彼を見てシュペーアはややすまなそうな顔をする。
「手間とらせてすまないけど……
やっぱり、あっちの料理に詳しいのはスターリンだと思って」
頼むよ、とシュペーアはスターリンにいう。
スターリンはマリティン出身。
恐らくぺルも彼方の方の出身のはずだ。
せっかく食べさせるのならば、彼の国の料理を食べさせてやりたい。
そんな思いがシュペーアにもあるのだった。
スターリンはそんな彼の言葉に肩を竦めつつ、"まぁ良いのだよ"といった。
そして首をかしげつつ、いった。
「何か、って言うけど……何が良いんだ?」
「うん……ボルシチとかで良いかなって」
シュペーアは有名な北方の料理をあげる。
昨日寒いとぺルはいっていたし、スープくらいがちょうど良いだろう。
普段飴ばかり食べているからいきなり重いものは、食べたくないかもしれない。
「あーなるほど……最近寒いしな」
俺にとってはまだまだ暑いけど、とスターリンはいう。
それでもボルシチは得意料理だ。
料理は元々嫌いじゃないし、作らなければならないとなれば自力で作れる彼。
教えるのもある意味お手のものだ。
「まぁ、家庭料理なだけあって楽勝だし……やってみるのだよ」
そういいながら彼はキッチンで集めてきた野菜やら肉やらを並べる。
シュペーアはそんな彼に礼を言いつつ、彼の隣で調理を進めた。
そうして作業をはじめてから少しした頃……
シュペーアは軽く服を引っ張られて、振り向いた。
「シュペーア、何してるの?」
そこにいたのは、他でもないぺル。
不思議そうにシュペーアとスターリンを交互に見ている。
スターリンはそんな彼を見て、いった。
「偏食のお前のために建築家が料理してるのだよ」
「へんしょく……?」
変換が上手くいかなかったらしい。
シュペーアはくすりと笑うと、優しく彼の頭を撫でた。
「ぺルさん昨日寒いっていってただろう?
だから、暖まってもらいたいなぁ、って思ってスターリンに料理教わってるんだ」
ちょっと待っててね、頑張って作るから。
そういうシュペーアを見つめて、ぺルはぱちぱちと瞬きをする。
そして嬉しかったのか照れ臭かったのか、マフラーに顔を埋めた。
「……嬉しい、な。
誰かが、僕のために、料理つくって、くれるの」
ぽそり、と呟いてぺルは二人から離れていく。
恐らく照れ臭くて逃げたのだろう。
そう思って笑いつつ、シュペーアはスターリンと一緒に作業を続けていったのだった。
***
それから少しして、調理を終えた頃、ぺルも帰ってきた。
何処にいたの?とシュペーアが聞いても答えない。
しかし大分手が冷たかったから、恐らく外だ。
そう思いつつ、シュペーアは彼の前に作ったボルシチをいれた皿を出した。
スターリンに教えてもらいながらだったし、
本当に煮込み料理だから美味しくできているはず。
ぺルはスプーンをつくってそれを掬った。
口に運ぶと熱かったらしく一瞬目を丸くしたが、
軽く息を吹き掛けて冷ましてから口にいれる。
と、彼は大きく目を見開いた。
「……おいしい」
「そう?よかった」
シュペーアはにっこりと笑っていう。
ぺルはスプーンを動かしてもくもくとボルシチを口に運んだ。
わかりづらいが、目が輝いているのがわかる。
こういった料理は、やはり好きらしい。
故郷の料理だからだろうか?と思いつつシュペーアもせっかくだからとそれを食べる。
その時、ぺルが軽く袖口を引っ張ってきた。
そして、"なぁに?"と首をかしげた彼に何かを差し出す。
「……飴しか、思い付かなかった」
そういいながら彼が差し出しているのは、小さな袋。
どうやらそのなかには幾らか飴玉が入っているらしい。
見たことのない袋だから、恐らく……今、買ってきたのだろう。
自分のために料理を作ってくれている彼。
感謝の気持ちを表したくて買い物に出ては来たけれど、
シュペーアが何がほしいのかわからなくて、
結果自分が好きなものを渡すという手段しか思い付かなかったらしい。
「新しいのだって……おいしい、て店員さんも、いってた……
だから、きっとおいしい……」
一生懸命にそういう彼。
それを見て、シュペーアは笑う。
今まで誰かになにかをプレゼントする機会等ほとんどなかったであろう彼。
一生懸命に考えてくれたことは、わかる。
「ふふ、ありがとう」
受け取らせてもらうね、とシュペーアがいうと、彼はほっとしたように表情を緩める。
そのまま美味しそうにシュペーアが作ったボルシチを口に運ぶ彼を見て目を細めると、
シュペーアも彼がくれた飴をひとつ口に運んだのだった。
―― 心を込めて… ――
(僕には、何を返したらいいかなんてわからないから
でも、優しい、大好きな君に恩返ししたくて…)
(一生懸命なお礼はとても嬉しくて…
でも君が喜んでくれるなら僕はそれで十分だからね?)