科学者道化師コラボでのお話です。
「My lover」の続き的なお話で…
どこまでも健気なムッソリーニさんが可愛くて大好きです←おい
*attention*
科学者道化師コラボのお話です
本家Laurentia!(学パロ)設定でのお話です
ほのぼの?シリアス?なお話です
「My lover…」の続きちっくなお話です
自分の本心を伝えていいんだよ、とムッソリーニさんに言うカルセ
ムッソリーニさんのいつでも自分を後回しにしちゃう気質が可愛いです…←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かなマンションの一室。
それは、カルセの部屋。
カルセとムッソリーニがそこに帰ってきた時には、すでに午後九時前だった。
というのも、カルセの学校で起きた部活中の事故故。
その事故の処理に追われていたカルセの仕事終わりが遅くなり、
ムッソリーニとの約束が果たせなくなってしまったのだった。
カルセがそれをかなり気にしている様子だったのが気にかかり、
ムッソリーニは彼を励ましつつこうして彼の家まで帰ってきたのだった。
カルセは部屋につくとすぐにキッチンに向かった。
冷蔵庫や戸棚を開けつつ、適当に食事の用意を始める。
「すみません、こんな時間になってしまって……」
「いや、俺は構わないけど……カルセさん、大丈夫ですか?
俺が料理作るっていったのに……」
ムッソリーニはカルセに言う。
仕事で疲れているだろうから自分が料理はする、とムッソリーニはいったのだが、
カルセはその言葉に首を振り、こうして自分で作業を始めている。
カルセはふわりと微笑んだ。
そしてムッソリーニに言う。
「疲れたのは、貴方も同じことのはずですよ。
散々待っていたのでしょうから……」
疲れているでしょう、とカルセは言う。
ムッソリーニはそれを聞いて苦笑混じりにいった。
「だから、それは大丈夫だっていってるのに……」
カルセさんは気にしすぎー、とムッソリーニは言う。
カルセはそんな彼を見て微笑むと、料理に戻ってしまった。
トントントン、と響く包丁の音。
それを聞きながらムッソリーニは小さく息を吐く。
そしてソファに寄りかかったまま、その上にあるクッションを抱いた。
大丈夫。
気にしていないよ。
カルセにそう言いはしたが、彼の言う通り疲れたし、
……何より寂しくて、心細かった。
気にしていないというのは事実だ。
彼にそんなに気にしてほしくないというのも事実。
けれど……
いつもならば時間通りに来てくれるカルセ。
それが、来ない。
それは酷く不安なことだった。
メールをいれても返事は来ない。
電話をかけても応答しない。
きっと何かあったんだ。
そう思った。
カルセは養護教諭。
学校で急病人が出れば対応しなければならなくもなるだろう。
それを理解したところで、家に帰ろうかと一瞬悩んだ。
でも、そうして帰ったすぐあとにカルセが来たら?
そう思うと、足が止まった。
もしかしたら、少し遅れているだけかもしれない。
もしかしたら、すぐに来てくれるかもしれない。
帰るのは、彼から"いけない"という連絡が入ってからでも遅くはない。
そう思って、ムッソリーニはそこにとどまった。
街を行き交う人々。
カフェで談笑する人々。
カフェも閉店して、街を行き交う人々の年齢も次第に上がっていった。
―― カルセさん、遅いなぁ……
そう思いつつ、ムッソリーニは何度も何度も携帯を見た。
着信もメールもない画面を。
もう一度電話をしようと、何度思ったか。
でも、彼が仕事中だったら電話したら迷惑にならないだろうか。
そう思って、彼はすぐに携帯をしまっていた。
それを繰り返しているうちに、携帯の電池も切れて、
いよいよやることがなくなってしまった。
日はすっかり暮れて、真っ暗になる。
街並みを彩るのは店のネオン。
行き交う人々の笑い声が、楽しそうな表情が、胸を締め付けた。
一人でカフェの前に佇む彼を、行き交う人々は怪訝そうに見る。
それにも気がつかないふりをして、ムッソリーニは俯いていた。
一人きり。
待っている相手はいつ来るかわからない。
連絡もとれない。
そんな心理状態で待ち続けるのは、辛かった。
カルセが来てくれた時にほっとした。
あぁ、来てくれた。
来てくれたんだ、と……――
安心すると同時に力が抜けた。
でもカルセが自分にたいして酷く申し訳なさそうな顔をしていたから、
それを励まして、お疲れさまといって、自分は大丈夫だからといって……
***
「……、ムッソリーニ?」
そっと、肩を揺らされる感覚。
それに、ムッソリーニは目を覚ました。
「ん……」
ぱち、と目が開いた。
どうやら、眠ってしまったらしい。
自分の顔を覗き込んでいるカルセの藍色の瞳とかち合った。
「カルセ、さん……」
ムッソリーニは彼の名前を呼ぶ。
そして、ふわりと微笑むと、いった。
「お疲れ様でした」
記憶が、混乱した。
もうカルセの家に帰っているというのに。
カルセはそんな彼の言動と表情に、大きく目を見開く。
そして、ふっと息を吐き出した。
「……ムッソリーニ」
名を呼びながら、カルセはそっとムッソリーニを抱き締める。
その感覚に、ムッソリーニは大きく青い瞳を見開いた。
「カルセさ……」
「……良いんですよ、本当に……
怒るんでなくても、思ってたこと、感じてたこと……
言ってくれて良いんですよ、ムッソリーニ」
カルセはムッソリーニにそういった。
彼は、いつでも自分のことを後回しにする。
周囲のことを優先して。
さっきもそうだったと、感じていた。
仕事の所為とはいえ連絡もなしに待ち合わせに遅れた自分に対して、
彼は怒るでも責めるでもなく、ただただ優しい声で"お疲れ様"といった。
そして、落ち込む自分を励ますように、一緒に歩いてくれた。
でも、彼の心情は穏やかなものではないに決まっている。
怒っていなくたって、寂しかったり怖かったり、不安だったはずで。
「良いんですよ……ぶつけてくれて」
カルセはムッソリーニを抱き締めたまま、そういう。
ちゃんと、思っていることをいっていいのだ、と。
我慢しなくて良いのだ、と。
カルセの腕のなかでムッソリーニは幾度も瞬きをする。
そして小さく息を吐き出すと、彼の胸に顔を埋めた。
彼の心臓の音が聞こえる。
それに、ほっとしつつ……ムッソリーニは小さく息を吐き出すように、言った。
「……せめて」
「うん?」
カルセはムッソリーニの背を擦りながら、彼の言葉の先を待つ。
ムッソリーニはぎゅっとカルセの服を握りながら、いった。
「せめて……連絡が、ほしかったな」
せめて、連絡がほしかった。
一言で良かったから。
もし遅くなるといってくれたら、そうなのかと思って待っていられただろう。
彼に何かあったんじゃないかと不安になりもせず、
いつになったら来るのだろう、もしかして来ないのではないかなんて不安も、
決して抱くことはなかっただろうから……
カルセはそんなムッソリーニの言葉を聞いて、小さく頷いた。
「そうですよね。ごめんなさい」
彼が寂しい思いをしたことは容易に想像出来る。
本当に申し訳ないと、そう思った。
ごめんなさいね、と詫びるカルセ。
ムッソリーニは顔をあげると、彼を見て微笑んだ。
「……でも、来てくれて嬉しかった……
走ってきてくれて、ありがとう」
そういって、ムッソリーニはへらりと笑う。
カルセが走って自分のところまで来てくれたのは感じていた。
だから、ありがとう。
ムッソリーニはそういう。
カルセはそれを聞くと、目を丸くした。
そして、小さく息を吐き出しながら、言う。
「……結局貴方はそこに落ち着くんですから」
もっと我儘をいっていい。
もっと甘えていいのに……
そう思いつつ、カルセはムッソリーニに口づける。
そして、彼を離すと微笑んで、いった。
「食事の用意が出来ましたよ。一緒に食べてくれますか?」
「ん、ありがとう……ごめんね、作らせちゃって」
そういって、ムッソリーニは苦笑する。
カルセはそんな彼の額を軽く小突きつつ、"謝らないで"といったのだった。
―― 我儘とさえ言えないような… ――
(ほんの少し、ほんのすこしだけ我儘をいっていいのなら
そんな風に貴方が口に出すのは我儘ですらなくて)
(寂しかったし心細かった。
でも貴方がちゃんと来てくれたからそれで良かったんだ)